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映画『滝を見にいく』感想

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過去の感想文を投稿する記事【77】

明日、7月31日(月)にWOWOWにて放送予定の本作。

 沖田作品の感想文の投稿は久しぶりかも。よければ併せて読んでくださいな。


エグみ?


 よく言えば「丁寧」「落ち着いている」のですけれど、人によっては「間延び」とか「退屈」とか……、そんな風に捉えられてしまうかも……。元々、誇張した表現やデフォルメに頼らないユーモアが溢れる沖田作品の中でも特に地味(?)な仕上がりの本作では、途中、なんか太極拳チックな動きを何人かでやるシーンがあるんですが、もう「オレは何を見させられている?」という気分になる。僕は、そんなシュールさのアレコレに笑ってしまうのです笑。そして、そんな地味さがあるからこそ、人間味のパンチ力が際立つのが本作のとても好きなところ。

 まず第一に、メインのおばちゃん達7人全員に好感が持てない(爆)笑。いわゆるパブリックイメージとしての “おばちゃん像” の中から、好感を抱くには非常に難しいエッセンスをこれでもかと詰め込み、それが沖田作品特有のリアルで自然な仕上がりと相俟って、まぁーむかつくのだ笑。何よりその加減が最適であり、なんか鼻に付くとか、普段なら気にしないのにこの状況だとイラッとくる、という際っ際の絶妙なラインなんです。人間のエグみ(?)って、こんなに面白いんだと改めて思わされます(先程から敢えて「笑」と付け足しているように、あくまでも悪口ではなく褒め言葉です)。

 “フレンドリー” を履き違えている者や、達観しているフリして “他の奴よりイケてますよ” 感が溢れ出ていたり、他人を否定することで自己肯定感を生み出そうと内輪だけで愚痴をこぼしたり……。そんなのをローテンションで眺め続けた後に、暗いというかハッキリしない態度の者や集団行動度外視で “趣味のおかげで人生満たされます感” 炸裂された日にゃあ……。あのおばちゃんの怒りに大なり小なり共感できるはず。

 そんなそれぞれが、ゆっくりと、本っ当に少しずつだけど、協力していくのが本作のメインディッシュ。でも予想通りというか、ちょこちょこ上手くいかないのも面白い。



 そんな物語の先に訪れるあの “一撃” を、物足りないというか、もうちょっとスッキリさせるほどの一撃にして欲しかったなぁ、なんて当初は思ってしまいましたけど、その消化不良感を最期の最後にしっかり回収してくれる。沖田作品はラストショットが必ず印象的で、今回も漏れなく素晴らしかったと思います。流石の一言です。

 流石で言えば、ツアーガイド役の黒岩大輔さんも素晴らしい。“見事” の一言に尽きるような “スカタン” 感。本来、彼も彼で可哀想な目に遭う存在ではあるものの、ビジュアルなのか雰囲気なのか演技力なのか、その完璧なまでの出で立ちのおかげで一切の同情を捨てて彼を観ていられるのも良い。


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