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UE:オーバー・ルーズ-3-

 対峙した瞬間に紫紺装甲の巨人は自然落下、黒武者の視界から消え去った。マシンガンとショットガンという二挺の組み合わせは機動兵器戦における、中ー近距離戦において高い制圧力を持つ組み合わせだが、余りにも密着した近接戦闘距離ではその有効度は若干落ちる。優位な距離を保つため廃墟群地上部に降りたのだ。

「カナメ、敵背部のデッドウェイトは?」
「現在解析してる、敵機体名称『ラフィング・ジェミナス』。背部には武装と考えられる物を格納してるけど、機体構造からはとてもウェポンコンテナ用途だけとは考えにくいかな、本体に対して余りにも質量、重量共に大きすぎるよ。注意して」
「びっくり箱って事だな」

 コミュニケーションの合間にも黒武者もまた動きを止める事はなかった。自身もまた滞空していたビル屋上近空より身を投げる様に落下、より低いビル屋上へとネコめいて着地してはさらにバックフリップ跳躍。ニンジャにも劣らぬ機動力でもって飛び回る黒武者の軌跡を銃撃が追走する。銃弾が多数着弾しもろくも崩れていく廃墟ビル。

 紫紺の風の様に高速機動でもって廃墟群の間隙を飛び回る紫紺のプリマはけして足を止める事無く黒武者より優位な距離を維持し続けながら銃撃を続ける。その卓越した戦闘技術に舌を巻くハガネ、なるほどこれではアイネと同クラスの騎手など、1分立たないうちにボロクズと化すだろう。

 広大なる廃墟の墓場原を黒い弾丸が跳弾するが如く恐るべき射撃精度の銃撃を回避しながらも、ハガネの常人を遥かに凌駕する眼は紫紺のプリマの背からあの邪魔者にしか考えられないバックパックが撤去されていることを視認していた。次の瞬間。

「ちぃっ!」

 黒武者の背後から着弾の衝撃が走る。機体を駆動させるためのベクトル偏向場がダメージを緩和した物の、バランスを崩し刀を支えに転倒するのを避ける。そこに畳みかけられる散弾と弾丸の雨。だが黒武者は大地に突き立てた刀を台にし逆立ちするように跳躍、ジャンプの慣性で刀を引き抜きながら被弾を最小限にすると廃ビルの屋上へと着地、そして再び跳躍。

「まったくの別方向から撃ってきた、そうだなカナメ?」
「うん、背負っていたバックパックは援護用のドローン……待って、それだけにしてはやっぱり大きすぎるし、内部構造に機体フレームまで含まれてる、まるで二人羽織りみたい」
「ああ、まだ伏せ札があるな」

 全く異なる方向からの挟み撃ちによる射撃を巧みに回避しながら、黒武者はプリマをさらに上回る踏み込み速度で黒い閃光めいて肉薄、太刀を横薙ぎに斬り抜ける。プリマが握る銃ごとその腕を斬り飛ばすとそのまま駆け抜け、横っ飛びに移動しながら大口径銃による援護射撃を回避しつつ紫紺のプリマへと向き直る。

「本当に凄いんだ、貴方。いいえ、上位ランカーが、かしら」
「俺なんてランクが高いだけであの化物共の中じゃ大したことないほうだぞ、アイネ」
「ふうん、なら貴方に勝てないと話にならないって事ね」

 黒武者から遥か距離を取って屹立する紫紺のプリマの背後にはあの正体不明だったバックパック、否、今や大口径のライフルを携えた重厚なる装甲をまとった狙撃兵めいた形状の無人機が控えていた。無人機のサイズは本体のそれより二回りほども大きい。

「なら、私とこの子の全力、貴方に見せてあげるわ……!」
「そうだ、来い!お前の全力を俺に見せてみろ!!!」

 黒武者、フルメタルドーンの眼前でプリマと狙撃兵は子供の積み木遊びめいて機体構造を組み替え始めた。ガチャガチャと玩具をいじるような気安さで出来上がったソレは本体の胴部に狙撃兵の手足を組みつけて余剰パーツを装甲として増設した元のシルエットからは逸脱している第三の形態であった。

【オーバー・ルーズ-3-:終わり:-4-へと続く

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