【ライブ原稿＆動画】究極のエゴ/エコ/エロは死ぬこと

【原稿】

こんにちはー！　「■■■■■■■■■■」へようこそ！
本日のトリップアドバイザーを担当する、渋澤怜でーす！
みんな、ワープゾーンって聞いたことあるかな？　……多分あんまり聞いたことがないよね。
ワープゾーンは、宇宙の果てにあるといわれる、ブラックホールとホワイトホールの合体したもので、そこに飛び込めば、なんとパラレルワールドにワープできる、といわれているんだ。

みんな、ブラックホールは知ってるかな？　聞いたことあるよね。
地球が一円玉の大きさに圧縮されてしまうほどの強い強い重力をもった空間で、近づいたものは全てブラックホールの中心に吸い寄せられてしまうんだ。でもね、ブラックホールに吸い寄せられたものはどうなると思う？　そのままぺしゃんこになっておしまい？　ううん、ブラックホールの中心は実は指輪みたいなわっかになっていて、そこをうまくくぐり抜けられたら、……なんと真逆の世界に反転してホワイトホールという空間につながるんだ。そこは、すべてのものをはじき出す怖ろしい斥力をもった空間で、そこに来たらなんと、別な宇宙に飛ばされてしまうんだ。
これが、パラレルワールド、これが、ワープゾーン。

今日は皆さんを、宇宙の最果てのワープゾーンまで案内するよ！
こちらは頼れるエンジニア兼イケてるディスクジョッキーの×××××です！
それじゃ、×××××、準備はいいかな、ミュージック、スタート！

なんで内臓はきれいなきれいなきれいなピンク色をしているの？　誰も見ないのに。
なんで私きれいにきれいにきれいに化粧してるの？　誰も見ないのに。

究極のエコは死ぬこと。

いつか美しい私を見染めて見染めてもらうことを待ち続けていたらしわしわのおばあさんになって、でも内臓はきれいなピンク色のままだから、おばあさんは腹かっぴらいてくるっと裏返って内臓おっぴろげて、人生のB面を始めました。 

「なんで気持ち悪いことがあるかい。処女の性器と一緒さ、誰にも見られても使われてもいない、正真正銘のピンク色さ。」

 生まれて初めて空気に触れたおばあさんの内臓は今まで感じたことのない酸素をあっという間にとりこんで一気に腐る　よりも早く、あっという間に野犬にたかられてバラバラになって終わりました。

 はい、3分後の姿がこちらでーす。ああ、おばあさんの変わり果てた姿！　おばあさんの脱法レバーだ！

 わざわざ、死んで灰にして埋めて土に返して植物にしてそれを食べて生命のリレーとかいうより、新鮮な臓器を直接野犬におとどけ、ピザーラお届けしたおばあさんはこれぞ究極のエコ、市長からエコ大賞の感謝状が送られましたが、こんなものに紙を使うのはもったいない、賞と言うのは概念だから概念だけでいいのじゃ　 

詩だって概念だ　詩は文学だ　文学は死んだ　よって詩は死んだ 

 究極のエコは死ぬこと。究極のエゴは死ぬこと。 

ワープゾーンに行きたい、と、おっしゃるわけですね。
ワープゾーンへの行き方は、いくつかあるんですよ。外側から行くやり方と、内側から行くやり方。外側から行く場合はスペースシャトルが必要ですので一般の方には不向きですね。内側から行く場合は、精神の鍛練だけで済みますので、ご家庭でも経済的に実践できますね。

今、息をしていますか？　……していますね。意識してなくてもうまくできているのが息、していると思うとうまくできなくなるのが息。自分の息を完全にコントロールすることは、自分の息を完全に忘れることです。
呼吸を完全にコントロールする、すなわち忘れることが出来ればそれは東洋では瞑想、我々はワープゾーンと呼びます。

人間はなんで息をするんですか？　そうですね、人間は息をすることで生きることができます。息をすることで、あなたはあなたでいられます。
しかし人間は、息をすることで、少しずつ中と外のものを出し入れしている　つまり息をすることで少しずつ、あなたはあなたではなくなっていきます
今のあなたの中に、二週間前のあなたの物質的共通点は全くない。
今のあなたと二週間前のあなたをつなぐのは情報だけだ。

だから、ね、仮に、2週間分の息をいっぺんにしてしまえば、あなたはこの宇宙空間のここ以外の場所に一瞬で拡散して、ここに残るのはあなた以外の存在になる。すなわち、あなたはワープできるんです、それが、ワープゾーンです。

（ここで渋澤怜、突如×××××の首を絞める）
（ここで×××××は、2週間分激しく咳き込む）

究極のエゴは死ぬこと。

むかしむかし、あるところに、死にたがりの男の子がいました。
男の子は自分の死因を考えるのが大好きで、「熱狂的なファンに刺されて死ぬっていうのはどうかな？『心不全のため急逝』って一番カッコよくない？　本当の死因を隠してるっぽいでしょ。本当は自殺かもしれないし事故死かもしれないし、他殺かもしれない」「おじさんになるまで生きてるのはやだな、デヴィッド・ボウイみたいな格好良いおじさんなら別だけど」なんてことを言ってばかりの、自分大好きで鼻もちならない、スカしたカッコつけ野郎でした。

