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全裸の呼び声 -42- #ppslgr

 いまや100m級の巨大タコ入道となったオク・ダークでさえ、本能的に危機を察知し、恐怖した。アレは何が起こるかまではわからないが、きわめてヤバい。まるで追い詰められて破れかぶれの捨て鉢になったアメリカ軍のなりふり構わなさめいた狂気を感じる。

 だが、だからといって触手のとばりを解いて逃げ出せば、折角のチャンスをふいにすることにもなりかねない。しかし、自分はあの恐ろしい何かを耐えきれるかどうか確証もない。

 そうしてオク・ダークは、どっちつかずだが安牌であろう選択をした。数え切れないほどの触腕でホテル屋上を囲ったままに、自らの本体だけを遠くに、遠くに遠ざける選択である。そうすれば触手がどれだけ犠牲になろうと自分が滅びることはない。はずであると彼は考えた。

「シューッシュハハハハハハハハ!バーカめ!だれが素直にミエミエの大技を真正面から受けたりするものか!さらばだーッ!」

 オク・ダークは声高らかに嘲笑しながら、全力で本体から生え出る無数の触腕を延長し、ホテル屋上から高速で遠ざかる。その様はあたかも墨を噴射しながら飛び退るタコそのものだ。一方、触手の檻は、今やウチから漏れる光でハロウィンのランタンめいた様相をなしていた。

 レイヴンの直ぐ側にて伏せているアノート教授をのぞいて、屋上にはびこる触手は熱波にさらされた草木よりも無惨に干からびて陽炎めいて揺らめく。指向性を持たされた熱エネルギーだ。

「開門……!」

 レイヴンの宣言とともに、彼の右腕は烈光とともに弾け飛び、ドブヶ丘のドブ臭い夜空をましろに塗りつぶした。その様はまるで地上にひょいと顔を出した太陽といっても過言ではない。光の巨塔がそびえ立って何重にも張り巡らされた触手のかこいを一瞬にして吹き飛ばしてしまう。

(グワーッ!グワーッ!)

 自身の触手が片っ端から焼き切られる感触に脳内絶叫しながら、オク・ダークは触手をパージしては新しく生やし飛び退る。遠く遠くに離れてなお、ホテル屋上の地獄めいたかがやきはオク・ダークの影を色濃く伸ばす。だが、その身を灼くほどではない。助かった。彼が心の中で安堵した瞬間だった。

「裸ーッ!」

 とてつもない勢いの何かに反対側から蹴り飛ばされ、オク・ダークの巨体はゴム毬めいて弾け飛んだ。跳ね返る先は、当然あの地獄の焔のまっただなか。触手を伸ばしてブレーキをかけようにもすでに大量の触手を切り離したばかり、さらには高々と空中を吹き飛ぶ余り建造物には届かない!

 オク・ダークがあぶられこんがり香ばしい香りをたてるほどに炎に接近したタイミングで、彼が焼き上がる前に熱はウソのように消失した。それと同時に、屋上から飛び降りる影。いな、飛び降りているのではない。建物間に渡した縄を滑りくだっているのだ!そして、その影は一人分ではない!

「ぬうーっ!自爆と言っていたではないか!」

 ちょうど今しがた蹴り飛ばされたことも忘れ、気球めいて浮かんだオク・ダークは隣接ビル屋上に至った二人に迫る!

【全裸の呼び声 -42-:終わり|-43-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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