Colaboのアパート建築に係る助成金に関する疑義及びそれに伴う提言
執筆日:2022年12月6日
(更改:2022年12月18日)
休眠預金活用事業の一つである『コロナ禍の住宅困窮者支援事業≪休眠預金活用事業≫2020年度コロナ緊急支援助成枠』について、適正な審査がなされていない疑義、及び資金が適正に運用されていない疑義があるため、公益財団法人パブリックリソース財団(以下、財団)及び一般社団法人Colabo(以下、Colabo)に対して、以下の通り提言する。
Ⅰ 審査から資金交付までが適正に行われたかを検証すること
Ⅱ 適正でない部分があったとすれば、どのように是正するかを検討すること
なお、当該提言の根拠となる情報収集は適法に公知の情報のみで行っており、違法でないことはもちろん、内部告発その他の手段によるものではないことを念のため申し添える。
以下が提言にいたった根拠となる。
本来はまず第一に、利益相反について指摘しなくてはならないが、それは別稿にまとめているので、そちらをご参照いただきたい。
1、本件提言公開にいたった経緯
暇空茜氏のtweet等で今回の騒動を知り、Colaboが大型助成金を受領した点も知った。
貸借対照表を見て簿価から推定できるアパートの建設額を過大に感じたので、アパート底地の地番等を調べ、登記簿謄本等を取得した。
その結果、異常と思われる数値が確認されたので、一定程度の調査を進めた上で、2022年12月2日から5日にかけてColabo*Tsubomi Cafe@colabo_officialへtweetで疑問点を問い合わせると共にDMを送った。
(DMは返答がなかったので送ったのは初回のみ。)いずれ誰かが気が付くようなことであり、明確に回答がなされれば、Colaboにとっても有益な質問であったはずであるが、2022年12月6日夕刻の時点で何ら返答はない。
その間、想像以上に私のtweetが多くの方々に拡散されてしまい、事実誤認に基づく言及等も散見されたため、論拠を詳説しておくべきであろうと考えたのが本件文章を作成した第一の目的である。
提言の形をとった目的は二つあり、私がこれまでに行った質問は一定程度の合理性・公益性があり、Colaboを誹謗中傷する主旨でないことを強調することが一つ、もしも助成事業が適正に行われていなかったのであれば、是正してもらうことがもう一つである。
2、当該助成事業の概要
当該事業の内容は公募要領1の「はじめに」及び公募要領2の「趣旨」をご参照。
事業を公募していたのは休眠預金活用事業の資金分配団体である財団であり、元をたどると内閣府の所管である。
暇空茜氏が追っておられる都の補助金と混同なさっている方が多いようなので、ご承知いただきたい。
なお、当該事業は2021年4月30日 ~ 6月30日 まで募集が行われた。
同年8月に4団体が採択され、Colaboは100百万円の助成を受けた。
3、審査及び資金交付手続きに係る疑義
① ガバナンス・コンプライアンス体制
Colaboは法に定める貸借対照表の公告を2022年11月下旬まで行っていなかった。
Colaboは公益事業を主業にして、不特定多数から寄付を募って活動している上に、公的事業も受注しているため、一般の会社よりも決算公告の重要性は高く、問題である。
(厳密には株式会社や収益事業を行う一般社団法人も、中小零細規模であればほとんどが公告義務を果たしていないため、相対的には小さい問題であろうとは思うが、ColaboがNPO法人等に準ずる公益事業者として考えるとその義務は重いと言うべきである)
採択事業者はガバナンス・コンプライアンス体制を『助成開始時に(又は助成開始後速やかに)整備』(公募要領2別紙P.1より)する必要があり、また自団体のWEB サイトで一般に公表(公募要領2P.8より)する必要があるはずだが、Colaboは同体制に関する規程を2022年12月6日にいたるまで公表しておらず、問題である。
前者は商業登記簿を見ればわかることであるし、後者に関しては助成金交付前に整備状況や公表時期を確認すべきで、財団の責任も重いように感じる。
