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5冊読了(4/27〜5/6)

1『AX アックス』
伊坂幸太郎/KADOKAWA (2020年2月21日発売)

2『すぐわかる画家別西洋絵画の見かた』
岡部昌幸/東京美術 (2002年2月25日発売)

3『本当にわかる心理学』
植木理恵/日本実業出版社 (2010年2月26日発売)

4『生物と無生物のあいだ』
福岡伸一/講談社 (2007年5月18日発売)

5『よちよち文藝部』
久世番子/文藝春秋 (2012年10月20日発売)


読書っていいですよね。


さて、
1は伊坂幸太郎さんの本です。
『グラスホッパー』『マリアビートル』に続く「殺し屋シリーズ」の3作目です。
ご多分に漏れず、僕も伊坂幸太郎さんの大ファンです。
前の2作はもちろん読了済みです。

『グラスホッパー』なんて読んだのはいつのことだったでしょうね。
伊坂さんの初期の作品でして、文庫本が出たのが2007年なので、たぶん僕もその頃に読んだのだと思います。
僕は伊坂さんファンになったのはかなり早かったですからね。
これはちょっとした自慢です。
最初読んだ時、この人絶対売れる!って思いましたね。

殺し屋シリーズという名の通り、殺し屋たちが活躍するシリーズです。
でも恐かったりおぞましい雰囲気ではなく、登場するキャラクターたちがとてもユニークで、どちらかというとそういう人物たちの日常をコミカルに描くような世界観が魅力です。
もちろん生死をかけて戦うアクションシーンや陰惨な殺人シーンの描写もあるんですけどね。
でもそこまでダークに感じさせないのが伊坂さんの文章の手腕です。

なによりミステリーとして、高度で多量な伏線回収などハイレベルな技法が使われる物語展開も魅力です。
特に『マリアビートル』は序盤から終盤まで、ずっとクライマックスかのような展開の起伏が凄まじくて、読み始めたら止まらない興奮を味わいました。
個人的に、全ての伊坂作品の中でもかなり上位に位置する作品だなと感じました。
だから正直、『AX』がそんな前作を超えられるのか心配ではありましたが、結果、全然そんな心配はする必要ありませんでした。

前2作は、個性豊かな殺し屋たちが複数登場する群像劇だったのですが、今回は主人公を一人に絞って、その人物の日常をより細かく描く構成になっていました。
『マリアビートル』は、舞台が走行する新幹線の中だけの密室劇だったり、このシリーズは構成の面で色んな描きかたを見せてくれて楽しいです。

主人公は「兜」という名の殺し屋なのですが、家庭では奥さんの尻に敷れているタイプの旦那さんなのです。
依頼があれば非道な殺人を犯す職業なのに、家では恐妻に怯えていつも気を遣いまくりである人物像が面白おかしいです。

伊坂作品の特徴である瀟酒な文章と軽妙な会話はいつも通り色濃く出ていて、読んでいて楽しかったのですが、今回の物語の展開には泣かされてしまいました。
僕が読んだ中では、これまでで一番泣ける伊坂作品であると思います。
殺し屋シリーズであるということと、あらすじを聞く限りでは泣ける感じが想像できないのですが、だからこそ僕も意表を突かれて思わずホロリと来てしまったのです。

家族の話には弱い方ではあるのですが、まさか伊坂さんのこのシリーズに泣かされるとはなぁと思いました。
『マリアビートル』の娯楽性とは、また違った感動を与えてくれた印象です。
殺し屋シリーズと、そして伊坂さんの小説家としての手腕の裾野の広さをあらためて認識させられました。


2は、画家別に西洋絵画を紹介してくれる本です。基本的には見開き2ページに、一人の画家とその作品を解説する文が掲載されています。たまに重要な人物は4ページになったりします。
ダヴィンチとかミケランジェロとか。

順番はルネサンス期から現代美術期までの年代順になっていて、僕は西洋美術にそんなに詳しくないですが、なんとなく名前の聞いたことある画家もいれば、全く知らない画家も紹介されていて興味深かったです。

名前は知っているけど作品はどんなのがあるのか知らなかったり、逆にこの作品見たことあるけど誰が描いてるのか知らんわ、あ、え、これを描いた人と同じ人だったのかい、みたいな発見があって面白かったです。

初心者でも見やすくわかりやすい解説をしてくれているので良かったのですが、一人の画家につき1点しか作品が載っていなくて、いやもうちょっといくつか見たいなぁと思いました。


3はTVでよく見たことがある心理学者・植木理恵さんの本です。この本すごく良かったです。
植木さんはテレビタレントさん寄りな方なのかと思っていたら、かなりまともな学者さんタイプの方でした。

巷で知られている「心理テスト」も「深層心理」も真っ向から否定するような内容になる、ということをこの本の編集者の方にまず話した、というエピソードが冒頭に書かれていて、それで僕はぐっと興味を惹かれてこの本を買いました。

人生を豊かにするような心理学の知識が、色々な専門用語や検証実験の内容、学者さんの名前などをたくさん出しつつ解説されていきます。
それでも小難しくなりすぎず、親しみやすく身近に感じられる内容になっているので読んでいてとても楽しかったです。


4は発売当時とても話題になった本ですね。まさか自分がこの本に興味を持って読むことになるとは思いもしませんでした。
難しい内容だから理解できないだろうと思っていましたが、それは思った通りでした。

これを読んだことに特別な理由はないのですが、生物科学のお話は興味深そうだし、たとえ内容がちゃんとわからなくても楽しめるんじゃないだろうか、と思っていました。
それは半分当たっていて、読んでいてとても楽しかったのは事実なのですが、理解できない要素の割合が予想を遥かに超えて多かったという印象です。

頑張って理解しようと思っても、解らないものは解らなくて、いろんな例を持ち出してくれたりして、きっとこれでも科学の専門的な内容を一般の人にも解りやすいようにとても易しく表現してくれているんだろうなぁとは感じつつ、それでも解らないものは解らないなぁと諦めながら読み進めた感じでした。

顕微鏡で覗いて見るようなミクロの世界のお話がほとんどですが、科学の研究者たちを取り巻く人間ドラマを描く部分もあって、そこはちゃんと理解できて面白かったです。
特にDNAの二重螺旋構造を発見しノーベル賞を受賞した研究者についての、ある暴露的な内容には驚きと興奮を感じました。


5はコミックエッセイです。作者の方と文藝春秋の編集部の方が、日本の文豪についての逸話や作品の内容をコミカルに解説する漫画です。作者さんもそこまで文豪に詳しいというわけでもなく、一緒に学んでいくようなスタイルで面白かったです。

太宰治、芥川龍之介、夏目漱石、志賀直哉、宮沢賢治、谷崎潤一郎、森鴎外、など錚々たる顔ぶれの作家たちを解説していくのですが、僕の好きな武者小路実篤の登場はなく、ちょっとそれは残念でした。
武者小路さん以外は僕は全然知らないので、勉強になったはなったのですが、作品を読んでないとわからないよなぁというような小ネタも多くて、やっぱり有名な文豪の有名な作品くらいは読んでおかなきゃなぁとあらためて思いました。

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