Colaboの助成金選考に係る利益相反の疑いと諸問題に関する雑感

2022年12月18日
(2023年3月24日追記)

Colaboが1億円のアパート建築資金の助成を受けた休眠預金活用事業の一つである『コロナ禍の住宅困窮者支援事業≪休眠預金活用事業≫2020年度コロナ緊急支援助成枠』について、審査やその助成金の使途が適正でない疑義があることは既に述べた。

Colaboのアパート建築に係る助成金に関する疑義及びそれに伴う提言
https://note.com/red____/n/ncd8cc0938352
Colaboのアパート建築に係る助成金の審査の疑義と問題提起
https://note.com/red____/n/n713c649816c2
※論点を分けるために上記記事に含んでいた利益相反の文章は本稿へのリンクを貼るに留める形に修正した。(12/18)

その中でも、特に私が重視した『利益相反取引』について、もっと詳しい説明が欲しいとの連絡を複数いただいているので、本稿を書いた。
なお、当該利益相反の問題に見られる点は他の諸問題を論じる上でも参考になると思ったので、雑感も記した。

2023年3月24日追加 本件利益相反のわかりやすい関係図

えびすい(@ebyan2013)さん提供

当該助成金の選考における利益相反取引の疑い

① 休眠預金活用事業の利益相反を防ぐ仕組み

  • 利益相反という言葉を端的に説明すると、『一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のこと』となる。

  • 助成金等の審査においては重視されるべきは『公共の利益』であり、相反するのが『私的な利益』ということになる。
    (自身ばかりではなく、自身の関係者への利益誘導も『私的な利益』にあたる)

  • この利益相反の防止体制については、当然ながら休眠預金活用事業でも重視されており、制度設計や審査の過程で注意をしなくてはならない旨が規定されている。

  • 利益相反の形態は様々で、その対応策も一概には言えない。

  • 一事例として、審査会議の構成員の選定に配慮することや、原則は資金分配団体の役員と実行団体(助成金を受ける団体)役員であってはならないということが示されている

資金提供契約ひな形P.10より
Q&A 公募要領14の部分より

② 本件助成事業の選考事業者の確認

  • 本件助成事業はパブリックリソース財団とホームレス支援全国ネットワークにより企画された休眠預金活用のための分配を行う助成事業である。

当該助成事業の公募HPより
2事業者がJANPIAに提出した事業計画書より
  • この2事業者は助成対象を選考するにあたり、それぞれが利益相反を防ぐ義務がある。

資金提供契約ひな形P.2より
  • 2事業者が行った助成事業の選考が、利益相反に配慮されて行われたかを確認したい。

③ 利益相反が推認できる事象1 分配団体・実行団体での役員の重複

  • 本件助成事業で利益を誘導できる立場にあるのは、まず助成事業を企画した2事業者である。

  • まず目につくのは、特定⾮営利活動法⼈ホームレス⽀援全国ネットワークの理事長とColaboの理事が同一人物であることである

当該NPOのHPより
ColaboのHPより
  • 原則、避けなければならないとされている役員の重複が確認できる。

  • 上述したQ&Aには例外規定めいた文面もあるため、厳格な審査の結果、Colaboの事業が選考されたのかもしれない。

  • しかしNote記事にも書いた通り、その審査は不自然なものであったので、利益相反が推認できる事象であると言える。

④ 利益相反が推認できる事象2 選考委員と実行団体(Colabo)の関係

  • 次に、助成対象を決める審査会議の構成員も利益誘導が可能な立場である。

  • ①で記載した通り、休眠預金活用事業において審査会議は助成申請団体(Colabo等)と利害関係のない人物により運営される必要がある。

  • 審査委員は次の通りである。

公募結果についてより
  • ところが、少なくとも2名については別法人でColaboの理事と共に役員を務めていることが確認できた
    (簡単にColaboの当該理事と審査委員の名前を検索して確認できただけなので、他の審査委員との繋がりの有無は不明)

