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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十話 #DDDVM

「それは、君が身につけた、遠見の術によってだね?」
「はい、そうで……って、なぜそれを?俺そんなのまだ一言も」

「私も同じ書を読んだのだよ。そして、読んだ資料の一部に水シミが残っていたわけだ。よもや厳重に保管されている歴史資料に、揃いも揃って水シミが残る管理ミスが発生する確率よりも……人為的作為の方が、まだ納得出来るだろう?」
「はは……確かに、おっしゃるとおり。かなわないなぁ」

サーン少年は一度言葉をきると、引き続き自分の行いについて語った。

「必死だったんです、恩人が水晶の華になって死んじゃうなんて、そんなの納得できないでしょう?俺は出来なかった。手当り次第、あちこちに術を発して、関わりがありそうな本を夜通し探し続けたんです。治療の手がかりは割合早く見つかったんですが……」
「不死王の冒険譚はわりあい、市井に知られている伝承だから、だね。問題は治療薬の方だったわけだ」
「ええ、黄金酒は所在不明、大本の甘竜も生死不明の所在不明、でしたから」
「甘竜殿の所在は我ら竜族においても伝承程度の情報しかない。伝えきく所によると、この世界のいかなる者の手も届かぬ所に去ってしまったとのことだが」
「現代まで、隠れ住んでてくれたら良かったんですけどね……代わりに、なんとか見つけ出したのが、迷宮公の宝物庫に保管されている分だったんです」

私とサーン少年のやり取りを、二世殿は興味深げに身を乗り出して聞き及んでいた。そして、一歩踏み出して会話に参加してくる。

「エクセレント、実に素晴らしい。それで、どうやって手段を固めたのかお聞きしたいな」
「すばらしくなんかないですよ。ホントはもっと穏便に出来たら良かったのに」
「まあそれは済んだことだとも、前向きにいこうじゃないか」
「はあ、そうですか。やるだけやったから、悔いはないけど……幸か不幸か、迷宮公の仕組み、とでもいうんですか?それについては、逐一迷宮公の側仕えの門番達が書き記してたんで、制覇すれば宝物を獲得出来るってのはわかったんですけど」
「真正面から行けばそもそも門番に阻まれる。王宮に申し立てても、受理されるかは見込み薄、となれば君がやったとおり、こっそり倒して持っていくしかないよね。わかるわかる」
「なんかアンタ、妙に馴れ馴れしくない?初対面だよな?」
「ハッハッハ、自分の事は事件調査官だとでもおもってくれたへ。なぁに君のことは悪いようにはしないとも」

人間の感覚からすれば、明らかに怪しすぎる全身鎧風の見た目に、さらにはフルフェイスの兜をかぶったレオート二世の親しげな振る舞いに、サーン少年はあからさまにいぶかしげな視線を向ける。そしてため息まじりに続きを話しはじめた」

「まあ……そっすね。あれこれ考えたんですけど、迷宮公を倒して黄金酒を奪う以外に俺に時間はなかったんです。他の案はそもそも手がかりさえない有様で、ギリギリ実現出来るのがこれだけでした」

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十話:終わり|第四十一話へと続く第一話リンクマガジンリンク

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