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映画『サン・セバスチャンへ、ようこそ』感想

予告編
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雑念


 えーっと……。触れるべきかどうかってのもあるんですが、“色々あった” ウディ・アレン監督の新作ということで。多分、前作が『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(感想文リンク)ってことになるのかな? だとしたらおよそ4年ぶりの新作。これまで長きにわたり、ほぼ一年に一作品ペースでコンスタントに映画を世に送り届け続けていたことを考えると、とても久しぶりの新作のようにも思えてきます。もちろん、一部の作品しかチェックできていないんですけども。

 “色々あった” から、結果的にはハリウッドなどからは縁を切られたような印象も受けるし、じゃあ「そんな人物の作品が公開されるのはどうなんだ」となるかもしれませんし、もっと言ってしまえば「そんな人物の作品を観に行く——劇場に金を落とすという形でその人物を支援してしまう——のはどうなんだ」となるかもしれません。事実がどーのこーの、調べても、調べても、一体何が本当なんだか……。


 とまぁ、事情を知らない方にとっては何のことか不明な前置きですよね、すみません。映画の感想文とは関係ないのかもしれません。でも、まったく、何一つ、一片の雑念が過ることもなく本作を鑑賞するというのは、正直言って不可能に近いです。だから先に吐き出せるだけ吐き出してしまおうと思い、ダラダラと書き連ねています。ご容赦ください。ここから本題に入ります。




 スペインのサン・セバスチャン国際映画祭を舞台に、映画学の教授である主人公・モート(ウォーレス・ショーン)が妻・スー(ジーナ・ガーション)の浮気を疑い、彼女の仕事に同行するところから始まる物語。キャラクターや物語の設定もあってか、各所に名作映画のオマージュが散りばめられているのは本作の見どころの一つ。

とはいえ、その数はとても多く、『勝手にしやがれ』や『突然炎のごとく』など、僕が観たことがある作品は一部のみ。しかもだいぶ前のことなのでよく覚えていないことばかり。

劇中でも会話の中で名前が挙がっていましたが、フェリーニ、ゴダール、ベルイマン、トリュフォー……etc. 多くの有名監督の映画作品のオマージュが存在するようです。もしすべてを知っていたなら、もっと色んなことに気が付いたかもしれません。


 しかし、(あくまでも個人的にですが)それらの名作映画を知らなくても特に問題は無いと思います。数十年前の名作映画を彷彿とさせるかのように、それらのオマージュシーンはすべてモノクロで描かれていきます。“モートが見ている夢や妄想” といった形でシーンが移り変わっていくこととも相性が好いし、「ここはオマージュシーンですよ~」と教えてくれているようでもあります。

 また、“モートが見ている夢や妄想” という見せ方が、モートの頭の中を視覚化してくれているようにも思えてきます。僕自身もそうでしたが、「何かしらのオマージュなんだろうけど、何の映画かわからない」となったとしても、それ以上に今のモートの脳内、或いは心情が窺い知れることで、引き続き物語を楽しめる。本作は、あくまでもそういう目線で楽しむのが健全なはず笑。


 中でも印象的だったのは、物語の後半、モートが夢の中で、部屋から出られなくなるというシーン(鑑賞後の答え合わせじゃないですが、こればっかりは「あのシーンは何のオマージュだったんだろう?」とわざわざ検索。ルイス・ブニュエル監督の『皆殺しの天使』のオマージュなんだとか)。

部屋から出たいのに、何故か出られない。そんな滑稽さが、現状からどうにか抜け出せないかと必死に足掻いているようで、でも実は足掻けてすらいない、そんなモート自身の現状や不満を表現しているようで面白かったです。

 何より、モートの人柄が良いからこそ、描かれる出来事や夢の光景を楽しんで眺めていられる気もします。先述の滑稽さも、彼自身のシルエットや表情といった柔らかな雰囲気あってこそ面白い。




 さて、じゃあ一方で不健全な目線とは何かを考えてみると、もはや邪推でしかなくなってきそう……。

モートがサン・セバスチャンでの出来事を想い出のように語るという構成のため、全編に亘って各所に彼自身のモノローグが流れてきます。主人公のモノローグが多いのはウディ・アレン監督作では決して珍しいことではありませんが、モートの人物像、見た目や性格などなど、まるで監督自身の代弁をしているようにも思えてしまいます。そうやって訝って観てしまうと、映画の世界から途端に現実に引き戻されそうになる。まるでモートが夢から醒めるかのように。

白状すると、そんな邪な雑念が度々頭を過り、今回に関してはあまり集中して鑑賞できませんでした……反省。



 けど、やはり着地は見事。サン・セバスチャンの素敵な街並みが漂わせる映画のような世界観が、この物語に何かを期待させ続ける。映画を観ながら述べるようなことでもないのですが、「まるで映画みたいなことが起こりそう」とも思わせてくれる。

でも、人生は何でもかんでも映画のようにはいかない、映画のようなことは起こらないと、改めて教えてくれる。


 そうか、だからまた何度も映画館に行きたくなってしまうのかな……なんて、上手くまとめられなかったので、本項はこんな感じで綺麗事で締め括ることにしました。


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