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映画『恋のいばら』感想 

予告編
 ↓ 


連帯


 本作は、およそ20年近く前の韓国映画『ビヨンド・アワ・ケン』のリメイク作。とても現代らしい内容に作られていたように思いました。

 冒頭、松本穂香さん演じる桃が童話『眠り姫』の絵本を読み始める……。
(人によっては『眠り姫』としてではなく、ディズニーアニメに代表されるような『眠れる森の美女』として記憶していた人も多いんじゃないかな?)

うろ覚えというか、なんとなくでしか認識していなかったあらすじを少しずつ想い出していく。

そんなこれ見よがしな導入に引っ張られ、童話『眠り姫』のお話や教訓、或いは物語そのものへの反発やアンチテーゼなんかへの思慮も巡らせながら聴き入ってしまう。

「本作で描かれるドラマを読み解くのに、そして何より深く味わうためには、絶対的に必要になってくるに違いない」
と言わんばかりのシーン。

……すると、そうやって身構え過ぎている観客の緊張感を緩和させるかのように、第三者の訝しげな視線が不意に映り込んでくる笑。

こういうちょっとしたユーモアだけでも、城定秀夫監督作品っぽい気がして面白い。たったこれだけで、本作を重たくさせない。


 元ネタの『ビヨンド・アワ・ケン』は未見だったため、本作の初鑑賞時には知る由もありませんでしたが、あくまで『眠り姫』の件は本作だけの要素。この取り合わせが面白い。

たしかに元ネタの方でも「王子様」「お姫様」というワード自体は出ていたものの、童話どれか一つをピンポイントに引き合いに出したりはしていませんでした。

そんな「お姫様と王子様が云々~」というタイプの王道のおとぎ話を斜(はす)に見ていくような語り口も、本作の見どころの一つなのかもしれません。

 リベンジポルノを防ぐために、彼氏側にバレないように元カノの桃が今カノの莉子(玉城ティナさん)に接触することから始まる本作。

莉子は「(彼氏が)そんなことするはずない」と否定するが、実はカメラマンの仕事をしている彼氏に、性行為後にベッドで眠りこけている写真を撮られていたことがあり、次第に疑念を抱くようになる。

美しい寝顔が写るその写真は、まさしく眠り姫を連想させるようでした。

物語の性質上、事細かに述べてしまうとネタバレになってしまうので各所の説明は省きますが、実は劇中で、“知らないことは幸せなのか” みたいなやりとりがあった本作。

これを『眠り姫』の物語に準えて良いのならば、
〈眠っているうち〉=〈知らないうち〉に、呪いを解くためとはいえ確証も無く王子様がお姫様にキスをするという行為は、現代の倫理観で言えば正直アウトっぽい……。

同様に莉子も、好きな相手とはいえ、眠っているうち(=知らないうち)に、了承もなく写真を撮られている。

おまけに、まるで「呪いを解くため」という大義名分でキスをした王子様と対比させるかのように、彼氏は非常に綺麗な言い訳を建前にして……。

 実際にリベンジポルノがあったとか、お姫様の呪いが解けて目を覚ましたとか、それらはあくまでも結果論。おとぎ話の綺麗事の中にある現実を指差して、
「そんなのは王子様のすることじゃない」、「王子様なんか居やしない」
と言っているかのよう。



 元カノと今カノという……まぁ普通に考えたら一筋縄ではいかないわな。
そんな不思議な関係について、ある時「親友になれるのか?」という問いが生まれる。これもまた面白い。

桃も莉子も、お互いの関係性が明確に掴めていない間柄だからこそ生まれたこの言葉。

だからこそというか、〈親友同士〉や〈恋人同士〉とはまた違う……
いや、そういう関係性を持たなくても成立し得る “女性の連帯” というものを強く感じられる。

これは決して「女ってよくつるむよね~」だとか、そんな軽い意味ではなくて、たとえば本作で言えば、彼氏である男側を共通の敵(?)のように描くこともそう。

“相手に写真を握られている”  という、迂闊に行動できない状況や、眠っているから抵抗できない等々。構造上、男側が卑怯な形で優位に立ってしまうということは現実にだって存在する。そんな事態・状況を、一筋縄ではいかないはずの二人が結束して乗り切っていく物語に、女性の連帯のパワーを感じてしまったんです。

最期の最後にもう一つ、笑顔になれてしまう“女性の連帯”が描かれていたのもとても良かった笑。


 本作を、偶然とはいえ元ネタを未見のまま観に行けたことは、本当に運が良かった。これは是非ネタバレ無しで楽しむべき映画。時系列の刻み方に息を呑む終盤の展開もとても面白いし、何より、
「王子様なんて居ない」と思わせつつ、
実は「お姫様も居ないのでは?」、下手すりゃ「みんな魔女なんじゃねーか……?💦」
とすら思わされる笑。それはまた同時に“女性の連帯”の凄まじさを際立たせている気もしてくる。

 「恋人同士では観ないでください」というキャッチコピーは、単に「三角関係モノだから」というだけではなく、男の心臓が縮み上がってしまうからかもしれません笑。


あとがき

とりあえず初投稿。
noteの使い方合ってるかな、、、?

劇場で観た作品だけ投稿していきます。
あと、これまで趣味で書いてきた過去の感想文が、ここ3~4年分のだけは残っているので、それも投稿していこうかと思っています。

……時間がある時に。

#恋のいばら #映画 #映画感想 #映画感想文 #映画レビュー #城定秀夫 #松本穂香 #玉城ティナ #ビヨンド・アワ・ケン

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