ライフ・イズ・ワンダリング
「どうか心して聞いてほしい、君に対応する説明書はない」
「はい?」
オフィスビルの七階にひっそりと存在するメンタルクリニック、そこで僕に告げられたのは衝撃の一言だった。
「おかしくないですか?人間説明書作成の為の診断が義務化してもう10年なんでしょ、ビッグデータとか充実してるはずで」
「ビッグデータ、とはそもそも統計学にすぎないんだ聖徒君。そして物事にはしばしば統計から外れた、特異点とも言うべき存在があらわれる。それが君だ」
先生の言葉を反芻する。
今時は皆生き方を、説明書を読んで決めてる。
自分の事は自分が良くわかってるなんてオオウソだとわかったからだ。
僕だってそのつもりで今日説明書をもらいに来た。それなのに。
「じゃあ、僕はなんなんです?普通じゃないのはわかりましたけど」
「君は…」
先生の言葉を爆発が遮った。
ビルのガラスを爆破した武装ヘリ、そこから一人の人物が歩み出てくる。
それは月のように湾曲した長い銀髪に紅くメッシュを入れ、切れ長の目を好戦的に見開き、身体のラインが浮き出る黒いボディスーツをまとった美女。
「ヘェーイ、救世主。迎えに来たぜ」
「美人だけど好みじゃない!?」
「んだと、このガキ!」
これってボーイミーツレディって言える?
でも僕の好みとはコンパスの方角が180度違う。
それに特別扱いだなんて真っ平ゴメンだ。
「逃げたまえ聖徒君!」
「言われなくても!」
もんどりうって出口のドアへと向かって走り出した僕は柔らかい何かにぶつかって尻餅をついた。あのケバい銀髪女だ。襟首掴まれた僕はあっさり持ち上げられる。
「残念、遅いね。スロウリィ」
「くそっ、離せよオバサン!」
「アタシはまだ20だ!このクソガキ!」
「化粧が悪いんだよ!落とせよ!」
みぞおちに衝撃、転倒、吐き気。
「口のききかたには気を付けな」
引き摺られていく。
【続かない:799文字】
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