当該団体のHPより
当該団体HPより
  • 第三者であるべき審査委員がColaboと繋がりがあったということは言うまでもなく不適当であり、ここからも利益相反を推認できる。

  • 自身が理事長を務める団体が片割れになって休眠預金の分配を企画して、

  • 自身と共に別団体の役位を務める人物が複数含まれる『第三者』審査委員が審査を行って、

  • 結果として自身が理事を務める団体が休眠預金の分配に選ばれた。

  • 以上を踏まえると、審査の内容等とは無関係に、審査の体制そのものも不適切であった疑いが強い。

  • 上部団体のJANPIAや休眠預金活用事業を所管する内閣府には何らかの対応をお願いしたい。

※追記(12月18日公開後)
『Colaboの審査を行う際、関連のある審査員は利益相反を自己申告して審査から除外されたのではないか?』との指摘を受けましたが、
1.そもそも審査委員は上掲の資金提供契約やFAQで『外部』『第三者』と表現されており、利益相反の恐れがある審査員の存在を想定していないと思われること。
2.公募要領2に選定過程の情報公開が定められており、そこに審査員による利益相反の自己申告の記載がないこと。
以上2点を勘案すると、おそらくそういった措置はなかったのではないかと推察した次第です。
(ちなみに資金分配団体を選考するJANPIAの審査会議には審査委員による利益相反の自己申告に関する記述があったりします)

※追記2(12月19日)
・『審査委員が応募事業者の役員と同一法人の役員を務めているだけで、利害関係を有することになるのか?』との指摘を受けました。
・官公庁や公益財団法人等の助成金等の審査においては概ね『親族や親族と同等な親密な関係』『師弟関係』『雇用関係』『同一機関での所属関係』等が利害関係者と見なされています。(これらは主に研究者 対 審査者という個人 対 個人を想定してのルールですが)
・関係性が見えない机上では評価が難しいですが、やはり利害関係者と見るべきでしょう。
・同じ所属関係にある法人で、審査委員長・審査委員が務める『顧問』や『理事』という地位よりも、Colaboの当該理事の『代表理事』という地位の方が優越していることも重要ではないかと思います。

参考として2例
文科省 公募型事業における事業者の選定方法https://www.mext.go.jp/content/1413588_002_1.pdf#page=6
独立行政法人  日本学術振興会 審査規程
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/r04/hyoukakitei221013.pdf#page=5

他の諸問題に関する雑感

  • 本件について、公開された情報の範囲では明らかに審査体制は不適切であり、不正を疑われても仕方がないと言える。
    (無論、公開されていない情報があって実は利益相反の懸念がないという可能性もゼロとは言えないが)

  • この助成金の選考体制は『税金(公金)のつかみ取り』や『税金(公金)チューチュー』と他の論者に揶揄されるスキームの類型に見える。

  • 多くの場合、不正を行う際は発覚を恐れて何らかの偽装を施すものだが、資料が概ね公開されるにも関わらず、公金(休眠預金)を恣意的に特定団体に注入する(ように見える)スキームが堂々と構築されていることについては、着目すべきであろうと思う

  • これは本件助成事業やColaboばかりでなく、他団体の活動にも言えることである。

  • 東京都の委託事業においては『活動報告の数字に整合がない』『現実離れした数字が並んでいる』等の推定が複数の論者より指摘されているが、その中には補助金・助成金の詐取が疑われかねない内容も散見される。

  • 不正があったと仮定した場合、多くの指摘されているポイントは、偽装が施されていれば発覚しなかった事象が多い。

  • それが易々と発覚しているのは、『弱者救済の美名の下であれば、不正を追及されない』ことが業界として学習されて、『不正を隠す』というある種の緊張感すら取り払われた結果なのだとしたら、大変恐ろしいことだと思う

  • いずれにしても水面下では様々な動きがあるようで、良い面も悪い面も一定程度は明らかになりそうであるから、しばらくは推移を見守りたい。

以上

履歴
2022年12月18日 公開
2022年12月19日 審査委員に関する利害関係人の判定基準について追記
2023年3月24日 関係図追加

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