“ちゃんとかわいくて、ちゃんとクリーン”なコスメをつくる Rulie
TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディアRECT。今回は、大学生が商品の企画・販売を手掛け、“クリーンビューティー”を発信するコスメブランド 株式会社Rulie(ルリー) を取り上げます。代表の児玉英里氏に、Rulieを立ち上げた経緯や、クリーンビューティーというテーマに込めた思い、今後の展望などについてお話をうかがいました。
児玉 英里(こだま えり)氏
株式会社Rulie 代表取締役。小学校時代から「化粧で人を幸せにする」という夢をもつ。高校時代に化粧品の背景に多くの社会課題があることを知り、クリーンビューティーを発信する学生団体を設立。大学生になった2022年にRulieを立ち上げ、クラウドファンディングを経て2023年にRulieブランドの第一弾となる商品を発売。2024年2月に株式会社化。
■ 「クリーンビューティー」を発信するRulie
クリーンビューティーは、この10年ほどでアメリカから広まった言葉で、現在はまだ統一された定義はありませんが、児玉さんは「肌・環境・社会の3つに優しいこと」と表現します。例えば、肌と環境に有害な成分を使わない、動物実験をしない、製造過程やパッケージのサステイナビリティを追求する、トレーサビリティ(生産から消費までの過程の透明性)を担保する、といった取り組みが挙げられます。まだまだあまり聞きなじみのない言葉ですが、「クリーン」と「カワイイ」を掲げるRulieはどうして誕生したのでしょうか。
― 化粧品の背景にある社会課題
児玉さんは、小学生の頃から化粧品が好きで、「化粧で人を幸せにする」という夢を持ってきました。しかし、高校生のときに化粧品の動物実験の動画を見たことをきっかけに、化粧品の背景にある様々な社会課題に目を向けるようになり、自分の大好きな“キラキラしたもの”だと思っていた化粧品が、社会や環境を犠牲にした上に成り立っていることに強いショックを受けたそうです。例えば、化粧品のサプライチェーンのなかで、原料調達において児童労働問題に加担している場合があることや、製造過程において多くのCO2を排出していること、開発段階で動物実験が行われて場合があることなど、身近な化粧品も実は多くの社会課題に関わっている現実があります。
また、化粧品の成分への規制やルールは国によって異なっており、クリーンビューティーという言葉が生まれたアメリカでは、他国では化粧品への使用が規制されている成分が含まれている商品が店頭に並んでいることを問題視する消費者の声が上がったことをきっかけに、刺激性や有害性があるとされる成分を含まない安全な製品への注目が高まりました。クリーンビューティーも、他の化粧品と同様に「肌」をきっかけに広まった概念ですが、日本でも比較的認知度が高い「オーガニックコスメ」や「ナチュラルコスメ」は原料が自然由来や有機栽培であることが主なポイントであるのに対して、肌に優しいことはもちろん、児童労働や動物実験に加担しないことや、サステイナビリティとトレーサビリティの担保も含まれています。
― 従来のクリーンビューティー感じた課題
化粧品が多くの社会課題に関わっていることを知った児玉さんは、さらに調べを進めるなかで「クリーンビューティー」を知り、これが広まることで、自身が感じているモヤモヤが解消される可能性を感じました。しかし、実際にクリーンビューティーをテーマにした化粧品売り場に足を運んでみると、どの商品もターゲットとする年齢層が高く設定されており、シンプルでキラキラしたイメージがなく、一般的な商品と比べて発色も劣る印象で、決して安くない価格のこれらの商品を買おうと思わなかったのだそうです。韓流やキラキラしたかわいいラメのアイシャドウが流行っているなかで、「クリーンビューティーに共感している私でさえほしいと思えないのに、これでは多くの人に広がるわけがない」と感じたことが、「クリーンとカワイイの両立」というテーマにつながっています。
― クリーンでカワイイ 「Rulie」の誕生
こうして、化粧品の背景にある社会課題と、クリーンビューティーの考え方を知った児玉さんは、コロナ禍で多くの時間を在宅で過ごすなかで、学生団体としてSNSでクリーンビューティーに特化したレビューアカウントを立ち上げ、情報発信を始めました。その後、友人の紹介などをきっかけにビジネスコンテストに出場し、化粧品を好きになった小学生の頃からぼんやりと描いていた「自分の化粧品ブランドを持つ」という将来像を実現しようと、クリーンビューティーをテーマとした商品をつくることをビジネスアイデアとして提案。コンテストをきっかけにアイディアがブラッシュアップされ、一般社団法人クリーンビューティージャパンに自ら問い合わせをして工場とつながることができ、商品の企画をはじめることになりました。高校生のときに、自身のインスタグラムを通じて仲間を集め、大学生になった2022年4月にRulieとしてSNSアカウントを開設し、ブランドとして動き出しました。同年の夏にはクラウドファンディングを実施し、集まった資金を使ってはじめての発注・製造を行い、POPUPなどを経て2023年4月から商品の販売を開始しました。
― Rulieの由来はひいおばあさんから
