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映画『道(1954)』感想

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過去の感想文を投稿する記事【81】

 本日、8月10日は「道の日」なんだとか。

 というわけで、本日投稿するのは映画『道』の感想文です。以前に投稿した映画『日日是好日』感想文(感想文リンク)の中で少し触れていて、いつか投稿しようと思って忘れてました。共に何年も前に書いた感想文ですが、もしよければ併せて読んでくださいな。



心が無いのは悲しいけれど、心があるからつらくもなるのかも


 タイトルだけではイマイチ内容がイメージできなかったんですけど、観始めると何か変な感覚がして……。「大道芸人と旅する少女」、「ザンパノ」……etc. 確認したことがない(しようがない)のですが、これは僕だけなのかな? どこかで見聞きしたことがあるようなワードや設定なんです。気のせいかもしれませんが、もしかするとこれは、童話や寓話のように、本作に近しい話や物語にどこかで触れていたからそう感じてしまったのかもしれません。つまり、それだけ昔から人々の心に何かを残してきた作品であるということ。作品自体が古くて今でも残っているからという単純な話なのか? 作品に込められている寓意性のおかげもあるでしょうけど、何より、良い映画であるからに違いないと思います。まぁだからこそTSUTAYAの『名作』コーナーに置いてあったんだろうけど。



 少しおつむが弱いジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、それ故とても純粋。ザンパノ(アンソニー・クイン)が相手でも素直に従うし、「待て」と言われれば一晩くらい平気で待つ。ただその純粋さのせいで、小器用というか姑息な術をまったく知らず、自身の感情を誤魔化したり、どこかへ逃がすことが上手にできないし、そうしようとも思い付かない。よく泣いてしまうのは単純に泣き虫だからというわけではないのだと思います。そんな彼女だから、重大な事態に遭遇すると立ち止まったり、キャパオーバーでおかしくなってしまう。

 こういった知的障がいの人たちに対する、いわゆる健常者の心情は、この作品が生まれて半世紀以上も既に過ぎた現在に至っても変わっていない気がします。目を背け知らん顔というやつ。ハッキリ言ってザンパノはロクでもない男、“人でなし” と呼んでも良い。けど、今述べた点に関しては多くの人が相違ないと言えてしまう。



 そんな男一人を海岸にポツンと残したラストシーン……。日が落ちて暗くなった海岸は、彼の周りに本当に誰も居ないのだと痛感させるようなとても印象的なシーンですが、そこまでに繋がるクライマックスが本当に見事。酔っていたとはいえ怪力自慢の彼があんな簡単に店から追い出されるシーンは、彼の筋力が衰えたことを匂わせるし、そしてその匂いは、直前のシーンで行った彼のパフォーマンスが失敗に終わっているのだと深読みさせるには十分なものがあります。あんなに酒に溺れていたのは力の衰えや彼女について現実逃避しているからのように見えてなりません。この一連の流れが、ラストの海岸シーンを印象的にさせる。



 この作品は、重大なことを敢えてシーンに収めないことでこちらの想像力を膨らませる、或いはザンパノに感情移入できるように促してくれる。そういった手段で、物語中の時間経過と、それと共に変化した登場人物の心情を観客に伝えてくれる映画だったと思います。



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