#毎日投稿
こちら、百鬼夜行結婚相談所
「でーすーかーらー、結婚相手は携帯食料じゃないんですって」
「なんだよ、ケチ臭いな」
「ケチとかではなくて、結婚した相手を捕食されてしまっては弊社の信用ガタ落ちなんです」
スカッと日本晴れの昼下がり、悠久の時を生き延びた古屋敷の和室では厚手の卓を挟んで二人の男女が喧喧囂囂丁々発止の言い争いの真っ最中。
女は燃え上がる様な紅蓮の髪に、額より艶やかな二本の角を突き出した見た目だけなら見目麗しい美女
その思考は実現させられない
小説が、文章が理解できなくなった。
それは朝賀が大学生活の遊び金を稼ぐために、あるアルバイトに契約した後に始まった現象だった。
「脳の思考リソースを貸与するってこういう事かぁ……」
わかっていたつもりだったが、実際に体験してみると思いのほか普段よりも物事が理解できなくなったことがわかる。
例えば、先日の試験で高得点を得た講義の教科書なども、読み返してみても何がどうなっているのか『わからなくなっ
僕を必要だって言って欲しいんだ
じーちゃんの言うことにゃ、昔は働かないと生きていけなかったらしい。
それに比べたら現代は最高だとも。だけど
「ドミニオン、次の僕の就業予定は?」
「6ヶ月先までありません」
「マジかぁ……」
無機質なワンルームのベッドで無気力感にふんぞり返る。
ワークレス症候群。働かなくて良くなった人類が罹患した精神病。
端的に説明すると、人間って奴は全く働かずに他者に貢献していないと、それはそれで病む生き物
ライフ・イズ・ワンダリング
「どうか心して聞いてほしい、君に対応する説明書はない」
「はい?」
オフィスビルの七階にひっそりと存在するメンタルクリニック、そこで僕に告げられたのは衝撃の一言だった。
「おかしくないですか?人間説明書作成の為の診断が義務化してもう10年なんでしょ、ビッグデータとか充実してるはずで」
「ビッグデータ、とはそもそも統計学にすぎないんだ聖徒君。そして物事にはしばしば統計から外れた、特異点とも言うべ
世界を巡るは牙持つ乙女
まず、彼にもらったナイフ。凄い切れ味で、刃持ちもいい。私はもうこれじゃないと獲物の解体はしたくなくなってしまった。
次に黒橙の弓。コンパウンドボウって呼ぶんだって旅先で出会った人が教えてくれた。滑車がついてて私の力でも簡単に引けるこの弓は、今や私の狩りになくてはならない相棒。
「シャンティカ」
「止めても無駄ですよ、長」
巨樹の洞に作られた私の自室で荷造りを進める私を、訪れた里の長が呼び止め
信仰の窓口は仮想現実で
奥ゆかしい電子論理神楽が個人邸宅の書斎よりも狭い一室に流れる。
室内に設置されたるは一台の個人監獄めいたサーバーラック。
ここはかつてこの土地に存在した稲風神社、そのVR社である。
「あーっ、東京の土地神になんてなるんじゃなかったわー」
サーバー用のおざなりに据え付けられたモニタ内で、一柱のお稲荷さんが電子仮想神社の中でぐだぐだと管を巻いてだらけていた。
「まっさか土地がもったいないからっ
一斗缶生活は元自宅の少女と共に
「お願いだから!元のオウチに戻って!ください!」
もう日が暮れる閑静な住宅地、そして俺の家があった土地、それから見た目だけならパーフェクトな大和撫子(現:美少女、元:自宅)を前にして俺の悲痛な叫びが響き渡った。
「え、え……あの、ダメだったですか?旦那様のお好みに合わせたつもりなのですが」
「いや見た目は良い、最高!口調も声も!でも家が無くなったら俺週末の台風どうしのげばいいの!」
俺の訴え
AIにこそ、一時の安らぎを
「AIにもストレスは発生しますよ」
自分が所有する生産施設、その稼働効率が徐々に下がっていると知った私が頼ったAI・ドクターの回答がそれだった。
夜も更けた自宅の一室で、ARホログラフィック映像として宙に描画された細面のドクターの言葉に、いささか違和感を覚える。
「すみません、ソフトウェアには詳しくないのですが、AIと言うのは要するに電子回路上に走る電気信号ではないですか?なのになぜストレス
アイデアは何処に消えた?
『スマホに書いたアイデアが消えてる!』
台風一過、その翌日に起きてSNSをチェックした私のタイムラインに流れてきたのは、そんな悲痛な言葉だった。
一件だけなら操作ミスか、アプリのエラーだろうと考える所だがそうではなかった。漫画家、エッセイスト、小説家、研究者に至るまで私の視認範囲の悉くでそれは起こっていたのだ。
「まさか……」
手元のスマホでメモアプリを開く。このアプリケーションはこまめに
その黒き凶鳥は今もそこに居る
「真っ黒な鳥さんが、ぜーんぶやっつけちゃったんだって」
「またその話かよ。鳥なんかが人間に勝てるわけないだろ?」
茶と翠の入り混じるタービュラ山。
その獣道を二人の幼子が短く柔らかい手足を駆使して掻き分け進んでいた。
「きっとすっごく強い鳥さんだったんだよ」
「お前毎回そう返すよなぁ。じゃあ、なんでそいつは居なくなったんだ?」
栗色のくるくる癖毛のアダンは、唇を尖らせては幼なじみである艶やか