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映画『シェイプ・オブ・ウォーター』感想

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(オリジナル版はR-18指定)


過去の感想文を投稿する記事【78】

 うーん……。微妙なところですが、5年前ってなるともう「過去の感想文」って扱いにした方が良いんじゃないかな、と。

 本日投稿するのは、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の感想文です。なんでも今日、8月1日は「水の日」なんだとか。だからタイトルに「水(ウォーター)」が入っている本作を……ってのも短絡的な気もしますが、いつも何を投稿するか迷っちゃっているので、こういう選び方もご容赦ください。

 ちなみに、「水の日」は日本の記念日。「世界水の日」は3月22日なんだとか。



ありのままを愛する


 よく言われているような「映画史に残る傑作オープニングシーン」なんてものには数えられないかもしれないけれど、僕は本作のオープニングがとても大好きなんです。それは昔話の語りを想起させるような冒頭のナレーションから始まり、イライザ(サリー・ホーキンス)の仕事場である航空宇宙研究センターが映るまでの数分のシーン。

 主人公イライザの一日の始まり——朝起きて、鍋を火にかけボイルドエッグを用意している間にお風呂に入り、着替えて仕事場へ向かうまで――の一連の流れが、それはもうめちゃめちゃ個人的な見解でしかないのですが、冒頭のナレーションの影響も相俟ってなのか、「お姫様の一日はこうして始まるのです」みたいな雰囲気が感じられてきて、素敵に思えるんです。そこから仕事場へ向かうバスを、一歩下がって追うような動きをするカメラの動きがあるんですが、これまた個人的に、異世界モノのオープニング等に多用されがちな印象があり、そんなカメラワークと前述のナレーションとの相乗効果もあり、“おとぎ話の世界に迷い込んだ” かのような錯覚を僕に起こさせてくれるんです。

 その他にも、発話障がいのイライザと『マイ・フェア・レディ』とを掛けたような、隣人のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)の部屋にデカデカと置いてあるオードリー・ヘプバーンの絵など、ユニークな小道具たちもまた面白い。




僕はこの映画を観て初めて “ティール” という色の存在を知りました。本作はそのほとんどが、この色に支配されている。この色についての説明を聞くことになるストリックランド(マイケル・シャノン)が購入する高級車、研究センターの壁の色、そしてあの生き物の色などなど……。青とも緑とも判然とせず、観る者それぞれに違って見え得るこの色は、まさに物語を象徴する色。物語のある時点を境目にイライザのカチューシャ(?)の色がティールに変わるというのも、この色の存在や意味を浮彫りにさせてくれていたと思います。


 「私は○○、“彼” も同じ」
 「私は何?」
 「ありのままの私を見てくれる」


 イライザがジャイルズに向かって必死に訴える想いの中にもそれが詰まっているように思います……。「青だ」「緑だ」と、形骸化された枠組みを用いて区別(差別)するのは簡単。帰属意識や一体感だって勿論美しい、素敵なことの一つでしょう。けれど、それだけではないのではないかという訴え。発話障害のイライザが、ゲイのジャイルズに話しているという構図にも、含蓄するところは大きいはず。



 彼らはずっと孤独だった。現代でさえ未だに、世界中で色濃く残っているというのだから、物語内での時代設定に照らし合わせれば、彼らが感じていた辛さは、より過酷でシビアだったことでしょう。だからこそ、この『シェイプ・オブ・ウォーター』というおとぎ話の中ではせめて違っていて欲しいと思う。前述のナレーション、もとい、ジャイルズのモノローグがそう思わせてくれる。本作のキャッチコピーの中で「愛おしい」という文言が用いられたのはここにあるんじゃないかな。この2人にはどうか幸せになって欲しいと願わずにはいられないから。


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