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長編小説、超短編小説、実験小説、詩、、朗読ライヴの元ネタ、文体の研究などなど。多すぎてどれ読んでいいかわからない時は「【おすすめ】創作編」というマガジンをどうぞ。
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2019年1月の記事一覧

【即興実験小説】僕の朴訥な独特な毒、道徳を冒涜、孤独に購読。(15分・705字)

【即興実験小説】僕の朴訥な独特な毒、道徳を冒涜、孤独に購読。(15分・705字)

お題:悲観的な兄弟  必須要素: 悲劇 制限時間:15分 
・・・・・・・・・

強盗殺人のニュースが流れた。被害者は強盗に刃物で一撃で殺されており、おそらく犯人は相当のやり手、被害者は何が起こったか把握する暇もなく死んだだろう、とテレビのコメンテーターが言っていた。
「よかったよね、何も考える暇がなかったなんて」
楽観的な弟はいった。
「そうかな? 遺言も残せなかったし、だれに殺されたのか、どう

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【即興実験小説】いわゆる朝飯を食べないと言うと「不健康だね!」と言われてしまう問題(15分・404字)

【即興実験小説】いわゆる朝飯を食べないと言うと「不健康だね!」と言われてしまう問題(15分・404字)

いわゆる朝飯を食わないかわりに、完全無欠コーヒーを飲む。

いわゆる昼飯を食わないかわりに、米抜きの、肉と野菜を大量に摂る。そして筋トレ後はプロテインを飲む。

いわゆる晩飯は、食う。

いわゆるスーパーに行かずに、あらゆる買い物をamazonパントリーで済ます。

いわゆるジムに行かずに、自重筋トレを自宅でこなす。

いわゆる本屋に行かず、kindleアンリミテッドに加入する。いわゆる本は読まず

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【即興実験小説】算数のたかし・あきら(15分・496字)

【即興実験小説】算数のたかし・あきら(15分・496字)

お題:楽しい解散  必須要素:算数のたかし  制限時間:15分  文字数:496字

算数のたかしとあきらは、もう辟易していた。
いつも、欲しくもないりんごとみかんを買ったり、行きたくもない公園や図書館に一定の速度で行くのはこりごりだった。
「6年続いたが、もう俺たちの活動に意味はない。解散しよう」
「賛成。でもファンが悲しまないよう、楽しい解散をしたい」
「いいね」
ファン、というのは全国の何万

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【即興実験小説】トイレット・パラレルワールド(15分・467字)

【即興実験小説】トイレット・パラレルワールド(15分・467字)

トイレのマークは赤がガールズ、黒がボーイズ。
でも「赤が女、黒が男という決めつけは変」という世の流れで、どちらも同じ色になる。さらに「スカートが赤、ズボンが男という決めつけは変」という世の流れで、どちらもズボンになる。男女の差は、肩幅と腰と足つきの差で表現される。女はY、男はXのような形になる。
これは、色や服以外の表現で精査を表現する点が新しく、二号サインと呼ばれた。
しかし世の流れは進み、「男

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【即興実験小説】三位一体(15分・586字)

【即興実験小説】三位一体(15分・586字)

クリスマス、AちゃんはB君にずっと片思いしてて一緒に過ごしたくて、でもB君はCちゃんのことがひそかにずっと好きだからCちゃんとすごしたくて、でもCちゃんは全然恋なんていうものに興味はなく大親友のAちゃんと過ごしたいのだった。
CちゃんがAちゃんにクリスマス一緒に過ごそう、と言ったら
「B君に告白して、クリスマスを一緒に過ごしたいの」と断られてしまった、でもCちゃんは
「じゃあ三人で一緒に過ごそうよ

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【即興実験小説】高くつく(15分・721字)

【即興実験小説】高くつく(15分・721字)

その画家は、高価なものの上にしか描けないという性質を持っていた。
幼少期にお札の上に描いたのが、初めて描いた絵だった。子供に与えられる落書き帳や単なる紙には全く興味を示さなかった彼が突如そこに絵を描いた、しかも神童と呼ばれてもよいような緻密な絵を。
両親は目を見張ったが、しかし困惑した。
彼にとって絵を描くことは、常に褒められるのと同時に叱られることだった。
そして1000円より5000円、500

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【即興実験小説】バツイチ子持ちはバツが悪い(15分・484字)

【即興実験小説】バツイチ子持ちはバツが悪い(15分・484字)

不倫が嫁にばれ、手ひどいやり方で不倫相手を捨てた。
「バツイチ子持ちか……」
捨てる時初めて男はその時その事実を知った。
「バツが悪いな」
その日から男の視界に大きな「バツ」が浮かぶようになった。仕事中もパソコンの画面をふさぐように。ベッドで横で眠る妻の顔を見てもそれを否定するように。

しかし男はさして気にしなかった。もともとそういう性格だから、不倫したり、不倫相手をバッサリ切り捨てたりできるの

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【即興実験小説】コンプラ勝負だ

【即興実験小説】コンプラ勝負だ

「今日の日替わりランチは、もこもこです」
「もこもこ?」
「いえ、ロコモコ丼です」
「そぼろ丼?」
「いえ、ロコモコ」
「ポモドーロ?」
「……お客様、よくオ段の食べ物だけでそんなに踏めますね」
「腕に覚えがあるのでね」
男は腕をまくりあげ「覚」の入れ墨を見せた。
「『貢』……? ああ、『覚』」
「だいぶ見間違えるな。腕に貢のあるラッパー嫌だろ」
「ラップ業界に貢献したいのかなと。でも、まあ、いい

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