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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十一話 #DDDVM

「ふんふん、物見の術がマニピュレーターとしても使えることにはどうやって気づいたんだい?」
「マニピュレーター?ってなんですか?」
「ああ失敬、離れた所に手を届かせられる道具だと思ってもらえれば」
「難しい言葉使う人だ……ほら、新しいこと覚えたらそれで何が出来るか試したくなりません?師匠から物見術を教わってから、あちこち遠方を覗いていたんですけど……ある日、初めて見る果物が鈴なりになってるのを見つけて、それでちょっと色々試してみたんですよね。どうしても食べてみたくて」

サーン少年は手持ち無沙汰らしき腕を、焼き物を創る様にぐるぐる回して身振り手振り、当時の創意工夫を伝えようとしていた。

「目的の対象に対して、管を分割させた上で、眼を担当する管とは別に……指先を担当させる管を複数作って、そっちの表面をマナの密度を高めれば自分の手みたいに物をもたせられる様にしました。目的の果物もひとつまみ位のサイズだったのであっさり水管の中を通らせて手元まで。うん、まあ、実際食べてみたら腹壊して……師匠と母ちゃんからはすっごい怒られたんだけど」

事の顛末を聞いた二世殿は、それはもう大笑い。腰に手をあて背をそらすほどの爆笑っぷりに一同しばし沈黙するも、やがて本人が空気を読んで平常時へと立ち戻った。

「うん、いい。最高だ。やっぱりサーン君の活躍は犯罪録ではなく、英雄譚として語られるべきだねぇ」
「なんですかそれ、両極端過ぎますよ」
「要するに、君の立場は非常に危ういわけだが、自分は極力良い方向に倒したいのだね。そうでないとついでに私の格まで下げられてしまうしー」
「アンタのいってる事、全然わっかんないよ」
「まあそうだね~、改めて自己紹介させてくださいな」

レオート二世殿はサーン少年を向き合い、大仰にお辞儀をしては本人は愛嬌のつもりであろう、ウインク……めいた所作を見せた。

「わたくし、グラス・レオートともうします。君が打倒した迷宮公、それその人です」

彼の自己紹介を聞いたサーン少年は、きっかり三秒硬直した後に、天までとどけとばかりの叫び声をあげた。

「うわああああああああああああああああああ!?」
「こうしてお目にかかれて、実際自分はとても嬉しく思ってるよ?」
「あああああああああ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!どうかゆるして!」

怒涛の勢いで土下座し上下運動をはじめて拝み倒すサーン少年を見かねて、シャンティカ君が二世殿の脇腹を、やんわり肘でつついた。

「ちょっと、脅かすのは程々にしてあげなさいよ。さっきから変な態度取ってると思ったら」
「いやなに、こっちは殺された身なのでちょっとばかりおどかしても、まあ許されるかなーと。ふふ」

追い詰められた子ねずみよりも細かく震える少年に、二世殿がしゃがみこんで訂正をかけた。

「うん、ゴメンゴメン。正確には自分は死亡した迷宮公本人じゃなくて、その息子、二世のような物だと思ってくれたまえ」
「む、息子……いや、でも、どっちにしても俺の事恨んでもおかしくないんじゃ?」
「そこはね、我々は人間と倫理観とか、いろいろ違うから気にしなくてよろしい。それより問題なのは君の処遇なんだよ」

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十一話:終わり|第四十二話へと続く第一話リンクマガジンリンク

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