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精神科実習で会った忘れられない患者さん

先週に引き続き
日曜日の今日は
過去の思い出話をしようかと思います。


先週
精神科実習での思い出が
精神科看護師になったきっかけ
というような話を書いたのですが

少し長くなったので
メインに書こうと思ったエピソードは
次週に回そうと思ったんですよね。


精神科病院での実習をする時
いろんな方法があるのですが
私達の頃は
その病棟にいる患者さんの中から
自分自身で担当する患者さんを
選ばせてもらえたんですね。

選んだ患者さんの情報を見させていただいたり
コミュニケーションをしていきながら
患者さんの全体像を捉えて

必要な看護計画を
考えたりするんです。


ですから
話しやすそうな患者さんや
優しそうな患者さんを
看護学生は選びたいんですよね。

朝から夕方まである実習時間
全然話さない患者さんより
笑顔で話してくださる
患者さんの方が
良いと誰でも思うからです。


実習の単位を
落とさないことが
最低限にして
最大の目的なので

私もコミュニケーションしやすそうな
患者さんにしようと
思っていたんです。

ですが
その病棟に1人
気になる患者さんが
いらっしゃったんです。


統合失調症で
50代頃の男性の患者さんだったと思います

再発を繰り返し
病気になる以前より人格の水準が低下して

言葉を話すことができなくなり
コミュニケーションは
昔から勤務されている
一部のスタッフと
朝にハグをするだけ

という患者さんがいたんです。

暗いわけではなく
ただ淡々と毎日
病棟の出入り口に朝から晩までいて

消灯になったら寝る。

ご飯とトイレなどは自立。

家族も見よりもいない
何十年も退院できていない。

そういう病状でしたから

過去に1度も看護学生から
担当を申し出てもらったことが
無かったそうです。

そういう話を聞くと
変にスイッチが入っちゃって

その方に担当になっていただこうと
思い始めたんですね。

実習3日目あたりに
学生が担当をしてほしい
患者さんにご挨拶するのですが

実習2日目までは
別のコミュニケーションを
取ることに抵抗されない患者さんに
お願いしようとしていたんですが

悩んだ挙句
3日目になって
その統合失調症の患者さんに
担当をお願いしようと思っていると

実習指導者の精神科看護師さんに
話をしました。

基本的に
どの患者さんでも良い
と実習指導者からは言われていたのですが

「はっ?あの人?
 さすがに辞めた方が…
 いや、でも…うーん…

 …やってみる?」

と驚かれたのを覚えています。

その患者さんの名前をAさんとします。

その後も
他の病棟の看護師さんから


「ねぇねぇ、Aさんを担当する学生って
 あなた?」
「ちょっと大変になると思うよ?」

などと声をかけられる始末。


天邪鬼な性格なので
そう言われると

やったろうやないか!

と思っちゃうんですよね。

その時の実習指導者の方が
ものすごく頼りになる方で

何かあったら
助けてもらおう

くらいには思ってたと思いますが(笑)


しかし
いざ実習が始まると
Aさんからは挨拶をしても
無視されますし

むしろ1人の看護学生が
ついて回ってくるわけですから
少し不穏になって
叩かれたりもしました。

話すこともなければ
今のある行動を
ほとんど取りませんし

廊下で寝っ転がられたり
両手をひらひらを天にかざしてみたり

なかなか掴めないまま
時間ばかり過ぎていきました。


実習指導者に頭を下げて
主治医の先生に
その患者さんの病状を説明していただいたり

昔から勤務して
Aさんの昔を知っている看護師さんから
当時の状況を教えていただいたりしました。


すると
Aさんは昔は怒りっぽかったり
病棟の中でもリーダー的な立ち位置で
率先してレクレーションなどに
取り組まれていた時代もあったそうです。

そして
両親がご健在だった頃は
定期的に面会にも来ていたそうです。

ある日に
ある事故が起きたそうで
(詳しくは書けませんが)
それ以来面会には来れなくなったそうです。


その事実を
Aさんは知っているとは思うのですが

それでもいつか
面会に来るかもしれない


と病棟の出入り口で
家族を待つようになったそうです。


なんだか切ないですよね。


私もその後は
一緒に玄関で待ったり
Aさんが廊下で寝た時は
一緒に廊下で寝てみて
Aさんが見える世界と
近い世界を見てみようと
同じ行動をとってみました。


さすがに看護師さんに
ハグすることはできませんでしたが(笑)


最後まで
私の存在を認識しては
いませんでしたし

それ以上
Aさんのことについて
理解できることはありませんでした。


ですが
たとえ理解できなくても
相手を知ろうとすることや
同じ目線に立ってみることの
大事さは学んだように思います。



患者さんの行動には
必ず何かしらの
意味や意図があるはずだ

と当時思っていましたが

意味があることもあれば
意味がないこともある。

答えがあることも
ないこともある。

そんなことを学び
今でも心に残っています。

そして
みんな心に
大きな傷を抱えているかもしれないことを。


看護学生として
たくさん実習してきましたが
Aさんだけは
未だに忘れられません。


あ、女皇さんもです(笑)


元気にしているのかな。


そんな私が
今は実習指導者。


看護学生と接していると
当時の私を見ているようで
心から応援していますし
心配したりしています。


今、私の病棟に来ている
看護学生にとっても
何か学びになるような
時間になると良いな。


そんなことを考えながら
明日からの実習指導に備えて
私も勉強しようかな。

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