映画『エンド・オブ・トンネル』感想
予告編
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そういえば、2024年の『未体験ゾーンの映画たち』の上映作品が決まったそうな。……いつ頃決まったのかは知りませんが。
ということで本日は、過去に『未体験ゾーンの映画たち』で上映された作品の中から一つ、感想文を投稿しようかと。
多分、6~7年くらい前?の感想文ですが、よければどうぞー。
様々なマイナス要素こそが本作最大の武器
本作はホアキン(レオナルド・スバラーリャ)の自宅を舞台に物語が始まるのですが、ここでの描写が見事。初めのうちはわからなかったんですけど、次第にホアキンの性格や過去がなんとなく見えてくるうちに、閉塞感のあるこの狭い家は主人公ホアキンそのものなのだと知らしめてくれる。
玄関を開けると雨が降っていて、下半身が動かないホアキン(しかも独り暮らし)にとって外出は気軽に出来るような簡単なものではなく、外に出る気にはならない。家の中にも明るさは無く、まさに彼自身の有り様。
しかしひとたび庭に出ると雨は止んでいる(決して晴れているわけではないが)。茂った雑草や木々は、庭の手入れをお願いできるような経済力も、頼れる知り合いも居ないことを教えてくれるだけでなく、その空間に彼の過去を推察してしまうような様々な物が汚れたまま放置されていることによって、彼が閉じこもっている大きな要因の一つに “過去” があることを教えてくれます。
家そのものが彼の外観だとしたら、あの庭は彼の内面、或いは心の有り様とも言えるかもしれません。ベルタ(クララ・ラゴ)に庭の中に踏み入れられることを嫌がったところからもそんな気がします。
そんな彼が次第にベルタ親子と心を通わせていく中で、庭の鬱蒼とした草木の間から見えるランタンを眺めたりなどなど……、彼の心情の変化とシーンがリンクしているように感じられてとても面白い。
この映画はとても丁寧に作られていると思います。映画情報サイトなどに書いてある通り、ジャンル分けすると “クライムサスペンス” や “スリラー” になるんでしょうけど、にしてはスケールが小さく、それ故に物足りなく感じる人も居るかもしれません。
でも色んな演出が相乗効果を生み、物語の舞台の規模以上の面白さが確実にあります。セリフやBGMがそれほど多くないので、間も多く、不意な物音も混ざるせいか、サスペンスと相性の良いソワソワ感もしっかり活きている。伏線の張り方もうっとうしくないし、回収も鮮やかで、暗い家、狭いトンネル、動かない下半身といった様々なマイナスの反動のおかげか、より一層スカッと感じられるんです。
何より犯罪者と対峙する主人公自身が決して良い奴ではない、ってところも個人的に好き笑。
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