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BWD:龍の移住相談なる会-6-

 星明りが広範な畜産牧場を柔らかく照らす夜闇の中、飼料の山めいた小高い影が揺れる。いや、飼料の山ではない。龍だ。龍が伏せて牛たちが眠っている牛舎を見守っているのだ。

「移住を認める条件がまさか牛の番をして欲しいだなんてなー」
「まあ合理的じゃないか、牛の数が減ってなきゃ肉食じゃなくて草食だって証明できるわけだし」
「違う違う、俺っちが気にしてるのはこの状況で不定期に牛を盗み続けられる手段さ。推理物でいうハウダニットって奴だな」
「どのようにして、か」

 闇夜に溶け込むケサコートの狩人ボンズと闇夜においてなお目立つ白ずくめの探偵の会話を聞きながら真龍は真剣に牛舎を注視している。

「町長と牧場主の証言じゃ、牧場からのトラックなどの見覚えのない轍は毎回見つかっていない。牛の足跡すら牧場の外部へ連れ出された形跡もない。牛舎も破壊の形跡はなく牛だけが毎回一頭魔法でもかけられたかの様に消え去ってる」
「幻想の存在が当たり前に闊歩している今の時代じゃ何が起きてもおかしくはないが……宙にでも浮かされて連れさられたかね」
「その可能性が高いな、そうなるとどこの誰がやったかって話になる」
「転売の可能性は?」
「論理的には可能性としては低い、ぜ。転売目的なら農作物の方が手間がかからない。牛は生き物だし、バラシて売るにしても相応の買い手や流通ルートが必要だ。盗品転売の対象にしちゃ余りにも無駄が多い。冷凍保存された子種の方がまだ手間も少なく高く売れるぜ」
「フムン……」

 常識の範疇では誰が、夜中に、どのようにして連れ去っているか推理するのが難しい案件だ。牧場主の語るところによると自分が見張った所でアクマとかに遭遇したら手も足も出ないので、バニッシャーへ依頼しようか検討していた所にちょうど一行がやってきたので渡りに船、という事だった。

「ね、ね、ぼくでお役に立てるかな?」
「そいつはもちろん大丈夫。相手が人間だろうとアクマだろうとパンピーのおっちゃんじゃ手に余るからなー今回のケースは。一方で牛さらってどうこうする小悪党だからそんなヤバイ戦力でもってきているとは限らねぇし、旦那の存在がピタリと良い感じに当てはまってるじゃん?」
「こういうブッダのお導きが俺にもあるといいんだがなぁ、日頃の行いの差か……まて、二人とも。何か来ている」

 カリューの制止にはたと会話を止める二人。離島の夜空は相変わらず満天の星々が瞬くばかりだが、注視する一行の目には星明りを遮る何かが宙を漂っている事が視認出来た。明らかに何かが居る。

 盗人を待ち受けるには真龍の巨体と蒼穹の色合いは余りにも悪目立ちする存在だったが、急襲している「何か」はその存在を意に介していないかの如く牛舎の上空に停滞すると底面部より懐中電灯のあかりを大きく広げたような光を放射した。光が放射されれば牛舎の出入り口からふわふわと牛が一頭浮遊して連れらされていく。もがく牛。唖然とする一行。

『キャトルミューティレーションなんて古すぎだろ!!!』

 思わず大声で突っ込んでしまったが、焦らず龍の背に飛び移る二人。

「きゃと……なに?」
「わりい旦那、話はあとだ!どう見てもアレが犯人だから追っかけてくれ!」
「りょうかい!」

 牛を浮遊させたままふわりふわりと結構なスピードで島内上空から離れていく「何か」、いやレトロなアダムスキー型UFOを美しいドラゴンが猛追する事態が始まってしまった。

【BWD:龍の移住相談なる会-6-:終わり:7へ続く

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