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UE:オーバー・ルーズ-4-

 紫紺の重装甲ベアーめいた敵機は黒武者に向け、手にした大口径狙撃銃を照準しながら手足の装甲をオープン、内部に格納された円筒状のマイクロミサイルを掃射。フルメタルドーンの前方視界を圧倒的物量の火線が覆う。

 しかして黒武者はクラウチングスタートめいて身をかがめるとロケットの如く前に踏み込む。高い誘導精度があだとなり黒武者の背後で同士討ち、爆裂するマイクロミサイル群。狙撃銃の銃撃は三度放たれ三度大太刀によって両断、黒武者の偏向ベクトル場を貫けずに弾かれる。

「……ッ!」

 舌打ちするアイネが反応するよりもなお早く黒武者の握る大太刀は横薙ぎに斬撃を放ち、狙撃銃を割り箸でも割るかの如く両断する。続いて大上段から放たれる致命の一閃。

「まだ、まだよっ!」

 太刀が敵機頭部に斬り込んだタイミングに左腕に仕込まれていたベアクローナイフによるインタラプトが成功、ベアクローに噛み取られた一瞬の隙をついてアイネは乗機右腕に搭載した杭打機でもって黒武者へと反撃する。

 硬質の金属が発泡スチロールの様に軽々と砕け、黒武者の左腕は肩の部分で杭打機によって粉砕されたがハガネは止まらない。杭打機は左腕を犠牲にすると判断した彼はインタラプトされた大太刀を即座に手放し、腰部に差したサブの脇差でもって紫紺の獣の胴を居合薙ぐ!だが浅い!しかして迷わず斬り返し敵機左腕を肩口から斬り飛ばす!ベアクローと絡み合ったままに宙に浮く大太刀!

「どうだ!まだやるか!?」
「冗談!私もこの子もまだ動くわ!」
「ならば動かなくなるまで斬り刻む!」

 再装填が済み二度目の杭打を放たんとする紫紺の獣に迷わず脇差をたたき込んでつっかえ棒の様に杭打機の機構を破壊すると、ハガネは愛機を目の前の敵機を駆けあがるように跳躍させ降り来た大太刀を健在な右腕で確保。

 上半身の搭載武装をことごとく破壊され、両断された頭部で宙を見上げる紫紺の装甲獣に対し黒武者は宙でくるりと回転すると渾身の一撃でもって紫紺の獣を今度こそあやまたず切り裂き、両断した。

 機体ダメージが限界を超え、砂の城が崩れ落ちゆくように光の粒子となって解けゆく紫紺の獣。黒武者・フルメタルドーンのコクピットのVRモニタに映し出される「YOU WIN」の文字。

「っはー……とんだ強敵だったぜ」

ーーーーー

 二機の巨大人型兵器の遠慮ない試合によって廃墟ビル群はその大多数が崩落していた。その中で呆然とたたずむアイネを、迎えに行ってやるハガネとカナメ。

「負けた……私、貴方に負けた、のね」
「おうとも。で、感想は?」

 ハガネよりかけられた言葉に、アイネは我に返るとつい先ほどまで呆然としていたとは思えないほどに目を輝かせてハガネの眼前に踏み込んできた。

「凄いわ、あんなに楽しかったの初めて……あれが上位ランカーの世界なのね?」
「俺は奥ゆかしい方だけどな」
「謙遜するの?」
「サキモリ辺りとぶつかれば俺の言ってることがわかるさ」
「『殲滅者』ね、貴方と公式試合する前にぶつかることになりそう。楽しみ」

 どうやら試合前の醒めた様子は雑魚相手に飽き飽きしていた為らしい。いまやアイネは恋する乙女にも似た表情で……その実さらなる強敵との死闘を夢見ているのだ。想像以上のバトルジャンキーっぷりに額に手を当て天を仰ぐハガネ。そしてハガネの後ろでムッとした仏頂面でタブレットをいじるカナメ。

「決めたわ、私また貴方と戦う。待っててくれる?」
「いつでも来い、何度でもぶっ飛ばしてやる」
「約束ね」

 端末を操作し、本体部分だけ辛うじて修復された愛機に向かうアイネに、惰性で手を振り見送ってやるハガネ。また一人宿敵が増えてしまった事に嬉しいような複雑な心地なハガネであった。なお、やはり効果がなかったどころか、余計に煽ってしまった事については後々、事前契約内容を盾にクライアントのオッサンをなだめたのであった。

【オーバー・ルーズ-4-:終わり】

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