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映画『天才たちの頭の中 ~世界を面白くする107のヒント~』感想

予告編
 ↓

R-15+指定


 明日、10月14日(土)よりアマプラにて『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』が配信開始予定なんだとか。

 ってなことで、ボウイ映画ってわけでもないのですが、彼が出演している作品の感想文を投稿しようかと。


よければどうぞー。


凡人


 長年広告業界に勤めていたハーマン・ヴァスケ監督が「クリエイティブとは何なのか」という問いを突き詰めるため、およそ30年かけて世界中の様々な人物1000人以上に「なぜあなたはクリエイティブなのですか?」というインタビューを続けてきた。その中から厳選した107人が出演するドキュメンタリー映画です。

 いや、映画というか、もはやインタビュー 集。ただただインタビューに応える映像が続くだけなので、人によっては退屈に感じるかもしれないし、或いは “僕のような” 人間には面白くて仕方がないかもしれません(この意味は後述します)。


 まず、面子よ。そうそうたる顔ぶれに恐れ戦く。ホーキング博士、ネルソン・マンデラ、クエンティン・タランティーノ、デヴィッド・ボウイ……その他にもたくさん。エンタメ、文学、音楽、ファッション、政治、アート等々、世界中のビッグネームがジャンル問わずひしめき合っています。現代人類のアベンジャーズ状態、いやそれ以上かも。今はもうこの世に居ない人のインタビューもあるから、出演者のラインナップを読み返すだけでも楽しい。

 そして何より、スターや大御所への忖度を孕まない異質な、なのにドストレートな質問——「Why are you creative?」——だからこそ面白い。

 全員が全員、当たり前のように振る舞うもんだから序盤は気付かなかったのですが、一番の衝撃は「なぜあなたはクリエイティブなのか」という問いに対し、困惑したり驚いたりはするものの、決して否定しないこと。クリエイティブ(創造的。広告業界においては、広告として掲載するために制作された広告素材などを指す語。)という言葉の認識が違うだけなのかもしれませんけど、「いやいや……」「それほどでも……」といった謙遜が無い。この入りからして凡人との違いを痛感させられる。まじでかっこいい。



 ここで、先述の “僕のような” の意味に帰ってくるのですが、凡人であるからこそ本作をより一層魅力的に感じられたんです。彼らは質問に対して主観的に、時には客観的に「自身が何故クリエイティブなのか」を話したり、「クリエイティビティとは何か」というそもそも論を展開したり、中には「勃起との関連」について語っていたり笑。

 確かに実際に刺激的なんですけど、「刺激的に感じる」ということは彼らが口にする言葉が自分自身の内側には存在しないということでもある。そしてそれら刺激的な言葉の一端すらも聞き逃すまいとするのも同様の証明になり得る。刺激というある種の快楽を欲してしまう自分は、間違いなくただの凡人。なぜなら、(クリエイティブが何かは判然としないままですけれど)もしクリエイティブな人間なら、その刺激を自分で創造するに違いないからだと思うんです。


 しかし、これを観た後なら変われるかもしれない。そういう人たちにとって、人生を劇的に変え得るヒントになるかもしれないのが本作。映画を観ているというより、「こんな凄い人たちの話を聞けるんだ」という、“会いに行く” ぐらいの感覚で劇場に行くのがベターかもしれませんね。


 今思えばハーマン・ヴァスケ監督もよっぽどクリエイティブな人だと思います。逆に、この邦題を付けた者——『Why Are We Creative?』という原題から『天才』というワードを捻り出した者——、或いはそんな邦題に惹かれ劇場を訪れた僕のような者こそ、天才とは程遠い凡人なんじゃないかな笑。逆にそんな人たちを捉まえるためにこの邦題にしたのであれば、僕は良いカモです笑。



 インタビューのために世界中を飛び回っている感覚を表現するためか、インタビューの合間に時折、移動風景が流れるのですが、個人的にはここの描写も気取っていてかっこいいと思えます。電車の車窓に流れる景色は、その映像の直前までの幾つかのインタビューで言葉にされていた「人生の流れ」みたいなものをイメージさせる。はたまた、果てしない一本道を車で走るシーンでは、未来や将来といった時間軸の先にある不確かな場所へ向かって前進する意義や価値を考えさせられた直前までのインタビューを想起させる。

天才たちの言葉も然ることながら、それらを際立たせる瞬間までもがかっこいい。


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