男の子は先のことを考えるのがあまり得意ではありませんでした。これから暑くなるかも寒くなるかもよく分かっておらず、総じていつも薄着でした。「まあいいや、どうせ再来年当たり死ぬっしょ」と言って服を買わない、ろくに食べない、お金も貯めない、そしてなけなしの小銭はひととき胃を温めるだけの酒の小瓶に費やす、そうやってまた、寒い寒い冬を迎えました。

寒さと栄養不足と寝不足で男の子の体温は常に低く、いつもぼんやりとしている意識の中で男の子は、自分にはこの星の重力は合っていない、と思い始めました。僕は本当は別の星で生きるために生まれてきたんだ、僕の身体は地球に合ってないんだ、僕の本当のお母さんは別の星からやって来た宇宙人で、でも僕を生んだ後すぐにいなくなってしまって、だからお父さんが新しく見つけた地球人のお母さんが僕を育てたけど、でも、だから、あのニセモノのお母さんは僕のことを愛していないんだ、この星のすべてはニセモノなんだ。

時々、誰もいないのに誰かの声が聞こえる気がする。（えー全然そんなことないですよー）
時々、自分は誰かに操られていると感じる。（本当、自分なんてそんな、全然です）
時々、みんなが自分の悪口を言ったり、嫌がらせをすると感じる。（いえいえまさか、とんでもないですー）
時々、誰かから監視されたり、盗聴されたり、ねらわれていると感じることがある。（逆にそこまでされたら申し訳ないっすよほんと―）
時々、消えてなくなりたい気分になる。（あー、それはちょっとあるかもっすねー）

そう、あの、自分大好きな鼻もちならないスカしたカッコつけ野郎の男の子は、本当は、自分のことが大嫌いなのでした。

ここでお便りが来ています。

『「食べ物を残してはいけません」「命を粗末にしてはいけません」という物言いに抵抗があります。
「私の胃袋に入れれば命を大事にしたことになって、ゴミ箱に捨てるのは粗末にすることだ」と言う人は、どれだけ自分のことを過大評価しているんだろうと思います。私の胃袋もゴミ箱も、食べ物からしたら同じ、ただの行き先です。私が美味しく頂けば大事にしてることになるなら、あまりにエゴじゃないですか？』

そう、殺された豚にとっては、わたしたちは大きめのゴミ箱。

受け止めてください！　僕の気持ちを。
いいですよ、大きめのゴミ箱としてなら。

心を込めて作ったんで、食べてください！
いいですよ、大きめのゴミ箱としてなら。

心を込めて作ったものに大して意味は無い。
言葉を尽くして言ったことに大抵意味は無い。

こころ　こころ　ここどうぞ　
よその　こども　ホロコースト
よその　こども　おろそうよ

究極のエコは死ぬこと。
給食のセロ　リは残した。

こころ　こころ　ここんとここそこそコソ泥
こころ　こころ　そろそろ　本当のことを

ごめんね、お母さんは、あなたの本当のお母さんじゃないの。
ごめんね、あなたのお父さんはテレビの中のあの人、じゃなくて、ただの普通の人で、だからあなたには全然才能が無いの。

才能無いなら死にたい、と、21世紀生まれのアイドルは言った。

究極のエロは死ぬこと。

（事務所に無断で髪切るな）

才能無いなら死にたい、と言ったアイドルは言った。
だから冷凍睡眠でね、身体を氷漬けしちゃうの。それで、こんなこと一生考えないようにするの。「私の見た目が好きなだけで本当の私のことなんて好きじゃないんでしょ」って、

（事務所に無断で首切るな）

こうして、地球では「死んだ」ということにしたアイドルは50年と15分の冷凍睡眠を経て別の星に生まれ直したのち、その星のイヴに相当する役目を担当し、念願のセンターを獲得したのでした。

（事務所に無断で恋に落ちるな）

死にたがりの男の子の将来の夢は、自分の葬式に自分が出席することです。そうして、何人が泣くか、知りたいのです。何人の女の子が「本当はあなたのことがちょっと好きだった」と言って泣いてくれるか、知りたいのです。

究極のエロは死ぬこと。

（私に無断で死ぬな）

多くの人間が「君は周りの人がどんなに悲しむか考えろ」と言って彼を叱るが、他人の悲しみに、毛ほどの価値しか見出してない人間にそんなことをわからせるのは無理だ。猫に小判の価値をわからせるくらいの無理ゲーだ。
自己愛のために死ぬ奴もエゴだが、「俺が困るから死ぬな」なんて言う奴もエゴだ。

本当に、本当に死んだら悲しい相手って、２，３人しかいなくない？ 

俺は大事な相手が２，３人以上いる、なんていう愛に溢れた人間はどうかそのまともさを保ったまま、死にたがりから離れる勇気を。死にたがりから離れる勇気を。

そして遠くから眺めてろ。

すぐ死にそうな奴がSOSののろしの代わりにあげる花火は大体めちゃめちゃきれいで、人はそれを芸術と呼ぶ。

【動画】https://www.youtube.com/watch?v=4GVSgXBb828&t=14s

https://www.youtube.com/watch?v=hqFZLWR2spY&t=6s