#創作大賞2023
『東京23区最後の日』1
1 東京じゃないから
ナオコは毎日トオルとのメッセージのやり取りを欠かさない。
昨年、地元の高校を卒業して、東京の大学に入学した。いくつかの志望校はあったものの、東京の大学ならどこでもよかった。
地元にも大学はあった。しかし、ネットで流れてくる若い女性タレントの東京での私生活に憧れないわけにはいかなかった。
「今日は久しぶりのオフ。表参道の新しいカフェでランチでーす」
しかも、そのアイド
短編グルメ私小説 「正義の消費者」
地元の国道沿い、道の駅。
本館とは別に仮設のバラックみたいな建物があって、その中には飲食店がいくつか並んでいる。それぞれ好きな店の食券を券売機で買って、好きな席で自由に食事する。つまり小規模ながらもフードコートのような形式で、休日ともなれば家族連れなどで大いに賑わった。
そこに出店するうどん屋が、おれたち二人のお気に入りだった。
初めてそこを訪れた日の事。
うどん屋の調理場に立つ店主を見つめ、