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5冊読了(8/8〜8/27)

1『銃とチョコレート』乙一

2『コンビニ人間』村田沙耶香

3『夢とお金をガッチリつかむ 金トレ!! 』リベラル社

4『アリバイ崩し承ります』大山誠一郎

5『男脳 女脳 人生がときめく脳に効く言葉』中野信子


本を小説か小説以外かに分けた場合に、最近は少し、小説を読む割合が増えています。
それまでは小説しか読んでこなかった人生だったのですが、昨年の12月あたりから教養になりそうな色々な本を読んでみることにしていたので、そのぶん小説を読む割合が減っていたのですが、それが最近また、小説もよく読むようになってきたのです。

飽き性だからなのか、一つの分野の本とか、一人の作家さんの本をずっと読み続けることができないので、同時進行で色々な本を読んでいます。
小説以外の本を読むようになって、小説を全く読まなかったわけでもないですが、小説以外の本に少し飽きが来ているのかもしれません。
小説以外の本なんてこの世に数多あるのに、大きくカテゴライズするとそれ全部に飽きているようになるのが不思議です。

小説に飽きたら小説以外を読み、小説以外に飽きたら小説を読む、という具合に、良い塩梅でやっていきたいですね。
というか最近それが良い塩梅になってきているのです。
一年間で読む小説の冊数が、たぶん今年は例年に比べて多いです。
小説以外の本を読むようになって、小説を読む時間や集中力も増えたみたいです。

普通だったら減りそうですけど、なんかこういうことありますよね。
一つの作業だけをしているより、その作業が飽きた時のために別の作業も用意しておくと、結果的に片方の作業だけを見ても効率的に捗っていること。
だから仕事でもなんでもそうですけど、なにか一つのことに集中したいけどどうも捗らない時に、それに近いことでもう少し気軽にできることとかを代わりにやり始めちゃうというのも有りなのかなと思いました。


さて、
1は乙一さんの本です。
かなり久々に読みました、乙一さん。
色んなペンネームで作品を書かれていますが、全部含めて久々に読みました。

乙一さんは初期の作品は結構読んでいました。
『GOTH』『ZOO』『暗いところで待ち合わせ』『失はれる物語』『小生物語』などがとても好きです。
初期はホラー寄りなミステリーが多かったんですかね。
僕はホラー小説としての評価はよくわからないんですが、ミステリーとしてどれもとても衝撃度が強くてどれも傑作だなと思っています。
『小生物語』は乙一さんの日記みたいな作品で、ゲラゲラ笑いながら読める本でした。

そんな乙一さんが、子供向けのファンタジーミステリーを書かれたということで、発売当初から、これはいつか読まなくちゃと思っておりました。
その年のミステリーランキングの上位に入っていて、ずっと気になっていたんです。
発売されたの15年ぐらい前ですね。
なんでこんなに読まなかったんでしょうか。
特に理由はないんですけど。
このたび思い立って、読んでみました。

やっぱり文章が繊細ですよね。
柔らかい描写と鋭い描写のバランスの妙というのか、久々に乙一さんの文章の繊細さを体感しました。
この作品は年少向けのファンタジー作品なので、通常なら漢字で書かれている単語の半分ぐらいがひらがなで書かれていました。
それは単純に読みにくくて嫌だったんですが、乙一さんの文章の良さを妨げるほどのものではなかったです。

幼い少年が主人公で、街に出現する謎の大泥棒・怪盗ゴディバを捕まえるというストーリーも、子供がワクワクできるような内容になっていて良かったです。
もちろん大人が読んでも面白いミステリーにもなっていて、器用な作家さんだなぁと改めて思いました。

ただわりと全体的に暗いというか、嫌なキャラクターも何人か登場するし、主人公の少年が結構悲惨な目に遭うし、それが彼の健気さや親子の愛情みたいなハートフルな要素でカバーできるほどではなくて、なんか全体の印象としては嫌なお話でした。
でもミステリーとしてはやはり衝撃的な部分が多くて、一筋縄ではいかないストーリー展開が楽しかったです。

子供にお薦めかというとそうでもないし、大人に薦めるにしても読む人を選ぶなぁという感じでした。
僕のように初期の頃からの乙一さんファンだったら楽しめるんじゃないかと思います。


2は芥川賞受賞作です。
ここ数年の芥川賞受賞作品の中でも、なにかとこのタイトルをよく聞くような気がします。
文学作品の中では特に、それだけ多くの人に受け入れられてる作品なのかなと思っていました。
確かにキャッチーなタイトルだし、どんな内容なのか気になりますよね。

主人公は18年間ずっと同じコンビニでアルバイトをし続けている女性です。
子供の頃から周りの人とどこか感覚がズレていると自分でも感じていて、学校でも家庭でも変わり者扱いされて生きてきた彼女が、18歳の時に始めたコンビニでのアルバイトで、ついに自分の居場所を見つけます。

やっと自分が普通でいられる場所を見つけ、家族も安心していましたが、そのまま18年間もそのアルバイトを続けているとなると、さすがにまた周囲の目も変わってきます。
本人はそれの何がいけないのかわからないまま過ごしているのですが、ある日、新人のアルバイトで、彼女に負けないくらいの変わり者の男性が入ってくることで、彼女の心境や生活に変化が起こる、というような内容です。

