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“未来を作れ。信は金なり。本質を突け。” 『山口揚平』が語る「貨幣の本質」とオススメの本

(この記事は2019年に作成したものを再掲載しております。)

業界のトップを走る「プロフェッショナル」が薦める本とは?読書をもっと面白くする実名ソーシャルリーディングアプリReadHubが、独自インタビューをお届けするReadHubTIMES。コンサルティング会社で複数のM&A案件を担当し、その後独立。「シェアーズ」の事業売却を経て、今でも複数の事業の運営をコンサルティングする山口揚平氏。山口氏がこれまで見抜いてきた物事の「本質」を、オススメの本とともに余すことなくご紹介する。

早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。
専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010年に同事業を売却。現在は、コンサルティング会社をはじめ、複数の事業・会社を運営する傍ら、執筆・講演活動を行っている。専門は貨幣論・情報化社会論。

レバレッジポイントを見抜こうとした経験

私の現在の活動の軸は「事業創造」です。代表を務めるブルー・マーリン・パートナーズで、宇宙開発から、アニメや劇団まで、幅広い事業のアクセラレーションに携わっています。

1999年にコンサルティング会社に入社してから、しばらくはM&A業務に従事していました。M&A自体が日本で多く知られるようになったのは最近ですが、その頃の時間の濃度は尋常ではなかったです。

M&Aはやることの規模の大きさに対して、かけられる時間が少ないものです。そのため、「行動する」ことよりも「行動することを決める」ことの方が、重要度が高いわけです。

どうすれば生産性が上がるのか、とことん考えていました。

その経験から、企業の本質、すなわちレバレッジポイントは何かを見抜こうとする習慣がつきました。


とにかく「こなす」ことで鍛えた

本質を見抜くことは簡単ではありません。

近年インターネットで手軽に情報にリーチできますが、10年前には良い情報を集める手段は本しかありませんでした。

コンサル会社にいた頃、ちょうどAmazonが出てきました。本を買うことに関しては全て経費で落ちていたので、「経済の本質」とか「投資の本質」とかAmazonで「〇〇の本質」と検索しては全て購入し、年間1000冊くらいは「読みこなして」いました。

「読む」というよりは「こなす」。膨大な情報を浴びながら、効率的に本質を見極めることを意識していました。かなりハードでしたが、猛スピードで思考していました。

本質は世の中に求められていない

近頃テレビのコメンテーターとして、本質を見極める力を使うこともあります。その中で感じるのは、多くのニュースは氷山の一角として表面化した出来事を、取り上げるだけだということです。

若者の行動、芸能界の問題…。普通の人は、何故そういうことが起きるのか根本が理解できないので、その部分を多く話すようにはしています。ただ、話しすぎたり難しすぎたりして注意される場合があり、本質を捉えるということが求められていないのだと感じています。

生命の本質は「関係」にあり

今まで時間を割いて考えてきたのは、「お金」についてでした。「シェアーズ」という個人投資家を支援するサービスを立ち上げ、売却した経験がありますが、その中では「お金とは」が大きなテーマでした。

現在は「生命とは」について考えています。結論から言えば、生命とは「関係」だと考えています。

近年、個人主義が注目されていました。しかし、私は「関係主義」こそ、次のパラダイムだと考えます。

例えば、おばあちゃんが亡くなって悲しく感じる理由は、おばあちゃんの肉体がなくなることではなく、おばあちゃんとの思い出やつながりが途絶えてしまうからこそ悲しい。つまり、おばあちゃんと自分の「関係」が主役で、それぞれの人間は脇役とも言える。

「生命」というテーマは大きく、長年考えてきました。1度で本質にたどりつくとは限りませんが、「本質は何か」と考え続けることで、だんだんと本質に近づきます。これは今でも活きている習慣ですね。

考えるクセは固定観念が崩れたときにつく

僕私が本質論について考えるようになったきっかけとなった本があります。それがムツゴロウの自伝三部作『青春記』 『結婚記』 『放浪記』です。ムツゴロウさんこと畑正憲さんの自伝を通して、何をとっても規格外なムツゴロウさんの人生を体感することができました。

ムツゴロウさんはとても頭が良く、中学生の頃には東大に入れるだけの頭を持っていました。恋愛に熱中しつつも、東大に入学。その後、作家を志すも、のちにノーベル文学賞を獲得する大江健三郎さんを見て、作家の道を諦め、麻雀に興じ、研究員、コピーライター…と持ち前の才能を生かして職を転々とします。そして、とうとう「ムツゴロウ王国を作る」という夢に出会い、活動を続けます。なかなかない人生ですよね。

この自伝を読んだとき、自分の中で固定観念が崩れました。それ以降は、固定概念を疑い、様々なことを考えるようになったのです。

今振り返ると、固定観念が崩れたこの機会が、私に物事を考えるクセを与えてくれたのだと思います。

とにかく全て読む

「人間の本質」というテーマに食らいついていた時期に読み、一番印象的だったのはマズローの『完全なる人間』と『完全なる経営』です。欲求を段階に分けて理解する欲求五段階説が有名ですが、マズロー自身は「人間とは何か」という根本の部分を考えていた人でした。ちょうど自分にぴったりだったのです。

『完全なる人間』で触れられていたこととして、「安全欲求の優位性」があります。簡単に言うと、人間はリスクよりも安全を取る傾向にあることを指しているのですが、それをマズローは子どもの行動から帰納的に捉えています。

学術的に人間の本質を取り上げており当時の自分にとってはいい本でした。しかし、これはどんな人にもオススメできる本ではありません。人はそれぞれ、必要な本を自分で知覚するべきだと思っています。

「読書を何かに活用する」ではなく、仕事に関するテーマの本を、とにかく全て読む。自分にとって、ビビッとくる本をオンラインでも本屋でもいいので、買って読む。最初はざっくりした自己啓発本でもいいと思います。そこから、本質に近い内容へ徐々に成長していく。

すると、本質を見抜く目が養われ、良い人生を送れると思います。

未来を作れ。信は金なり。本質を見抜け。

私は大きく分けて三種類の本を書いていて、それぞれにキーメッセージがあります。
・キャリア系の本では「未来を作れ」、
・お金系の本では「信は金なり」、
・そして思考系の本では「本質を突け」
です。会社にただ勤めているだけでは、歳をとった先で年金がもらえず不安になったり、生活が不自由だったりします。それを回避するためには、自分の居心地の良い未来を作るしかないのです。

そして、お金を稼ぐときには、自分だけが得しようとしても仕方ありません。自分の相手が稼ぐことが結局、フィードバックループとなって自分に返ってくるものです。であれば相手に価値を与え、信用を獲得し続けられるような行動をし続けることが重要です。
これまで話したように、何をするときも、その本質は何であるかを考えることが最重要です。であれば、私がコンサルティング企業にいたときに鍛えたように、その物事の根本にあることは何かと考える習慣をつけることが一番大事だと思います。

※インタビューをもとに作成
インタビュー:青木郷師、文章:高井涼史


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