全裸の呼び声 -54- #ppslgr
全裸中年男性レギオン存在は、先程射出された分体と再合体すると、ボリュームを増してシャウト威圧。どの様な物理学に則ってか理解の及ばない組体操形状によって、挑発してみせる。余裕のあらわれか、積極的に攻め立てる姿勢さえ見せない。一糸乱れず総員勝ちを確信しているのだろう。レイヴンは横の二人に視線を流した。
「わかりやすい弱点が無い以上、正攻法で行こう。各個撃破だ。だが一つ問題がある」
「スキを作る、だろう?それなら私にいいアイデアがある」
「うむ、アレならば確実に奴らにスキを産むことができるはずじゃ」
「正直全然わからないが、ここは全裸露出有識者に任せる」
敵に詳しい味方がいるとは本来心強いはずのものだが、こと此処においてはお題目が全裸露出のために、レイヴンは目眩がするような心地だった。とはいえ、打つ手なし、よりはよほど良いのも事実である。以心伝心で前に出る二人を神妙な面持ちで見守る黒尽くめ。
一方の男結神輿はその全裸露出中年男性で出来たゴーレムめいた威容を見せつけながら、三人へとにじり寄ってくる。被害者の女性は筋肉男達の団塊の中で、これ以上は望めないほど悲惨な表情をしていた。無理もない。
全裸の組体操を構成する者共が血走った眼を一斉に敵対者に向ける様は、まるで野犬の群れ同様の獰猛さだ。恐るべき耐久力と筋力、加えてドブヶ丘の汚染を物ともしない適性まであるとくれば、並の戦力では攻略出来ないであろう。それほどに、この露出男塊は脅威であった。
果たして、この脅威にアノート教授は如何なる突破口を見出したというのであろうか。両者の間に張り詰める緊張を払って、彼は叫んだ。
「右胸筋を構成する君!君の上腕二頭筋キレてるよ!」
「腹直筋を担当するお主!見事な腹筋じゃな!そこまで鍛えるには眠れぬ夜もあったじゃろう!」
「おおう……?」
レイヴンはいきなりボディビルダー大会でかけられる称賛をはじめた二人に困惑の視線を投げかけながら、しかして油断なく敵の様子を観察する。出来るスキが延々続くとは限らない、一瞬のスキを見逃すわけにはいかないのだ。
一方の男結神輿巨人も、敵からいきなり投げかけられた称賛に困惑するかのように動きをとめ、ふるふると戦慄きはじめた。心なしか、全身が脈打ち筋肉膨張のように収縮と膨らみを繰り返す。
「いやしかし残念!そんなに隙間なくがっぷり組み合っては、素晴らしい筋肉美を一部しか見ることが出来ないよ!実に残念!」
「うむ!やはり肉体美は360度、いや1080度全方向から余すところなくみれてこそ!こうも組体操していては、集団の美はあれど個の美は損なわれてしまうなぁ!」
果たして、二人の言葉はいかに男結神輿を構成する露出者達に届いたのか。その結果は、すぐに訪れた。
「お……」
「お?」
「俺を!見てくれえぇぇぇぇぇええええ!!!」
なんたることか!アレほど強固に組み合い、個の肉体を構成していた全裸露出者達が爆散したかのように解散し、押し合いへし合い競うように自身の肉体美をアピールしはじめたのだ!さながら突発ボディビルダー大会会場のごとくである!
【全裸の呼び声 -54-:終わり|-55-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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