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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十六話 #DDDVM

「しかし、なんだってこっちに肩入れするんだい?さっきのタイミングでアタシを殺傷しても、アンタ達はお役目を果たしただけになるだろうに」
「我々の務めは真相の究明であって、犯人の捕縛と処断ではありませんので。ついでに、ご遺族の希望でもあります」
「そっちの二世さんかい。なるほど、アンタの名乗りも詐欺ってワケじゃないんだねぇ」
「どうしてそのように?」
「アンタからはマナを感じられない。草木、動物、魔物に悪魔、何にだってマナは、有る。ゴーレムにしたって、魔術で動かすならマナ無しには動かない。じゃあそのルールの例外になるってのは……神話のご遺物様くらいだろうさ」

彼女の分析に、二世殿は感心したように頷いた。

「ご慧眼、感心の至りですとも。まあ私の出自については名乗った通りとご理解いただければ」
「で、その迷宮公のご遺族様が何だって、殺した側に肩入れするのかね」
「なぁに、せっかく父を倒した相手が重犯罪者扱いとなると私達の格も下げられてしまいますので。せっかくなんですから、吟遊詩人には英雄として語っていただきたいと、それが父の意向でもあります」
「ふーん……ま、アタシとしちゃその提案に乗るしか無いんだがね」
「ご理解いただけてなによりです」
「なんだか妙な展開になっちまったけど、勝算はあるのかい?」
「精一杯、弁護させていただきますとも。我が一族は女王陛下とも懇意ですので」
「その言い回しは背筋が凍るねぇ」

エリシラ殿は目をつむって二三度机を指で叩いた後に、ぱっと開眼する。

「よし、のった。もとより差し出すつもりの命だ、アンタの賭けに乗せてやるよレオート公」
「ええ、よしなにお任せください」
「アンタも異論はないね、サーン」
「俺はもともと……ひとりで行くつもりだったし」

暗に自分一人で背負うつもりだったと吐露してしまったサーン君は、そのままエリシラ殿に頭を小脇に抱えられて締め上げられてしまった。一番近い表現は、親の心子知らずだろうか。

「もう一人前だからひとりで責任取るって!?十年、いやこの体たらくじゃまだ百年ははやいね!もっとがんばんな!」
「いだだだだだだっ!痛い、痛いよエリシラ先生!」
「エリシラ殿、どうかその辺りで」

私が声をかけると、べしゃり、とサーン君が床に落下した。エリシラ殿の腕を回して身体をほぐす姿は、少し前まで難病にて死の淵にあったとは思えない壮健さだ。

「エリシラさん、一つお聞きしてよいですか?」
「なんだいワトリアちゃん。私事以外なら、ま、答えてあげるよ」
「『水晶薔薇病』が寛解した後の体調はいかがですか?非常にまれな症例なので、詳しくお聞きできればと」
「ああ、アンタ勉強熱心だね。ウチのバカ弟子にも見習ってほしいくらいだ。そうさねぇ……端的に言って、前よりずっと調子は良い。アタシの術式を見たろ?以前はアレの半分くらいが関の山だったんだ、アタシのマナじゃね」
「寛解後はむしろ好調、と」
「ああ、自覚症状は全くなし、再発の様子もないね」

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十六話:終わり|第四十 七話へと続く第一話リンクマガジンリンク

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