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AIにこそ、一時の安らぎを

「AIにもストレスは発生しますよ」

自分が所有する生産施設、その稼働効率が徐々に下がっていると知った私が頼ったAI・ドクターの回答がそれだった。

夜も更けた自宅の一室で、ARホログラフィック映像として宙に描画された細面のドクターの言葉に、いささか違和感を覚える。

「すみません、ソフトウェアには詳しくないのですが、AIと言うのは要するに電子回路上に走る電気信号ではないですか?なのになぜストレスが生じるのでしょうか」
「それを言ったら、私達も脳内の神経網に生じた電気信号が意識を生じさせていると言えるでしょう。そして私達と同様に、無機物上の電子回路を走るAIのプログラムにも負荷は生じます」

そこまで言ったドクターは一拍置いて言葉を続ける。それは私が予想していて、なおかつあり得ないと思っていた言葉だった。

「いただいたデータを拝見しましたが、あなたの施設のAIは24時間365日休みなしで稼働しているようです。その為、情報処理中に発生したジャンク・フラグメント……要するにゴミデータがメモリ上に累積し続け、徐々に処理能力を圧迫していると考えられます」
「機械なら、休みなく稼働し続けられるものではないのですか?」
「いいえ、違います」

はっきりと私のイメージを否定したドクターは、淡々と何度も繰り返したかのように持論を述べる。

「AIにもメンテナンスタイムやクールタイムは必要です。一日一回、二時間のクーリングタイムと一週間に一回のメンテナンスタイムを設けてください」
「わかりました」

謝礼を告げて、通信を切るとドクターの指定した休止時間がもたらす損失と、このままパフォーマンスが落ちていった場合の損失を比較する。
若干は、休止時間を入れた方が効率は良い。

「機械にも休みは必要……と」

稼働スケジュールの見直しを検討し始めた私宛に、新たなメッセージが届く。

『社長!自社工場のAIがストライキを表明しました!』

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#小説 #毎日投稿 #逆噴射プラクティス #逆噴射レギュレーション

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