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映画『マジック・ロード 空飛ぶ仔馬と天空の花嫁』感想

予告編
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 本文中で「もう観られないかも」みたいなこと述べちゃっていますが、あくまで公開当時の話なのでご勘弁を。現在は U-NEXT や TSUTAYA DISCAS、アマプラなどでも配信中とのことです。


RPG感?


 久しぶりに『未体験ゾーンの映画たち』を観てきました。ご存じない方のために軽く説明しておきますと、様々な事情で日本での劇場公開が見送られた映画たちを劇場で観ようっていう映画祭で、僕も詳しくは知らないのですが、もう始まってから十年くらい経ってんのかな? 日本では公開されていないから前情報も少なく、とても純粋に真っ新な気持ちで観られるのが醍醐味の一つかもしれません。まぁそれ故に話題を共有しづらいという難点はあるものの、 「今を逃したら二度と観られないかもしれない!」という事実そのものが、作品をより味わい深いものにしているという不思議な感覚が生まれるのも特徴の一つなんじゃないかな。 (まぁ、なんだかんだで配信されたりソフト化されることも多いんだけど笑)

 1~2時間の映像作品である〈映画〉に対して用いる言葉としては妥当じゃないかもしれませんが、「今しか観られない」という “刹那的” な魅力が、映画の魅力をより押し上げているのかもしれません。




 さて、前情報も無く気まぐれで選んだそんな本作は、とてもファンタジックな大冒険活劇。その雰囲気・世界観は、まるで童話や絵本の世界をそのまま映像に落とし込んだかのよう。『オズの魔法使』を観た時のような穢れの無い純粋な気持ちになれた物語。昨今の映画は小難しくなり過ぎなのかもしれませんよね笑。

 文字に起こすのも大概ですが、はっきり言って、こういう類の作品にツッコミは無粋。……ツッコミたくなる気持ちもわかるけどさ笑。科学考証? 整合性? ほっといてくれー笑。




 ストーリー展開がとてもRPGっぽいのが面白い。ゲームによっては、村人や旅人などの依頼や頼みを引き受けなきゃ物語(ゲーム)が進まない。そうしないとゲームとしてのボリュームが足りなくなるし、また、自由にプレイできてしまうが故に、ミッションという枷を設けなければゲーム内のストーリーが破綻してしまうという事情もあるだろうしね。子供の頃から「ここのミッションめんどいなぁ」と思いつつも「そういうもんだから」で遊んできた……。

 そう、普通の感覚なら、本作の物語は成立しない。主人公・イワン(アントン・シャギン)が “流れに逆らわない” 性格だからこそ成り立つ。基本的に彼は、他人の意見や起きる全ての事態に対して流されていました。他人の意見や言葉の裏側を一切考慮しないのは、人を疑わずに、常に信じ、肯定しているという行動原理によるもの。一見、とても単純な損得勘定で動いているように見えても、ほんの少しの正義感や親切心であっさりと損得勘定を投げ捨てるような男。登場人物の中で彼だけが醸すそんな特別な存在感が、主人公っぽさに拍車をかけているし、何よりそんな男が唯一、己の欲望を優先させる展開もまた、王道っぽくて良い。

 ただの記念品というか、想い出にしかなり得ない用途不明の道具が、大どんでん返しに必要なキーアイテムに変貌する展開も、順番にクエストをこなしていき、次第に事が大きくなっていく感じもまたRPGっぽくて面白い。



 物語の性質上、とてもご都合主義のように見えてしまうようなことも無いことはないのですが、それはある意味、“主人公へのご褒美” みたいなもの。(ネットで見たことがある情報の受け売りですが)宮崎駿監督作品に見られるような演出。自身の利益より他の誰かのために行動してきた男が主人公の物語だからこその演出。本作は、その世界観をより楽しませてくれるCG映像も魅力の一つなんですけど、そんなご褒美シーンの時は必ずと言って良いほど綺麗で美しい映像が挟まれていました。それは景色だったり特別な効果だったり、「こんなイイ奴は是非、報われて欲しい」とすら思わせるイワンの人柄を讃えているような見応えがあります。


 また、前述した童話っぽさ、絵本っぽさにも繋がることなんですけど、基本的に痛々しさが存在しないのも良い。たとえぶつかっても、落っこちても、演者のオーバーリアクショ ンとギャグアニメチックな効果音の数々が、痛々しさを軽減・排除してくれるから、観客を不安にさせない。「ヒュー…ドスン」「ゴッチーン!」等々、とてもポップな音も勿論だし、首を傾げる時にはゼンマイを巻く時のような「ギギギ…」という軋む音、ビックリして目を大きく開きつつ瞬きを繰り返す際には「パチクリ」という文字が見えてきそうな擬音が挟まれる。子供も楽しめるそんなわかりやすさも魅力的。

 また、主人公を陥れようとする王様と側近たちも面白い。確実に嫌な奴らで悪人なのは間違いないのに、以上のようなギャグアニメチックなノリと、その雰囲気にマッチしたマヌケぶりがとても愛おしく、憎くならない。


 単純でありながらも明るく前向きで澄んだ心を持つ主人公、マスコット的でもあり冒険時のブレーンとして絶妙な軌道修正を促しつつユーモアも兼ね備えるバディ、主人公の心と物語に大きな波を引き起こすヒロイン、憎めない悪役などなど……。王道ファンタジーアドベンチャーにベストマッチなキャラクターたちも見どころの一本でした。


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