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昭和レトロを感じる、ひと時のムード『資料録音(23)』人々の夢と思いの録音

物という物質には不足していても、
人々の精神的な温かさを感じる「昭和」という時代・・・ 
それは幻想なのかも知れませんけれど、かつて
どこかで流れた音源(録音)から、古くても楽しげな、
憧れや、夢がつまった雰囲気(ムード)を味わっていただきたいと、
作らせていただいた “アナログ・レコードの音のCD”、
『資料録音(23)』から、
同封の解説とは別に、録音に惹かれた面などの情景説明を、
少し書かせていただこうと思いました。
このCDでは、一般市販された録音は入っておりません。

筆者が制作した復刻CD『資料録音(23)』人々の夢と思いの録音

最初に出てくるのは、東洋一とも言われた
豪華な施設「白雲楼ホテル」(昭和7年開業)の宣伝歌
です。
トップの写真をこの白雲楼ホテルの中央玄関にしました(笑)
和風の「長風閣大鳳」「万里荘紅松」、
洋風の「長風閣孔雀」といった名前の客室らしい写真もあり、
音楽喫茶室、大ホール、ダイニング・ルームなど、
どの風景も素晴らしき昭和レトロで、新鮮に思いました。
きっと多くの人達が、家族旅行で楽しまれたのでしょうね・・・ 
そこでのかつての賑わいを想像するのも楽しいものです。
しかし、昭和20年代終わり頃に吹き込まれたらしい
“また、おいでね” と歌われている歌詞は・・・既に夢の跡。
「白雲楼ホテル」は・・・長きに渡り廃墟となっておりました。

続いて出てくる、昭和30年代の、神奈川県は湯河原の温泉施設「山翠楼」大宴会場からは、拍手喝采の「黒田節」が聞こえてきます。
年配の男性が歌っているような歌声、すごく上手です・・・また伴奏も、
味のある昔のスタイルです。
やがて、館内放送でも使われていたかのような案内アナウンスが流れ、
イギリス民謡のゆったりとした、美しい演奏が流れて来ます・・・
「山翠楼」は運営会社も変わり、現存していますが、
やはり「年代を感じさせる特有な演奏と、アナウンス・スタイル」
の録音は、昭和30年代当時を十分に感じさせるものでした(笑)



同じく、「日本衣料有名百店会」(既に解散)の宣伝アナウンスも、
現在に思えば、スタイルは昭和レトロなもので、
近年には聞かなくなった表現方法に感じていました。
ラジオドラマふう演出と、ストレートな宣伝です。
こちらのアナウンスは女優の有馬稲子さん。

子供の頃に観ていたテレビアニメの『サザエさん』と言えば・・・の会社の宣伝。「電球から原子力まで、電機の総合メーカーとしての東芝が・・・」のアナウンスに、なぜかゾクゾクしました。
でもアナウンスを思いっきり間違えて、しゃべってしまっているので、
きっと後に回収騒ぎになったのでは?と想像する音源。
勢いあるテーマソング、そしてトランジスター・ラジオの宣伝
「お小遣いでも買えるお値段、5600円です!」・・・そんな時代が
あったんだなぁ・・・と。
もちろん、筆者は、まだ生まれておりません(笑)

そして舞台は、東京の国際見本市の会場へ・・・ 
晴れ晴れした天気の下に開催されているようなイメージに、
クリアな発音の女性が、レコードを作るための「射出成形機」ほかの
製品アナウンスをしています。
昭和38年のある日の会場のムードでした。

一体何の演奏が始まったのか?という感じで、
軽快なリズムの演奏が続いて行きます・・・・
クラウン・レイディオ・・・クラウン・ステレオ・・・・という歌詞?だけが出てきて終わる、「CROWN」ブランドで、東京に本社があった
「クラウン・ラジオ・コーポレーション」によるデモンストレーション。
謎に満ちた音楽が、また昭和のミステリアスを誘う録音に
なっています・・・・
筆者はクラウンのオーディオを使ったことがありませんが、
海外のヴィンテージ・オーディオとしては、評価が高そうな気がします。

中国!中国!・・・クーニャンの歌って? アナウンスと共に
不思議なムードの音楽が流れてくるのは、横浜中華街にある
中華料理の老舗「中華菜館 同發」による昭和30年代の
コマーシャルでした。
歌の合間に入ってくるアナウンスが特徴的で、ロマンティックな
ムードです。流れる民謡は、当時、ザ・ピーナッツの歌でも
知られたそうですが・・・??? 

