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宗教の要素を元に今のビジネスを考える

「哲学と宗教 全史」(出口 治明著)関連で続けて投稿。

本書宗教を読みながら、様々な宗教に共通する要素について考えてみた。

宗教に共通する7要素

キリスト教にしてもイスラム教にしても、仏教にしても、ほぼ全ての宗教に共通する要素は何なのか、それは何故必要とされているのか、そして現代のビジネスにも応用されているものはないのか、といったことが気になった。

宗教に広範に使われている要素を、以下7要素に整理してみた。

1.マスターブック(聖書、コーラン、経典等)

2.祈り(礼拝、サラート、読経等)

3.聖地(エルサレム、メッカ、ルンビニ)

4.シンボル(マリア像、仏像 *イスラム教は偶像崇拝を禁じている)

5.戒律(不殺生、禁酒、食事内容等)

6.拠点(教会、モスク、寺)

7.エージェント(牧師、僧侶等)

7要素が生まれた理由についての考察

それでは、どうしてこういった要素が生まれていったのか、その要因について考えてみたい。

1.マスターブック

不特定多数の人にある新しい考えを広めていくにあたっては、共通の言語やコード、ストーリーがあると便利だ。古代はこれが口承により伝えられていたが、文字化されることで普及のスピードと効率性が高まった。

2.祈り

ある考えや価値観を効果的に共有するには、共通体験があった方がいい。祈りは、恐らくこの共通体験を効果的に演出する手段として考えられ、発達したのではないだろうか。

3.聖地

最初にその考えが生まれた地、その考えを生み出した人が生まれた地を神聖化することで、その考えの正当性を高めようとしたのではないか。

4.シンボル(マリア像、仏像 *イスラム教は偶像崇拝を禁じている)

概念や考えは、抽象的なので、なかなか多くの人に伝えるのは容易ではない。一定の教育レベルが揃っており、抽象思考ができる人達が集まっていないと、普及は難しかったのではないか。そこで分かり易く具体的にその考えを表現する物を作り上げたのだろう。

5.戒律(不殺生、禁酒、食事内容等)

あるコミュニティを維持しようとした時に、必ずはみだし物が出てくる。ネットも、比較的自由な空間であるが、一定のルールや社会規範がないと炎上したりフェイクニュースが流れるなどの問題が生じる。人間の欲望には際限がないので、これを抑制する手段として考えられたのではないか。

6.拠点(教会、モスク、寺)

デジタルで情報のやり取りが可能な現在と違って、情報を効果的に人に伝搬させるためには、ひとが集まる場所を形成し、その場所を使って考えを広める必要があった。これを効果的に行うために教会や寺といった拠点が整備されたと考えられないだろうか。

7.エージェント(牧師、僧侶等)

一人が伝えられることには限界がある。エージェントを複数立てることによって、情報を指数関数的に広げていくことが可能だ。いわゆるネズミ講的な作戦だ。このために、効果的に情報を伝えられる営業マンのような優れたエージェントが歴史上も数多く存在した。キリスト教におけるパウロはまさにその一人といえるだろう。

それでは、今のビジネスで応用されていると思われる事例について考えてみたい。

TEDx

1984年にサロン的な活動として始まったこの取り組みは、今や全世界に広がっており、日々多種多様なテーマでの講演が開催され、ウェブにアップされている。元々キリスト教圏で始まったということもあり、上記の要素に共通する内容を見てとれる。

1.マスターブック

全世界共通のマニュアル、コードがあり、原則としてその内容に則って運営が行われている。

2.祈り

直接はないかもしれないが、聴衆がスピーカーの話を聞くというスタイルは、教会やお寺で牧師や僧侶の説教を聞くというスタイルに類似する。

3.聖地

毎年カナダのバンクーバーで世界講演会が開催されている。

4.シンボル

TEDxのロゴ

5.戒律

TEDxを使ったイベントを開催する際のルールが厳密に定められている。

6.拠点

各開催拠点

7.エージェント

各地で開催を主催する人達

コンビニ

全国に約5万店舗に広がったコンビニ。その数は郵便局よりも多く、全国津々浦々、人口減少の進んだ過疎地域でも主要な幹線道路には必ず何店舗かはあり、ライフラインを支える機能の一つとなっている。ではコンビニと宗教との共通点を探ってみよう。

1.マスターブック

ブランド毎に決められたマニュアルが整備されている。

2.祈り

直接的に共通するものはあまりないかもしれない。ただ類するものとして、ブランド毎のテーマソングがあげられるかもしれない。でもユーザーが口づさむ程浸透しているものは少ないかも。

3.聖地

これはあまりないかもしれない。

4.シンボル

ブランド毎のロゴ

5.戒律

ブランド毎に決められたレギュレーション

6.拠点

各店舗

7.エージェント

フランチャイズ経営を行う各店舗オーナー

AKB48

今度はエンタメ業界に目を向けてみよう。

100万人を超えるファンを抱えるまでになったAKB48。最近その勢いには若干陰りが見られるものの、やはりここまでのファンコミュニティを築き上げた構想力、仕掛けには学ぶことが多い。

1.マスターブック

解説本等

2.祈り

3.聖地

ライブ会場

4.シンボル

48のメンバー、グラビア等、CD,DVD等

5.戒律

総選挙の仕組み

6.拠点

各ライブ会場等

7.エージェント

ファンコミュニティの中のキーパーソン

まとめ:宗教の7要素から学べるもの

よくよく観察してみると、これらの要素は、マーケティングやブランディングといった仕事の中で、結構取り入れられているものが多いのかもしれない。1,000年以上の時間をかけて世界中に広まり、今もなおコミュニティとして継続し続ける宗教活動の戦略から、我々が学べることはまだまだありそうだ。

勿論、上記の要素を全て満たす必要もなくて、やろうとする事業の内容に応じて、どういった要素に力点を置くのか、何にリソースを傾けるのか、といったことは変えていけばいいのだろう。

個人的には、やはり7.エージェントの存在が大きいように思う。

創始者のカリスマ性は勿論大事だが、それを支える右腕や、後継者がうまく見つけられるか、育てられるか、がどの事業でも非常に大事で、ある種ここがうまくいけば、他の要素は自ずとそのエージェントによっていくらでも工夫、改善されていくことができる。

当たり前といえば当たり前のことかもしれないが、やはり最初のドミノを倒せるキーとなる人をいかにうまく捕まえられるかが鍵ということなのかもしれない。


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