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パネルディスカッションの価値を高めるモデレーション技法

昨日、仕事の関係であるパネルディスカッションに参加した。

ディスカッションの質はパネリストは元より、モデレーターの腕前に左右されるところが大きいが、今回は改めて気づきと学びが多かった。

忘れないうちに要点を纏めてみると、モデレーターが行っていた技法で特に目を引いたのは以下の点だ。

1.具体化・抽象化の精度

2.関連情報の引き出しの多さ、適確さ

3.参加者が持ち帰れる情報価値の提供

順番に見ていきたい。

1.具体化・抽象化の精度

パネリストは、ある種言いっぱなし。勿論、パネリストに投げかける問いは用意してあるし、その問いの精度が大事であることは言うまでもない。

それに加えて、ディスカッションの中で出された発言の中から何等かの意味を抜き出したり、構造化する、といったことがモデレーターによってなされると、パネリストとして次の発言に繋げやすい。また、発言の質も高まる。

この作業はかなりの経験値や技量がないとできないのだろうけど、日常的に具体と抽象の行き来をトレーニングすることによって、ある程度は鍛えることができるだろう。

問題なのはその精度。抽象化しすぎた話から具体的な例示を出したり、具体的過ぎる会話から抽象的な意味を見出す際に、その精度が甘いと、ブレた纏めになってしまう。この精度のピントを合わすには、やはり場数を踏むしかないのかもしれない。

2.関連情報の引き出しの多さ、適確さ

参加者の発言を纏める際に、そのモデレータは、国内外の参考事例を紹介していた。「Aさんが言われていた○○については、デンマークで行われているこのような取り組みが参考になりそうです。」といったように。

発言内容の整理を行った上で、具体的な他の例示と結び付けているのだ。

これは、具体→抽象→具体 といった往復運動を高速に繰り返していることになる。

ミソは、抽象の後の具体化の量と質だ。

ある抽象化された意味や価値の中から、それに紐づく他の関連しそうな具体的な情報を引っ張ってくるためには、自分の中に相当な引き出しを持っておく必要がある。そしてそれが瞬時に取り出せなければならない。

これを書きながら思い出したのは「メモの魔力」。

この本の中でも「具体・抽象・具体」の流れがメモの技法として体系化されており、参考になる所が多い。

3.参加者が持ち帰れる情報の提供

名だたるパネリストが登壇するようなディスカッションでも、時として、「何かいい話聞いたなぁ。面白かったなぁ」で終わることが多い。

自分が単に受動的に話を聞いていただけ、ということもあるが、逆にいうと相当能動的に話を聞いていないと、パネルディスカッションのような不定形な会話の中から、価値ある情報を持ち帰ることは難しい。

なので、一定程度は受動的な参加者に対しても持ち帰れるような状態で情報が纏められていると、参加者の満足感は高くなる。(でもこれって益々受動的な参加者を増やすことになる可能性もある)

具体的には、今日のディスカッションを通して得られた気づき、特に気になった言葉は○○など、1センテンスで言えるような言葉のことだ。

この1センテンスの言葉の中に、ディスカッションの中で特に意味のありそうな会話のエッセンスを凝縮するのだ。

この力を高めるには、自分で数多くのディスカッションを聴きながら、自分であればどう1センテンスに纏めるのか、これを考えるトレーニングをすることに尽きるだろう。

まとめ

以上、パネルディスカッションにおいて優れたモデレーターに見られた技量について整理してみた。

1.具体と抽象を高速で往復できる力

2.関連情報の引き出しを多く持ち、適確に繰り出せる力

3.参加者が持ち帰れる情報に纏める力

いずれも自分にはまだ足りていない力だけれど、今回のディスカッションを機に、少しでも近づけるよう努力していきたい。

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