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全裸の呼び声 -51- #ppslgr

 AI生成悪夢めいた、この世ならぬ街路を進むうちに、いつしか威勢のいい掛け声が空気を震わせる。

「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!」
「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!」

 色濃くもやのかかる街並みの、見通しの悪さを物ともしない男衆の掛け声。もちろん現実を魔改造したこの異空間で、たまたま訪れた今日が偶然にも地元の祭りの日であるなどと言うこともない。レイヴンは目元を抑えた。

「方角はこっちであっているんだな……?」
「そうじゃが?」
「そうか、合っているか、そうか」

 もののついでに、ラオの股間の輝きが指し示す方向と、謎の掛け声が響いてくる方角は一致しており、もはやエンカウントまで一刻の猶予もないことは明白である。

「戻るかい?」
「いや、いい。今更だ。衰弱しているから気弱になっているんだろう」

 レイヴンはかぶりを振って正面に向き直ると、車の一つも通らない大通りの向こう側から迫りくる何かへと身構えた。もやを押しのけて姿をあらわしたそれは、実際小山のようなボリューム感があった。

「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!」
「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!」

 それは、神輿だった。ただし、ただの神輿ではない。全裸中年男性の集団による、禍々しい組体操で象られた恐るべき肉体神輿である。それはまるで、神話に語られる魔性存在レギオンめいて組んず解れつ一致団結して合体しており、担ぐ男たちが前進するたびに揺さぶられても彼らの結合はこゆるぎもしない。

「むう……これはもしや」
「知っているのかい、ラオ」
「うむ、これは暗黒露出道の禁忌なる儀式、『男結神輿』!」
「だんけつ」
「みこし?」
「彼奴ら闇の露出者は、こうして深遠なる露出存在に祈りとイケニエを捧げることで露出の次なるステージに昇れると信じておるのじゃ……」
「露出犯罪とカルトと暗黒儀式が一緒くたに混ざっているのは、流石にどうかと思うんだが、いけにえ?」
「うむ、いけにえじゃ」

 ラオの言葉に、迫りくる男神輿の山を仰ぎ見ると、その中枢山頂には、一人だけ女性が組み込まれていた。その気の毒としか言いようがないシチュエーションの人物は、オリーブドラブのタンクトップの妙齢かつ美人だが、ただようやさぐれた空気が美しさを帳消しにしているタイプだった。

「た~す~け~て~ッ!ほんとなんなのコイツラ!私は被害者側だって言ってんでしょ!あ、ちょっとそこの通りすがりの人!助けろ!助けなさい!今すぐ!」
「見なかったことにしてもいいかな?」
「あなたの気持ちはわかるけど私の気持ちも考えてちょうだい!」
「だそうだ」

 レイヴンの言葉にアノートは肩をすくめ、恐るべき破城槌を振り上げる。ラオの輝きが股間一点集中から、全身を覆うように広がって、一面の淀んだ空気を祓い清める。

 おぞましき組体操神輿は地響きと共に立ち止まると、筋肉をわななかせて立ちふさがる闖入者を威嚇した。

【全裸の呼び声 -51-:終わり|-52-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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