走れ、穿て、守れ -7-

　共通帯域通信でつけられた文句をかき消す勢いでガン・フロッガーが放ったバズーカがまたも異世界キメラへと着弾、球状爆炎が道路を紅く照らす。

「キッ、貴様らーッ！人が喋っているのに武士道精神とかそういうのはないのヌワーッ！」

　S・Rに続いて俺の乗機が掌底から放った扇型拡散誘導レーザーが異世界キメラの雑多な胴体部分に突き刺さり幾重にも球状光爆を巻き起こした。怒り狂って意味の通じない罵倒を繰り返す通信主。

「笑わせんじゃないよ、何が楽しくて誘拐犯と歓談するんだい？」
「グヌヌヌヌヌ……そうだ！貴様ら！ワガハイが何故クリエイター共を攫ったか知りたくないか！？」
「大方その雑な世界観キメラ兵器を構築する為の人柱目的だろう」

　俺の即答に沈黙する中年男性っぽい声の通信主。そう難しい推定ではない。身代金の要求はこれまでに出ていなかったし、事件現場となったイベント会場では死傷者は出ていない、つまり殺傷目的ではない。

　そこに来てこの雑世界観キメラ兵器が出てくればさらったクリエイターの使い道の答えが出てきたような物だ。そして俺達はさしづめ作った兵器の試験対象だろう。

「クッククククク……そこまで見抜いているならあえて教えてやろう！我らはアンタイ・クリエイティブ・オーガナイゼーション！略してACOだ！」
「何がACOだい、アンタらなんか精々あんくり団とかあたりがお似合いさ」
「ムキーッ！！！何処までも口の減らない女め！」

　アンタイ・クリエイティブ・オーガナイゼーション、さしずめ反創作団体といった所か。ソウルアバターが出し惜しみされ、なおかつ出てきたのも個性のない量販型モデルだったのはそこに原因がありそうだ。ソウルアバターのデザインニングもある種の創作行為といえるからな。

「アンタ達がそのイカレた教義を担いでいる理由なんかどうでもいいね。アタシが知りたいのはR・Vが言った事が本当かどうかさ」
「クッハハハハムハハハハッ！本当だとも！いいかね、創作力とは人間には過ぎたチカラなのだよ！我らACOはそれを適切に管理し運用……ウワーッ！！！？」

　アンクリ団の男が弁舌を誇る間に、両肩にバズーカ砲を担いだガン・フロッガーのバズーカ乱射砲撃によって硬直していた異世界キメラが爆炎に包まれる。

「くだらないご高説ドーモ。アンタ達は一人残らず消し炭にしていいって理解したよ」
「クソッ！やれるものならやってみるがいい！この忌々しいパルプスリンガー共め！」

　アンクリ団員の罵倒と共に異世界キメラ兵器の形状は損傷していた部位を新たな世界が埋め、今まで以上にいびつに、より雑多な構成へと膨張していく。もはや神への反逆の塔めいており、適切な管理などできているようには見えない。

「どうだ！この兵器はさらったクリエイター100人を組み込んで稼働しているのだ！貴様らたかが二人程度ものの数ではない！」
「言ってくれるじゃないか！アンタが無理やり働かせている100人より自分の意志で作ってるアタシの方が強いって事教えてやるよ！」

【走れ、穿て、守れ -7-：終わり：-8-へ続く】

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