公募募要領2P.6には選定(文脈的には当然交付の際も)の際には特にガバナンス・コンプライアンス体制を重視する旨の記載があるが、適正な審査がなされたのが疑問である。
② 事業の適正性について
Colaboが採択された事業で確保した居室はアパート1棟8室である。また個室であることが言明されており、複数人での利用が想定されているわけではない。
(2021年活動報告書P.10等より。また、室数は別の手段でも確認した)本件事業は『全国 7 か所程度において、一実行団体あたり 30室程度の支援付き住宅を提供する』(公募要領1P.3より)ことが目標である。
FAQにも要約するとQ「10室程度で申請してよいか?」、A「より多くの居室が必要」との問答が記載されている。(公募に関するFAQP.3より)
「10室程度では不可」と示されているにも関わらず、それ以下の8室の事業計画が助成額の最大値である100百万円で採択されたことは不可解に思える。当該FAQを見て申請を諦めた事業者もいるはずで、平等性や透明性に欠けた審査ではなかったか疑問である。
なお、参考までに申し添えると当該助成事業は助成対象7団体、助成総額425百万円、200室の確保を目標に公募が行われた。
結果は助成対象4団体、助成総額379百万円、55室程度の確保に留まった。以下が4団体の事業成果の一覧である。
単に目標比だけでなく、採択された他団体の事業と比べてもColaboのみが極端に事業コストが高いことが見てとれる。
助成事業の効果の測定は単に助成額/室という単純な費用対効果だけではなく、受益対象者の受け皿の大小や地域性等も勘案して行われるべきだとは思う。
事業特性によるコスト増であればそれを割り引いて評価をしなくてはならないが、Colaboの事業に関してはそれだけのコストをかける必然性がないため、単に資金効率の面で著しく劣ったと事業と評価すべきである。
(詳しくは『Colaboのアパート建築に係る助成金の審査の疑義と問題提起』に記載)
4、アパート用地購費 及び建築費に関する疑義
① 調達価格と相場価格の乖離
結論にいたった経緯は補足として後掲する。先に要点だけを述べる。
土地建物の調達価格は事業計画時は103百万円、事業完了計画時は104百万円となっており、その内の100百万円を助成されている。
登録免許税等の税金は助成されないと公募要領に明記されているため、使途として記載されている火災保険代を1百万円程度と仮定し、103百万円を正味の土地の購入費・諸工事費 及び アパート建築費だと見なす。
一方で、後掲する根拠に基づいて推定した土地建物の相場価格は60百万円程度である。
40百万円程度は相場から上振れした価格で調達を行ったように見える。
助成金が正しく使われたか疑問で、説明や検証が必要であると考える。
なお、参考までに申し上げると、『資料上は普通の土地に見えるが、実際は価値が低い土地』というのは表面的な情報から算出される価値と実際の取引価格の差が大きくなるため、詐欺に使われやすい。本件土地の場合、
平面の地図で一見すると、接道に問題がない一般的な宅地に見えるが、実際は階段道路(2項道路)にしか接道していない点
登記面積は240㎡だが、実際は2項道路(階段道路)が含まれており、宅地として活用可能な面積は200㎡しかない点
以上が土地の価値を誤認しやすいポイントである。
なお、Colaboは審査時は別の土地を建設予定地として申請しており、後に『助成⾦申請時に想定していた⼟地は確保できなかった』とのことで、『より利便性のいい代替地を⾒つけ購⼊できた。』とのこと。
総事業費は申請時が103百万円、事業完了時で104百万円とではほとんど変わっていないが、本件土地の価値と審査当初の候補地の価値は同程度だったのか?
(家具家電代程度のコスト増があったので、これを助成費用とするのは諦めたとの記載は報告書内にあるが……)財団は本件土地の状況を十分精査した上で再審査をしたのか?