都会の騒音から逃れて、2時間あまり・・・とのアナウンスから、
大自然の風景が展開される修善寺ニュータウンの朝。
知る人ぞ知る、8階建てのホテル、ニューキャッスルは
ミステリアスですね。ネット上にあるのは既に廃墟の姿・・・ 
時を超えて想像する別荘地のムードです。


 
フランスへの直行便を開始した日本航空「Japan Air Lines」。
この録音よりも何年か後に始まったエフエム東京のラジオ番組
『ジェット・ストリーム』を連想させる作りは、フランス旅行を夢見る人々の想像を膨らませたのではないか?と感じました。
女性の美しい発音のアナウンスに、効果音にかぶせた機長アナウンスが、
素晴らしい臨場感を盛り立てている、音楽のコマーシャルです。

前のトラックから強制的にフランスへ連れてこられたリスナーは、
フランスの有名老舗カフェ「カフェ・モーリス」にて、
1960年に作られた非売品のソノシート録音を2枚鑑賞できます。
フランスのヴィンテージ・カフェ作品とも言えるものですよ。
これはもう、ほとんど残っていないのではないでしょうか。
媒体が経年劣化し始めていて、再生・録音には、ちょっと工夫が必要になりました。2曲ともに素晴らしい作品、大変稀少な録音でもあります。

アメリカの、あるラジオ番組のトークが聞こえてきます・・・ 
それは、1940年3月のある日に放送された、
世界的なタバコの会社「フィリップ・モリス」のラジオ番組。
当時は生放送ですから、もともと録音は無いんですね。
・・・ですが、制作会社が録音で残した、アメリカを代表する
有名楽団の一つによる実演が流れて来て・・・筆者は感動しました。
1940年というと、昭和15年、戦前です。

聞こえてくる音声は、おそらく、この世に現存する
唯一の原盤録音からのもの・・・解説にも書いていない筆者の裏話として、マスター原盤は本来4面分あったんです。筆者が譲っていただこうとしたのは30年近くも前になりますが、その時すでに2面分は、残念ながらダメになっていて、生き残った2面分だけを日本に送ってもらったのです・・・
CDに添付の解説には、多少しゃべっている部分も翻訳付きで掲載していますけれど、これぞ「本場アメリカでのヴィンテージ・ラジオ」を垣間みれる “ひととき” となるでしょう・・・ 
しかも、録音といっても、あの有名楽団によるラジオでの
実演が聴けるなんて・・・!!

そして、いよいよ最後に聞こえてくるのは・・・1960年の夏頃に
アメリカ国内のラジオにて、実際に流れていたであろう
有名「歯磨き粉」のコマーシャルが5本。
当時使用されていたラッカー原盤ですから、何度も使われて、
音溝は傷んでおりますけれど、超・稀少音源・・・
プログレシップ、サンバ、デキシー、デキシー、ロックンロールの
バージョンで、順に流れてきます。
あぁ、これが当時にアメリカの各家庭にあったラジオから
流れていたんだなぁ・・・と思うと、それもまた面白い
「音声の想像」なのでした(笑)


お読みくださり、ありがとうございました。
少しでも昭和レトロの想像をお楽しみいただけましたら幸いです!

『資料録音(23)』人々の夢と思いの録音
(当時のアナログ・レコード、録音原盤による音で楽しむ復刻CD)

収録内容:
白雲楼小唄 / 山翠楼の宣伝 / 同發菜飯の宣伝
日本衣料有名百店会の宣伝 / 東芝の宣伝
株式会社日本製鋼所 昭和38年東京国際見本市
クラウン・ラジオ・コーポレーションのデモ
修善寺のホテル・ニューキャッスル&ロイヤル・コテジの宣伝
日本航空の直行便でフランスへ
フランスの「カフェ・モーリス」にて(1&2)
フィリップ・モリスのラジオ番組から(1&2)
コルゲート・デンタル・クリームのCM5本

(曲間含む合計:約49分50秒)

媒体:音楽CD(自主制作CD-R盤)
自主制作盤(正規盤)
企画により古いレコードやラッカー・マスター等を音源としています。

解説は、上記の文章とは違うものです。

御希望の方は、以下の筆者のサイト『懐的音館』にて購入できます。
https://edison-international-records.com/product/10023

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