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全裸の呼び声 -53- #ppslgr

 体調不良時の悪夢でもそうはお目にかかれない最低攻勢を、三者はそれぞれの手札を切って耐えしのぐ。気を抜けばすぐさま全裸中年男性の群れによるリンチ殺待ったなしだ。

「ええい!鬱陶しい!」

 立て続けに銃声、そして襲い来る全裸中年男性が空中でもんどり打って転倒する。レイヴンが構えた押収ヤクザ銃が切れ目なく火花を吹き続け、飛び交う裸体を正確に撃ち抜きふきとばす。

 いかに銃弾をも弾く異常露出肉体といえど、足場のない空中にて着弾衝撃を殺すような芸当はできない。逆に言えば、銃撃で迎撃可能なのは滞空中の相手に限られる。大地を這い寄り銃撃をかわす一群!

『裸ーッ!』

 密林巨大ハブめいて猛襲をかける連中に立ち向かうのは、ラオだ。同じ以上露出存在といえど、多勢に無勢であるかのように見えたのも一瞬のことである。彼は迫る全裸集団を前に狩猟犬のごとく身を低く構え、次の瞬間には一気に撃ちだされた巨砲のように前へと出る。

「裸ーッ!!!」
「露ーッ!?」

 もっとも近い露出者にラオの蹴りが食い込んだかと思えば、その反動で彼は独楽めいて回転し左の露出者を蹴り上げ、さらに踏み台として反対側の露出者の局部を突き出した肘で打ち砕く。それだけにとどまらず、あたかも器械体操オリンピック選手よりも軽やかに、迫る露出者の肩をつかんで反転すれば頭部に膝をくれてパルクール跳躍。彼が一手動くたびに、恐るべき異常肉体露出者がみるみるねじ伏せられていく。

 だが、その彼をもってしてなお、裸の猛攻はしのぎがたい。ダメージを受けた連中が距離を取れば、無傷の露出戦士が矢継ぎ早に襲い掛かってくる。その密度は往年の品川通勤路のサラリーマン闊歩にも劣らない。まさに雲霞のごとしである。

「二人とも!」

 数に勝る裸男群の包囲を見るや、アノートが叫ぶ。すぐに察したレイヴンは発砲のベクトルを活かして自ら倒れ込み、ラオもまたトモエ投げから攻防一体のあおむけに移る。

 意図をつかめず、隙をさらしたかに受け取った露出戦士達は一瞬の逡巡ののち、追撃を加えようと肉薄するもそう甘い展開はなかった。騒ぎの中央に立つアノートが手にした破城槌の柄を大地にたたきつけると同時に、鳳仙花が張り裂けるように爆散、飛び散った鋼片が露出者たちの肌をしたたかに打って追い払う。

『裸ーッ!』

 しかし、サンシタ露出者たちが吹き払われたのと入れ違いに男結神輿本体がその魔手を伸ばす。肉体組体操の巨人の右腕に露出者たちが取りつき、巨大な破砕鉄球のごとき凶器と化すやいなや、まっすぐに振り下ろす!

「裸ーッ!」

 すぐさま、ラオが三角倒立から全身のバネをたわめ迎撃ミサイルと化してアノートへ襲い掛かる全裸集団毬玉を蹴りぬき、カット!わずかにたたらを踏んだ男結神輿の脚部構成員を狙って銃撃の嵐!たまらず、神輿が後退する!

「参ったな、冗談みたいな構成のクセに見た目よりはるかに厄介だ」
「分離合体が特徴なのに核が無いのはずるいねぇ」

【全裸の呼び声 -53-:終わり|-54-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

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パルプスリンガー、遊行剣禅のパルプ小説個人誌です。 ほぼ一日一回、1200字程度の小説かコラムが届きます。 気分に寄っておやすみするので、…

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