以下の通り、助成金採択後から用地確保及び建設までの流れは非常にスムーズである。
財団の審査の際に提出した「想定していた土地」が確保できなくなり、たまたま本件のような『資料上は普通の土地に見えるが、実際は価値が低い土地』がすぐに出てきたというストーリーについては十分な説明が必要なように思う。
② 不動産取引を介した不正な資金還流手法の一例
助成事業実施者をα、土地の売り主及び施工事業者をβと仮定する。
荒い説明だが、助成金等の不正な還流はこのような手段が採られることが多い。参考まで。
このケースの場合、物件の真の価値が100百万円であると助成金を審査する側に誤認させる必要がある。
様々な手法があり、例えば上述の『資料上は普通の土地に見えるが、実際は価値が低い土地』を購入すること等もその一つである。
この他にも想定できる不正には様々なパターンがあるが、詳細は省く。
言うまでもないが、私は「一見すると不動産を相場価格よりも著しく高く調達しているように見えるため、誤解なのであれば説明が必要だと思う」ということを指摘しているに過ぎず、Colaboが例で示したような不正を行ったと言及しているわけではない。
納得できる価格形成経緯が存在している可能性もあるため、憶測で誹謗中傷を行うのは厳に慎んでいただきたい。
一方で例示したような不正が起こり得る価格が形成されているように見える点もまた事実で、公益を鑑みると無視できるレベルの疑義ではないと思われるため、Colaboへtweetによる指摘を行ったのは冒頭の通りである。
審査経緯やその後の情報公開等についても疑問があるが、Colaboが特に偽計を用いるようなことをしていないのであれば、これに関しては財団側の責任も大きいようには思う。
土地建物調達価格に関する疑問に関しては、相場から乖離した価格でColaboが「つかまされた」可能性も十分ある。
しかし本件事業が該当する休眠預金等活用事業においては『民間公益活動を行う団体』は『資金を効果的・効率的に活用』することを求められている。
ゆえに、相応の不動産の相場観がないのならば新築事業での公募は控えるべきで、「つかまされた」ことについては言い訳にならない。
以上が提言の根拠となる。
以上
補足 土地・建物の相場価格と調達価格の比較
① 前提
困窮した若年女性を受け入れるため当該アパートが建築された経緯を勘案し、土地・建物が特定できないよう、所在地は記さないし、面積も概数でしか記さない。
情報は全て同社が公開している情報や、登記簿謄本等の公的機関から入手できる情報に基づいているのは本文冒頭の通りである。
② 土地建物の調達価格の確認
本文で述べた通り、土地取得・諸工事価格 及び 建築価格の合計が概ね104百万円であることは判明している。(正確な金額は103,568,896円)
火災保険代を推定で除外し、103,000千円を土地建物の調達価格と仮定したのは上述の通りである。
本件の場合、土地の売り主と建物の施工事業者が同一なので、総額さえわかれば相場との比較は可能だが、一応配分を確認してみる。
土地の2020年度貸借対照表 期末簿価(2021年度期初簿価)8,553千円
土地の2021年度貸借対照表 期末簿価 56,379千円
差引すると、土地購入費 及び 諸工事費は47,826千円ということになる。
私が補足しきれていない土地購入がある可能性はゼロではないが、Colaboの活動報告書でも言及がないので、おそらくこの変動はアパート用地の購入のみの変動だと思われる。
必然的に103,000千円 から47,826千円を差し引いた55,174千円が建築費用ということになる。
③ 土地価格の相場の推定
Ⅰ 土地の概要
当該土地は2020年12月まで住宅が存在していた宅地で、大規模な造成工事等は不要であると推定できる。
面積は約240㎡だが、敷地面積(活用可能な面積)は約200㎡である。
地図上は二方向に接道しているように見える。一方は路線価があり、2021年当時は105千円/㎡である。
しかし実際のところ、路線価がある道路の方向は切り立った崖になっているので、実際は接道していない。
もう一方もいわゆる車道ではなく、階段道路(2項道路扱い)であるため、接道状況は悪い。
駅からアパートにいたるまではかなりの傾斜の坂が続いている。
一部階段を通る必要があったり、道が狭隘であったりするので、車両で近接することは難しい。
また、建物敷地に入るためには階段を使う必要がある。
Ⅱ 相場価格の推定方法
2つの方法で推定を行った。
一つは国交省の土地総合情報システムで、過去2年間の付近(市・所在地まで一致。丁は違う)の住宅用地の取引事例を確認した
7件ある事例の平米単価は13万円が4件、15万円が1件、16万円が1件、20万円が1件である。
