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こどもたちの共創力は無限大。伸ばすも潰すもオトナの責任。

鎌倉・逗子・葉山あたりには、自然や遊びやものづくりを通して生きる力を養うことができる学校外のスクールがたくさんあります。

そんなスクールのひとつ、鎌倉の美しい山の中で、こどものための探求型課外授業「マナビノキ」を主催するすえちゃん(末原絵美先生)から声を掛けて頂き、ワークショップの1日先生をする機会をいただきました。

お題は、「廃材を使ってテーブルと椅子をつくる」


ワークショップの目的

僕は、先行き不透明で正解がなく、最高におもしろい「人生」という旅を生き抜くには、3つの力が必要不可欠だと考えています。
他にもいろいろありますが、大元はここかと。

哲学的思考力
想像力
創造力

いずれも、学校では教えてくれません。
だから、親がこどもに教えてあげる必要があります。

この3つの力は1日では到底養えませんが、「廃材を使ってテーブルと椅子をつくる」というプロセスを通して、そのエッセンスを感じてもらうことにしました。

もっと言えば、
「自分が欲しいと考えた社会や人間関係やモノやコトは“創れるんだ”という体験と自信を贈り物として手渡してあげたい」
ということです。

それを今回のワークショップの目的であり到達点として、すえちゃんと共有しました。

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ワークショップのゴール設定

僕は、株式会社REBRANDINGの代表をしております、中西豪といいます。

「企業と地域を構成する『人』の創造力と自発性を呼び覚まし、企業と地域に持続可能な自律性を取り戻すようファシリテーションすること」をナリワイとしています。

具体的には、企業の新規事業創造を支援したり、地方中心市街地の活性化を支援したり、自社事業として社会の遊休資産をシェアリングエコノミーで再価値化したりしています。

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そんな折、こどものための探求型課外授業「マナビノキ」を主催するすえちゃんから声を掛けて頂き、ワークショップの1日先生をする機会をいただきました。
お題は「廃材を使ってテーブルと椅子をつくる」。
僕が建築学科出身でDIYが好きで、昨年の夏、別のワークショップですえちゃんとこどもたちと一緒にベンチをつくった経験から、僕のことを思い出して頂いたようで、とても嬉しいことです。

今回のお題を頂いて考えたことは、ワークショップの目的である哲学的思考力・想像力・創造力を養うために、「テーブルと椅子をつくる」ことをワークショップのゴールにするのを辞めました。

代わりに、「どんな場をつくりたいか」をこどもたちに問い、チームごとにゴールとして設定してもらいました。

つまり、「モノ」ではなく、「状態」をつくるワークショップとしました。
しかも、どんな状態を1日のゴールとして目指すかは、チームごとに他者とのコミュニケーションを経て共創の中で設定しなければならない。


こどもたちに伝えた1つの質問と3つのポイント。後は何も教えない。

参加者は約25名。
お互い「初めまして」の子も多い。
年長さんから小学6年生まで。一番多いのは小学2年生前後です。
異年齢が混ざり合い、学び合えるよう、約5名ずつ5チームに分かれてもらいました。

まずは僕から自己紹介。
僕は、そっと学びの背中を押してあげるファシリテーターに過ぎないので、「ごう先生」ではなく「ごうさん」と呼んで欲しいとお願いしました。

はじめに、1つの質問をこどもたちに投げかけました。

「もし、『猿畠』に大きなテーブルがあったら、みんなで何したい?」
猿畠(さるばたけ)とは、マナビノキのフィールドで、鎌倉の山の中にある美しい原っぱのこと。

「消しピン!」 ー お〜消しピンね。
「消しピン!」 ー 消しピンね。
「消しピン!」 ー 消しピンばっかりやないかい!
「みんなでご飯食べたい!」 ー い〜ね〜
「ノート書く!」 ー お〜書ける書ける!
「丸いのがいい!」 ー お〜なんで? ー 「みんなで座れるから!」

みんな口々に自分の気持ちを話すことができます。
今の気持ち、「欲しい状態」を残しておくため、それぞれにノートに書いておいてもらいます。
字が書ける子は字で。まだ小さい子は絵を描いています。

「欲しい状態」に意識を向け、テーブルと椅子の「カタチ」に意識が向かないようにするのが狙いです。
学校でいつも目にするような、テーブルと椅子にまつわる固定観念を拭い去ってあげなければなりません。
「欲しい状態」が言語化できたら、それを実現するために、技術原理を伝えます。

伝えるのは3つのポイントだけ。

「猿畠でどんなことをしたいか、みんな想像できたと思います。それを実現するために、3つだけポイントを伝えます。」

「1つ目!」
「テーブルは平たい方が便利」

(細長い板の端を持って)
「2つ目!」
「一人前に出てきて、この板を上から押して?」
「板は横にするとグニャっと曲がるよね」

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「でも、縦にすると? 上から押してみて・・・」
「おーーー」

「曲がらなーい!!!」

「3つ目!」
「隣の人と二人組になって〜」
「一人は胸の前で腕を重ねて四角形を作って、力抜いて」
「もう一人は肘を押してみて」
「どう?」
「曲がる〜」
「曲がるよね」

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「じゃあ、こんどは、一人は左手を右の脇の下に挟んで三角形を作って」
「もう一人は肘を押してみて」
「どう?」
「固ーい!!!」
「固いよね。三角形て強いんだよ。」

当日、教えたことはこれだけです。
あとはなんにも教えません。


製作スタート!

