見出し画像

映画『ミセス・ノイズィ』感想

予告編
 ↓


 本文中で「SNSやっていない」と述べていますが、、、まぁこのnoteはノーカウント。あとツイッター(今は「X」?)はこのnoteアカウントと繋げただけのお飾りなので、まぁ許してください。

 何より、公開当時の感想文なのでね。


 よければ読んでくださいー。


非常識


 何年前だったかは覚えていませんけど、一時期、騒音おばさんってのが話題になりましたよね。ワイドショー等でも取り上げられていましたし、それ以外にも、法律とかで明文化がされてはいないけど常識的に「そんなこと普通しないだろ」みたいな事情でのご近所トラブルなどなど……。

 ネットが普及して情報が簡単に拡散するようになったからこういう事例が明るみになっているだけで、昔からこういったトラブルは当たり前だったのかな? 幸運なことに今まで経験したことは無いし、叶うなら、今後の人生でも経験したくないものです。

 本作は、ノイズィ(noisy;うるさい、騒々しい)な事態が原因のご近所トラブルから始まる物語。


 この映画の憎いところは、何と言っても序盤の胸くそ感かと笑。観ているだけでストレスが溜まるようなエッセンスのオンパレード。通報するほどでもないけど耐え難い、そんなご近所トラブルによる悩ましさを表現したんじゃないかと思わせる程。子育てについて「“なるべく” 協力するよ」と口にする夫。やたらとわがままが目立つ子供。耳をつんざくとまでは言わないが、主人公・マキ(篠原ゆき子)の若干耳障り気味な甲高い声。やたらと生々しくリアルに映される虫の描写。小説家なのに口論になった途端、言葉の使い方が下手なマキ。そういった様々な事態が、引っ越し直後から連続していて……etc. 枚挙に暇がないとは正にこのこと。

これらのフラストレーションがあるからこそ、そこから物語が展開していく流れが面白く感じられる気がします。「おぉ、始まった始まった!」みたいな感じ。



 エンタメ的に、そして同時にドラマ的に倫理観を問う本作は、見せ方が良い。序盤、マキの日常のBGMは妙にノイズィでした。しかし、その後に描かれるお隣の騒音おばさん(大高洋子)の日常を彩るBGMはとても穏やかなものだった。お隣さんを一方的に非常識だと決めつけていたことを浮き彫りにさせる要素の一つで、こういった小さな工夫が至る所にあります。

お供え物の件で言えば、全く同じ行為であるのに、最初に描かれた時と後半で描かれた時では印象がまるで違う。一度目でお隣さんの “ヤバさ” みたいなものを認識させる機能を果たし、その後のシーンではマキに自身の思慮の浅さを気付かせる機能を果たす。いわゆる反復的表現というよりは、伏線回収に近いものだと思います。


 他にも、物語の中枢人物以外の意見が核心を突くのは面白かった。ネット上の意見を目に見える形で映し出し、バンドワゴン効果というか、一度傾いてしまった意見に容易く流されてしまう集団心理を描き、さもそれが正義であるかのように物語が進行することで、たくまずして、或いは狙って、観客にも同様の錯覚を起こさせていたのかもしれません。

その雰囲気に一石を投じた(?)人物がまさか過ぎて、失礼ながら「え?!お前が?」とすら思ってしまいました。



 ある時、世間の声を180度変えてしまう事態が起きる。小さなトラブルが重なり、最悪のトラブルへと転化し、そして新たな集団心理の幕が開く。誹謗中傷の矛先が変わり、中継カメラ越しの映像で「倫理観が問われる——」みたいな声が流れてきて……。もはやその中継映像やら放送内容それ自体が倫理観を問うような自体に発展している。

いやいや、アンタらがやっていることって、アンタらが否定している人物・行為と一緒じゃん、と。

 そんな想いと同時に芽生えるのは、「これって現実の社会と何も変わらないじゃん」という悲しい気付き。他人を叩いて何がそんなに楽しいのか。他人を否定することで “正しい自分” に酔いたいのか。自己顕示欲とか承認欲求ってやつが歪んだような印象です。「僕は(私は)正しい人間なんです!」という。

……まぁSNSをやっていない僕には知る由もありませんが。

(とはいえ、自分自身も陥ってしまわぬよう、気を付けていきたい。)


 そしてヒートアップしていく事態。エスカレートし過ぎてしまったこの異常事態をひっくり返す人物が、これまた、まさか過ぎて「え?!お前が?」(←二回目)と驚かされた笑。



 「非常識はどっちだ」という本作のキャッチコピーは実に上手い。なんだかんだでお互いに落ち度があるのはよくわかる。ただまぁ完璧な人間なんていないのですから、それ自体は何も問題はない。しかし、自分の信念が濃いと言えど、自分以外のことも視野に入れた倫理観を持つお隣さんに対して、主人公は自分の事しか考えていないような倫理観だった。そしてそんな本作の決着——「非常識はどっちだ」の一番の答え——が、「周りの人間だった」というのもまた面白い。あくまで個人的な意見ですけどね。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #ミセス・ノイズィ

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,762件

#映画感想文

67,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?