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全裸の呼び声 -41- #ppslgr

 煽ってみたが、実際状況は悪い。最悪だった。
足元の建物は触手ですし詰め、屋上の周囲は何重にも奇怪触手がイソギンチャクめいてゆらめき包囲。本体を狙うにもオク・ダーク本体は触手とばりの向こう側にて鎮座し、間違ってもこちらの攻撃が届く距離にはいない。あの巨体が相手では9mm弾のヤクザハンドガンなど、届いたところで豆鉄砲どころかホコリを吹き付けているようなものだ。

 もちろん、ソウルアバターも、ダメだ。現在地は通常と異なる世界律にて稼働しており、起動しようとしてもエラーを吐くことは確認済み。つまり、二人は生身で、この忌まわしい怪奇露出タコの脅威を切り抜けなければならない。

「ミュルミュルーッ!」

 更には、実は配下だったと思しき触手人まで屋上ドアからひしめき迫りくる。このままでは、ホテル屋上まで触手まみれになってThe・endになるのは時間の問題であった。巨大露出タコの姿を認めてすぐに、屋上縁に駆けたレイヴンは、その手に握る刀を振るう。トネリコ大木よりもなお太い吸盤触手が、ずるりとずれ落ちて倒壊。遥か下方へと落下していく。

「露ーッ!」

 巨大タコから夜空を震撼させる悲鳴が上がるが、触手包囲網自体は第二第三の触手が追加され、ほんのわずかに見た夜景もすぐに紫紺で埋め尽くされる。押し寄せる触手人をダブルアーム殺戮回転ノコギリで薙ぎ払う教授!ホテル屋上が、みるみるおぞましい紫の汁にぬかるむ!

「レイヴン!まだかい!」
「やってるが見ての通り触手の層が厚い!8本どころじゃないんだが!」
「シューハッハッハッハ!小生、ちゃんと反省と対策を実行する男であれば!貴様らをすりつぶすのに十分な数の足を用意している!貴様らの末路はマニアック・スケベ・ゲームめいた触手詰め合わせ死よーっ!」
「誰得だまったく」

 舌打ちして斬撃のピッチをあげる。レイヴンは高速砂漠化伐採システムと化して無数の触手を薙ぎ倒すも、分け入っても分け入っても触手の森。触手が倒落するたびオク・ダークはギエーだの、ンギャピーなどと悲鳴をあげはするが、包囲網自体は微塵も手薄にしない。もはや向こう側すら、はるか遠くの彼方に感じられさえした。このままでは二人揃って触手押し寿司死間違いなし。最悪の結末だ。

「せめて一瞬、隙があれば……!」
「さいあく、俺が自爆するが」
「この後一人でここを徘徊するのはイヤなんだけど!」
「しかし、遺憾ながら切れるカードが、ない!」

 覚悟を決めたレイヴンが納刀のち、右腕を掲げるとまるで溶鉱炉めいた発光をはじめる。際限なく光量を増す様は、まるで地上の星のようだ。ドブヶ丘の無明夜景を、触手の檻を超えて照らす。

「ムムムッ、貴様ッ無駄な足掻きをーッ!?」
「教授、あと任せた」

 アノートに向かって不敵に笑うと、レイヴンは極限露光に至った右腕を突き出す。

「さぁて……お前の露出と俺の露出、どちらが破滅ヤバいか実践比較といこうか」

【全裸の呼び声 -41-:終わり|-42-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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パルプスリンガー、遊行剣禅のパルプ小説個人誌です。 ほぼ一日一回、1200字程度の小説かコラムが届きます。 気分に寄っておやすみするので、…

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