映画『ファースト・マン』感想

予告編
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 明日4/1(土)よりアマゾンプライムビデオにて配信開始予定の本作。現在公開中の映画『バビロン』でも話題のデイミアン・チャゼル監督の作品です。

……結局『バビロン』観に行けてない、っていうか最近忙しくて映画館にすら行けてない泣。



英雄の素顔を求めて


 『セッション』『ラ・ラ・ランド』と、超ヒット作を手掛けてきたデイミアン・チャゼル監督の名前に引かれて本作を観に行ったのですが、少しばかり驚かされました。確かに予告編などで散々言っていたような ”映像体験” という意味では凄まじいものがあったのは確かなのですが、過去作のようなエンターテイメント的な魅力よりも、登場人物のドラマに強く迫ったような雰囲気の作品でした。


「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な飛躍だ」

真面目に調べたり習ったりしたことはなくても皆が知っている。人類で初めて月に降り立ったニール・アームストロングが口にした言葉。“すごい人”、“偉大な功績”、“英雄”……。僕もそうだし、きっと多くの人々も同様に色んなイメージが頭の中にあるけれど、本作で描かれているのは、家族のことで悩んだり、友人の死で悲しんだりする、とても人間的な普通の男の物語。人類の進化が、科学技術の発展が、宇宙旅行の夢がとか、そんな綺麗事の話ではないように思えます。



 宇宙空間やロケット内での感覚を体感させる部分だけは驚かされるものがあったけど、あくまで宇宙飛行士としてのシークエンスのみ。これまでのデイミアン・チャゼル作品で感じた度肝を抜かれるような感覚はあまり見受けられませんでした(……なんか上手く言えない、というか変に伝わってしまいそう。決して「退屈だった」とか「期待外れだった」という意味ではありません)。とてもシンプルな手法の数々は、過去のヒット作による自信もあるかもしれないけれど、それ以上にニール・アームストロングという男を真摯に、真っ直ぐに描き出す心意気や姿勢の表れなんじゃないかな。個人的に、凄い、或いは素敵な演出だと思ったことを幾つか書いていきますね。


 とある計画の最中にコックピット内で火災が起きる。宇宙飛行士たちがそのコックピット内に入り扉が閉められ、何故かすぐに次のシーンへと行かずに真っ白な扉だけが映され続ける不思議な間がある。まるでこの後ここで起きる悲惨な事故を暗示するかのようなカット。その後、事故の瞬間に再び同じ構図のカットが映され、短い衝撃音と同時に小さく扉が歪む……。BGMなどで感情を煽るようなことは決してせず、事実を淡々と映すようでありながら実は、こういう細かな演出が施されている。

他にも、宇宙空間でのミッション中のニール(ライアン・ゴズリング)と、彼の家族たちを交互に映し出すシーンも素敵だと思いました。このシーンは計2回あるのですが、1回目はミッションの状況を確認する彼の妻ジャネット(クレア・フォイ)が描かれるけれど、2回目(終盤の山場)では往復するそれぞれのシーンがリンクしていない。物語というかそのシーンの状況を見せていた前者があるおかげで、後者のシーンがニールの心情(どちらかというと深層心理?)を表現していたものなのだと教えてくれる気がする、とても素敵な演出。彼の心の中にある “家庭”、“家族” というものの重さ、大きさを痛感させられる。

作品全体を通して安定しないカメラも、まるでニールの心の有り様を表しているようにさえ感じてしまいます。ラストのガラスを隔てた夫婦二人のシーンも印象的。その後の二人の関係性を示しながらも、二人が最期の最後まで、夫婦として歩み寄ろうとし続けていたのだと教えてくれる。

 “英雄” という視点でばかり描かれがちだったニール・アームストロングを別視点から描いた作品という印象。(もっと彼のことをしっかり調べてから観たら、より面白かったかもしれません。)こういう手法は作り手の強い自信、もしくは覚悟の表れなのかな? もしかすると ”ニール・アームストロングを描く” とはそういうことなのかもしれません。


 轟音によるミッションの過酷さの表現と、突然訪れる静寂=無音による宇宙空間の表現。そして視界全体がスクリーンで覆われるIMAXならではの魅力も凄まじかったです。特に月面に降り立つ瞬間に映像がIMAXに切り替わる感じは、劇場で観られて良かったと思います。今までになかった新しい体験ができるのも見どころです。


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