Rulieの名前は、児玉さんのひいおばあさん るり子さんの名前から取られているのだそうです。海外で生まれたクリーンビューティーという言葉を日本に広めていくために、日本らしさとモダンなかわいらしさを感じられる名前を考えるなかで、ひいおばあさんの名前である「るり」に魅力を感じたのだそう。そうして調べてみると、宝石の瑠璃(ラピスラズリ)は石言葉として「真実を伝える」という意味を持っており、自身が目指すブランドの方向性につながりを感じ、自身の名前 英里(ellie)を組み合わせて「Rulie」と名付けられました。ひいおばあさんと自身の名前を掛け合わせたブランド名が、とても素敵ですね。
■ Rulieの化粧品のこだわり
Rulieの商品は、環境問題やサステイナビリティに関心があり、環境や社会に配慮した製品を使いたいと思いつつも、具体的な消費の選択に移せていないZ世代(10代後半~20代前半)をターゲットにしています。しかし、例えばこれまでプラスチックパッケージのキラキラしたカワイイ韓国コスメを使ってきた人に、サステイナビリティが大事だからというだけでパッケージフリーの商品や高価格の商品を選んでもらうのは難しい。クリーンだから使うのではなく、「シンプルに商品としてかわいくて、品質が良いから使っていたら、とてもクリーン」という、サステイナビリティが他社の商品と差別化する“付加価値”として機能することを目指し、「クリーンとカワイイを両立する」「サステイナビリティとトレーサビリティを追求する」というこだわりで作られています。
― キラキラして “ちゃんとカワイイ”
Rulieの化粧品は、発色の良さにこだわっています。プロのメイクアップアーティストの方とのコラボイベントでは、多くのアーティストの方から「(クリーンビューティーかどうかを抜きにしても)アイシャドウとしてとても質がいい!」「めちゃくちゃカワイイ!」と反響がありました。はじめてクリーンビューティーのコーナーに足を運んだときに、キラキラしてかわいいラメのアイシャドウがなかったことがとても印象に残っており、「ちゃんとキラキラかわいくて、ちゃんとクリーン」が、商品の企画者であり現役の大学生でもある児玉さんの最大の推しポイントです。もちろん、児玉さん自身も毎日使っています。
― サステイナブル・トレーサブルで “ちゃんとクリーン”
Rulieのアイシャドウは、リフィル式(詰め替え式)になっていて、使い終わったり、色の展開が増えたりしたら詰め替えて使えるようになっています。また、カワイイにこだわったRulieのラメは、ファンデーションやリップなどにも用いられるマイカという鉱物で作られており、多くの商品でラメの原料に使われている樹脂フィルム(プラスチック)を使わないプラスチックフリー商品。原料に用いるマイカにも、採掘時に児童労働に加担していない証明書が付いた(トレーサビリティ)マイカと、人工的につくられた合成マイカを使用しており、社会課題についてもしっかりと考慮もされています。
― Z世代も選びやすい価格設定
Rulieの商品は、高校生でも選べる価格帯と、“ちゃんとカワイイ・ちゃんとクリーン”な商品のクオリティを実現するため、プチプラコスメ(低価格帯)以上、デパートコスメ(高価格帯)以下の価格設定にしています。
ー Rulieの商品を買う
「クリーンビューティー」のテーマを持つRulieの商品でフルメイクをできるように、さらにはスキンケア・ヘアケアができるように、商品の拡充を目指しています。現在は、第二弾の製品としてリップとチークを企画中です。
■ 今後の展望とメッセージ
― クリーンビューティーを当たり前に
先日、ファッションビルでポップアップイベントを開催した際に立ち寄ってくれた母娘がいました。近くのコスメブランドで化粧品を試したところ、娘さんの肌に合わずにほかの商品を探しているときに、たまたまRulieを見つけてくれたそうです。そうしたら、とても肌に合うし、かわいいしということで、娘さんの初めてのコスメとしてお母さんがプレゼントされました。私も初めてのコスメはとても記憶に残っていますが、思い出に残るものとして、初めてのコスメはとても大事だと思います。これからコスメを選んでいく世代には、Rulieがあることで、サステイナビリティを商品を選ぶ基準にしていなくても、かわいいから選んだ初めてのコスメがクリーンビューティーだったら素敵だなと思います。
ほかにも、ギフトとしても選んでいただけたら嬉しいです。贈り物やお返しとして、ほどよい価格帯で、ストーリーが詰まったRulieの化粧品を選んで、相手と共有するといった楽しみ方でも、クリーンビューティーが広まればいいと思います。「Z世代に送りたいギフト」を目指したいです。
― クリーンビューティーを一緒に発信したい
最近では、アパレル業界でもサステイナビリティの問題が取り上げられる機会が増えてきましたが、化粧品とはまだまだ結び付いていないのが現状です。私たちは、人を美しくする化粧品が、環境や動物や誰かを犠牲にして成り立っている現状を変えていきたいという思いを持っています。私たちの思いに共感してくださる方が増えて、そういった方と一緒に情報発信をして、共感を広げて、仲間を増やしていくことができたら嬉しく思います。
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(Writer:東使未久、牛丸結理香、三浦央稀)
■ ABOUT RECT
RECTは、2018年に設立し、東洋大学を拠点にSDGsとダイバーシティに取り組む学生団体TIPSが運営する、SDGs & Diversity WEB MAGAZINEです。
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