16万円/㎡の土地1件は4mの、他は6m以上の市道と接道している点は本件土地よりも優れているように見受けられる。
(情報が少ないため断定は難しい)この7件全てがよほど特殊な土地でない限り、本件土地が住宅地としての条件が悪いことを踏まえると、取引価格は最低価格の130千円/㎡を下回るのが妥当なように思う。
もう一つの推定方法では路線価を用いる。
前述の通り厳密には接道していないが、本件土地と隣接する道路の2021年の路線価は105千円/㎡である。
一般住宅地は路線価を1.25倍すれば概ねの流通価格が算出される。
(路線価が公示地価の80%程度に設定されているため。)本件の場合は105×1.25=約131千円/㎡ということになるが、あくまでも路線価は標準的な宅地の価格を示す指標である。
土地の接道状況等を踏まえると本件土地の取引価格は131千円/㎡を下回るのが妥当なように思う。
『下回る価格』の目安としては、近隣(同地・同丁)公示地の2021年1月時点 及び 2022年1月の鑑定評価が参考になる。
なお、鑑定評価は誰でも以下のシステムから閲覧可能である。
両年の鑑定評価で、付近の市場価格は150㎡程度の土地で15~25百万円(100~167千円/㎡)と言及されている。
よって、当該土地の相場価格を近隣相場の下限として見て、20,000千円(100千円/㎡)とするのが適当なように思う。
Ⅲ 土地の相場価格と実際の調達価格の比較
以上より、本件土地購入(諸工事費込み)の相場価格は20,000千円(100千円/㎡)~26,000千円(130千円/㎡)とするのが妥当と思われる。
実際には本件土地は45百万円(225千円/㎡)以上で土地購入及び諸工事がなされている。
相場よりも20百万円以上高く、異常に見える。
④ 建築価格の相場の推定
Ⅰ 建物の概要
当該建物は木造・2階建て・8室(それぞれ個室)のアパートで、延床面積は160㎡である。
物件の形状に言及することになるので詳細は述べないが、やや安価に建築できる構造である。
東京都23区外の県境に近い場所に位置しており、建築費が極端に高い地域ではない。(神奈川、埼玉、千葉等の郊外住宅地のイメージ)
土地の項で述べた通り、車道と接道しておらず、前面は階段である。またそこにいたる道も狭隘で、資材搬入等には手間がかかりそうであり、一定程度建築費が高くなる蓋然性はある。
Ⅱ 相場価格の推定方法
資料も少ないため、建築着工統計(住宅着工統計34表)でのみ推定する。
本件建物が着工された前後の木造の共同住宅の着工単価は、東京都が概ね190千円~200千円、本件土地に近い他県が170~180千円程度であるため、間をとって190千円/㎡を相場価格と推定した。
よって、190千円/㎡ × 160㎡=31百万円程度が相場であると思われる。
接道状況を勘案し、多少上振れするにしても35百万円程度(この場合は219千円/㎡(=723千円/坪))が相場の上限ではなかろうかと感じる。
(なお、土地の特殊事情により建築費がそれ以上かかるのであれば、その分だけ土地の購入価格を下げるべきであると思う。)
Ⅲ 土地の相場価格と実際の調達価格の比較
以上より、本件アパートの建築の相場価格は35百万円程度とするのが妥当だと思われる。
実際には本件アパートは55百万円程度(343千円/㎡(=1,132千円/坪)で建築工事がなされており、相場よりも20百万円程度高く、異常に見える。
以上
履歴
12月6日 ツイッターで文章公開
https://twitter.com/red____/status/1600110034901667840
12月9日 更改
誤字訂正や細かい言い回しの変更を行った。
助成事業の情報が12月8日に公開された。以下の判明した情報を元に文面を変更した。
① 総事業費が判明したこと
調達価格を「推定」する必要がなくなったので文面を差し替えた。
② 当初は違う土地を建築候補地として助成金の申請を行っていたこと
この点は極めて重要なため、4、(前略)疑義の部分を加筆した。
12月10日
3‐②の事業の適正性について、Colaboと助成金に採択された他3団体の事業の費用対効果を測定できる図を配置し、若干の文言を加えた。
12月13日
本文中にColaboのアパート建築に係る助成金の審査の疑義と問題提起とのリンクを追加した。
提言を冒頭に移動。
12月14日
利益相反行為に関する文面を追加。
(相手が大物なので指摘しようか迷っていました。審査がまともだったら、「まあ……ううん?」というダークグレーだったと思いますが、やはり審査部分を精査したところ黒っぽいと判断したので。)
12月18日
利益相反に関するtweetが随分と拡散されているので、別稿にまとめた。
2023年1月18日
誤字等修正
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