そうして異年齢のチームごとに分かれ、いよいよ作り始めます。

「じゃあ、それぞれのチームで、廃材の山から木を持ってこよう!!!」
材料は、いくつかの工務店さんからご厚意で頂いたバラバラの形の廃材。廃材を廃棄するのにもコストがかかるとのことで、こどもたちのために、快く提供いただきました。
住宅に使われる高級な木材の端材ばかりなので、とっても贅沢なワークショップとなりました。

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道具は電動ドリルではなくカナヅチと釘にしました。
こどもたちの人数分、電動ドリルが用意できないということもありますが、より初源的道具の方が原理を理解しながらつくることができるので、学びが深く、壊れた時もつくり方を知っているので、直すことができる。
完成後のテーブルは猿畠に野ざらしになりますから、すぐに壊れます。壊れることを見越して、直せるしくみにして置く必要があります。

こどもたちを観察していると、チーム内であれを作ろう、これを作ろうと話し合っている様子もないし、作る手順や必要な材料を話し合ってもいない。
つまり、チームメンバーのそれぞれが好きな材料を集めまくる!!!状態。

次第に、槌音が響き始めます。

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さきほど一人一人がノートにまとめたように、「もし、『猿畠』に大きなテーブルがあったら、みんなで何したい?」の答えはそれぞれ違うはずなのに、短い会話とアイデアをパスワークしながら、協力しあって状況が動いていく。とっても高度な共創を間近で見ることができる、刺激的な時間でした。

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大学生の皆さんに各チームにサポートに入って頂いたのですが、
「議論や進め方のリーダーシップを取らないで欲しい」
「『こうした方が良いよ』と助言しないで欲しい」
「手伝わないで欲しい」
と依頼しました。それらすべてが、こどもたちの共創の学びを奪うためです。

僕たちオトナはファシリテーターです。
学びを促すのが仕事です。

「一回手を止めてみよう」
「どう思った?」
「どう感じた?」
「どうしたらうまく行きそう?」
(一人一人の発言を聞いて)「うん、(発言を繰り返す)だね」
「他には?」
「危ないよ!」
「ひとつ目のポイントは何だった?」
「ふたつ目のポイントは何だった?」
「みっつ目のポイントは何だった?」

おそらく、この日、これくらいの単語しか発していない。

あとはずっと黙って、
こどもたちの振り下ろすトンカチが隣の仲間のオデコをかち割らないか、
その手を振る角度だけに目を配っていました。

オトナのもうひとつの仕事は「安全管理」です。
安全管理に最大限の時間と意識を傾けます。

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オトナが唯一手伝うのは、道具の使い方が分からず危険な時。
ここぞとばかりにしっかり丁寧に伝えます。

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丸一日かけ、各チーム完成!

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筋交いが付いてとっても頑丈!そして美しい。

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自分のサイズに最適化された椅子。バッグを掛けるフックも付いてる。

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とっても広くてみんなで座れるテーブル。裏側に突き抜けた釘を全部折り曲げて丸めた優しいテーブル。

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三角形がかっこいい。そこにあるものを活かすとクリエイティブ・ジャンプが起こる。脚は細くて軽やかなのに筋交いが入って頑丈。

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お大臣椅子。ミニテーブル付き。デザインがかっこいい。

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完成度も精度もとっても高くて綺麗。

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こちらはベッド。

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道具入れになったり、

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テーブルになったり。

そして、今日のゴール、消しピン!!!

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ごはんも食べれた!

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ノートも書けた!

今回はあいにくの雨で室内作業だったけど、マナビノキのフィールド、美しい猿畠にみんなのつくったテーブルは設置します。

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こどもたちを観察していて考えたこと。

それぞれのチームは小さな社会で、そのなかでとても尊い共創が生まれていました。
ケンカするわけでもなく、我を通すわけでもなく。
相互作用の中でものづくりが進んでいく感じ。

そこで産み出されたのは、とてもアーティスティックで技術的にも裏打ちされた作品たちでした。

今回、こどもたちに体験してもらったものづくりの方法は、
20世紀的な「カタチ」をゴールとしてそこから逆算的に「設計」するのとは対局的な方法。
おぼろげな「状態」をゴールとして、今そこにある材料から試行錯誤しながら創っていく、「ブリコラージュ」という考え方です。
常に状況が変化し続ける現代において必要不可欠な創り方です。

こどもたちのブリコラージュの旅は、目を見張るようなこどもたち同士の学び合いと気付き合いの相互作用の繰り返しにより、誰も見たことのない、アートへと実を結びました。大人は教えず、手伝わず、ほぼ全てをこどもたちだけで創りあげたアートです。

「これから、家や学校で、いろんな悩み事が起こると思うけど、
今日、全て自分たちの力で欲しいテーブルと椅子を創れたように、
すべて自分の力で解決していけるよ。応援してます。」

ワークショップの最後、みんなにそう挨拶し、素晴らしい1日が終わりました。

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