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映画『カラミティ』感想

予告編
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 3/31(金)に放送された『映画工房』内でも紹介されていましたが、
4/12(水)にWOWOWにて”初”放送予定の本作。


 ちなみにサムネイル画像は「みんなのフォトギャラリー」内で見つけた、アトリエはなみ様のイラストです。

カウガールとか、ウエスタン系で女性のイラストってなかなか見つからなくて……。本作の主人公カラミティとは別人ですが、素敵なイラストでしたのでお借りしました。

よければ読んでくださいー。


女だから?  子供だから?  So What?


 アニメーションの魅力は言わずもがな。輪郭線を持たない美しいアニメーションは、事細かにあーだこーだと語ることを無粋に感じさせるほどの映像です。同監督作の『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を観た時にも綺麗なアニメーションだと思ったけど、その時はDVDで観ていたから、本作のアニメーションを観た時の嬉しさったらなかったです。「あ、劇場の大きなスクリーンで観ると、こんなに違うんだ」と素直に思いました。これ以上言うことはありません。


 本作は、アメリカ西部開拓時代に実在した女性ガンマンであるマーサ・ジェーンの子供時代の物語。“カラミティ” ってのは〈災い〉とか〈疫病神〉、あとは〈厄介者〉みたいな意味らしい。正直なところ、彼女のことはあまりよく知らないで観に行ったんだけど、問題なく楽しめました(でも多分、知っていた方がより楽しめたかもしれません)。

 “女は女らしく” が求められていた時代に、家族を守るために奮闘する彼女の姿が描かれていきます。服装から仕事、立ち振る舞いまで、やることなすこと全て「女だから」という理由で否定されてしまう理不尽な時代で、男も女も関係無いと言わんばかりの彼女の勇ましい姿は、とてもかっこいい。ところどころで垣間見えるアウトローな感じは、観る人によって好き嫌いがあるかもしれないけど、将来ガンマンになるような人物なのだから、個人的にはそれくらいヤンチャな方が良い。劇中でも「じゃじゃ馬」って呼ばれていたしね。


 とはいえ、初めは狭いコミュニティの中から物語が始まるため、投げ縄だとか馬を操るだとか、周りの男に出来てマーサ(CV:サロメ・ブルバン)に出来ないことが幾つもある(今まで「女だから」という理由でやらせて貰えなかったから当然なのだけど)。けれど、男がやるのを見て(手本を見せてもらったり、男の動きを観察して盗んだり)、一人で練習するなど反復することでマーサも出来るようになる。こういった描写の繰り返しは、一見、ただ男らしさをなぞっているだけのように見えなくもないけれど、「男に出来ることなら私にも出来る」「男女に差など無いぞ、同格だ」と、彼女が主張しているようにも感じられ、負けず嫌いというか、マーサ自身の性格とリンクしているようにも見えてきます。



 なんていうか、このマーサ・ジェーンって、物語の主人公としてとても面白い。凄く印象的で覚えているシーンがあって、それは彼女が同じ旅団の女子たちと仕事をしながら話をしている中で、平然と「結婚しか考えてないの?」と言い放ったシーン。それも、何の悪気も無さそうに。直後の周りの女子たちの表情などからも分かる通り、まあ結構なKY発言だわな笑。これをこの時代に言えるっていうのが凄い。この時代、狭いコミュニティ内で暮らすのが当たり前で、和の中からはみ出ることは死にも匹敵することなのにも関わらず、同調圧力に屈することなく平然とKYな言動をしてみせる。僕みたいな小心者にはとてもじゃないけど真似できない。だからこそ周囲を変えていく——物語を動かしていく——。まさしく主人公。こういった一味違う人間性が各所に散りばめられているのも見どころの一つなんじゃないかな。



 クライマックス、冒険を終え、帰ってきたマーサは、イーサンのしでかしたことを知っても特に怒ったりするようなこともなく、優しい態度で彼を許していた。ちょっと前までの彼女なら激高して掴みかかっていたかもしれないのに。序盤での、投げ縄だとか体力や技術面の成長だけではなく、心の面でも成長していた彼女。

一番好きなのは、その後にイーサンを幌馬車から落とすシーン。旅に出る前は力づくで落としていたのに対し、今度は力ではない形で落としてみせたのは良かった(そして或いは、”別の意味でもイーサンを落としていた” かもしれないというのも面白い)。ここで力任せにしていたら “男ごときと一緒” 止まりだもんね。しかもここでのイーサンの落ちる動きが一度目と全く同じで反復されていることも、彼女の変化がよりわかり易くなっている理由だと思います。



 「見た目という魔法」——。終盤、少尉が語る話には、現代にも通じる ”人の心の弱さ” があると思います。序盤、この少尉とは全く関係の無いシーンですが、幼い子を怖がらせている連中に向かってマーサが口にした「自分も怖いくせに」という台詞こそ真実なんじゃないかな。昔も今も、威張っているのは、怯える自分自身を守るための逆張りのような行為なのかもしれません。要するにビビっている心情の裏返し。

 なんだかんだ言っても未だに残る「女だから」「男だから」という縛りやプレッシャーは、人を不自由にしかしないのだと、改めて教えられたような気になりました。


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