全裸の呼び声 -52- #ppslgr
暑苦しいにもほどがある筋肉ムキムキの中年男性群による、組んずほぐれずの組体操。直接的な敵対関係でなければ、レイヴンとアノートもみかけたところで無視したことは間違いない。ついこぼれた彼のつぶやきも無理からぬことであった。
おぞましい男結神輿は尋常ならざる結合力と団結によって、男まみれの神輿からトランスフォーメーション!いけにえを積み込んだ神輿中央部を核とした巨人形態へと盛り上がっていく!それはあたかも、今では危険性からはばかられ禁止された小学生の集団組体操ピラミッドが出来上がっているかのごとき蠢動である。
『男結神輿、強襲形態!』
男達の、一分の乱れもない戦叫が辺りを威圧する。
もちろん、戦場で攻防目的で組体操するわけがなく、やるとしても壁越えなどがせいぜいであろう。いうまでもなく、通常であれば隙だらけだからだ。だが、男結神輿は三人の予想を遥かに超えて俊敏に、腕部を突き出した。よどんだ空気が、男たちの汗と涙の一撃に吹き払われながらに黒づくめに迫る。
「グッ……!」
普段であればもっと余裕もって回避運動したところが、疲労困憊により最小限の動作で左に身を傾けてギリギリで避けようとするも、それがあだとなった。レイヴンの右側を右こぶしを担当する全裸中年男性が行き過ぎざまに、蹴りを繰り出したのだ。なんたる恐るべき柔軟性と筋力であろうか!オイリーな屈強男性脚がしたたかに黒づくめのみぞおちを蹴りぬき、彼の身体は宙に舞う!
「レイヴン!」
大地に叩きつけられる寸前で回転受け身を取った黒い影に、追撃のアームハンマーが迫る!まるで大型工業重機めいたその筋肉質量を身に受ければ、大統領護衛車両といえどチョコ細工めいてひしゃげるであろう。ましてや生身の人間であれば一たまりもない。
だが、男結神輿のふるう剛腕(全裸中年男性)は、途中で大質量の一撃を加えられ何もない路面をしたたかに打ち砕いた。すんでのところで、アノートの振るう破城槌がレイヴンを救ったのだ。
「立てる?」
「寝かせていてはもらえなさそうだしな」
軽口で返すが、同時に男結神輿からのラッシュが二人を襲う!ドッジロールから駆けだして、まるで鉱山掘削ドリルを思わせる乱撃をかわす!神輿からあがる、か細い悲鳴。
「ちょっ、まっ、ゆらさ、おふっ、はやくたすけってっ」
今時の機動兵器と違って、慣性制御も搭載されているわけがない密集男塊の真っただ中で揺れに揺らされ、夢気分になれるのは特殊な性癖の持ち主だけであろう。当然ながら被害者は今最高潮に酔っていた。そして相対する三人はそれどころではない。
『露ーッ!!!』
雄たけびと共に男結神輿より構成パーツとなっていた全裸中年男性たちの一部が高速フィンファンネル射出され、多方向より襲い掛かる!拳撃、蹴撃、飛び掛かり、頭突き、そして膨張した局部が凶器となって迫りくる!肉体凶器の嵐である!
【全裸の呼び声 -52-:終わり|-53-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
注意
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