これはものすごく面白かったですねぇ。
ポジティブに感動できる一冊でした。
読んでいてずっと楽しかったです。

序盤に主人公の子供時代の変わり者エピソードが2つほど語られるのですが、その時点からして面白くて、自分とは全然違うタイプの人種で全く共感できないタイプの主人公だなぁと感じながら読み進めるのですが、途中からだんだん彼女に愛着が湧いてきて、応援したい気持ちになっていって、気づいたら自分も彼女に近いタイプの人間なのかもと感じ出すんですね。

たぶんそれは多くの読者がそうだと思うんですよね。
それで、普通って一体なんなんだろうと疑問に思う主人公に対して、ガッツリ共感してしまっていて、そういう主人公の心境に引き込まれる引力みたいなものをこの物語とその描写に感じました。

この個性的な主人公のキャラクター造形が素晴らしくて、考え方や喋り方や行動の全てが、確かにこの人ならこうだろうなぁって納得できるんですよね。
彼女がある人物と自宅で話していて、相手が黙って泣き出しちゃうシーンがあるんですけど、それを彼女は「暇になった」と捉えて、冷蔵庫からプリンを取り出して、泣いている相手を見ながら食べ始めるんですね。

そこがめちゃくちゃ面白くて、こんな異様な行動を取る人はいないと思うんですけど(もちろん本人は異様な行動を取ってるつもりなんか微塵もないんですけど)、でも読んでいるこちらとしては、確かにこの人ならこうするよなぁと納得できるんです。
そこに作者の、登場人物への憑依の仕方というか、しっかりキャラクターを作り込んでいるんだなぁという手腕を感じました。
村田沙耶香さんの別の作品も読んでみたいです。


3はお金の本です。
コミカルなイラストでもしっかり学べる系のこういう本は面白いですねぇ。

貯金とか節約とか資産運用に関して無頓着な姉弟の元に、死んだおばあちゃんが豚に姿を変えて現れます。
おばあちゃんは生前、この二人の孫のお金へのルーズさを心配していて、死の間際に豚の貯金箱に自分の魂を入れていたそうです。
そしてこのたび、そのまま豚のキャラクターに姿を変えて二人の前に現れたみたいです。
そして二人にお金についての知識を色々教えてくれる、というお話です。

まあ、そんなストーリーを気にするような内容の本ではないんですけど。
とにかく色んなお金の知識が書いてある本で、イラストも多いけど情報もしっかりしていて、隅々までちゃんと読むと結構ボリュームがあって勉強になりました。

この手の本を最近よく読んでますが、与えてくれる知識は同じでも、それに対しての色んな捉え方や表し方があって面白いです。
数多く読んでいると、国の社会保険がかなり手厚いので無理して生命保険には加入しなくて良いとか、賢く資産運用していくにはただ貯金するより安全な株式投資をやった方がいいとか、多くの人が共通して主張していることが浮き彫りになってきて、やはりそれが正しいんだろうなぁと思います。

最終的に決めるのは自分なので、何かお金についての判断をする時に迷ったり困ったりしないように、こういう本を読んで知識を蓄えておいた方がいいなと改めて思いました。


4は連作短編ミステリーです。
浜辺美波さん主演でドラマ化もされていたみたいですね。
この主人公が浜辺美波さんってぴったりだなぁと思いました。

タイトルの通り、本格ミステリーの中でもアリバイ崩しに特化した作品で、さらに安楽椅子探偵ものとも言えます。
安楽椅子探偵というのは、ミステリー小説の探偵役となる人物が、事件の捜査や事情聴取などのためにあちこち所定の位置から動いたりはせず、捜査員や関係者などから話を聞くだけで事件の謎を解いてしまう、という本格ミステリーの中の様式のことです。

県警の捜査一課の新米刑事さんが、自分の担当する事件の解決に難航している時、休日にある時計店を訪れます。
時計の電池交換をするために入ったお店でしたが、店内の壁に「アリバイ崩し承ります」という張り紙が貼ってありました。
ちょうど事件の容疑者のアリバイ崩しに難航していたので、半信半疑ながらその時計店の若い女性店主さんに事件の詳細を話してみると、彼女は持ち前の推理力でたちどころに事件の謎を解いてしまいます。
それから新米刑事さんは、事件の容疑者のアリバイ崩しに悩むたびに、この時計店を訪れて彼女に事件解決を頼むようになる、というお話です。

やはりこういうミステリー短編集は面白いですねぇ。
初めて読んだ作家さんでした、大山誠一郎さん。
『密室蒐集家』などで有名な方です。
なんとなく、乾くるみさんや太田忠司さんと作風が似ているかな、と思いました。
物語の主題として、犯罪のトリックの緻密さに重きを置いた本格ミステリーを多く書かれている作家さんですね。

全部で7つの事件、つまり全7話が収録されているのですが、前半で提示されるのがどれもとても魅力的なアリバイトリックの謎なんですね。
それを女性店主が一度話を聞いただけで、「時を戻すことができました」と言って後半の解決編に突入するのですが、読者としてはおよそ想像もつかないようなトリックを暴いていくので面白いです。

安楽椅子探偵ものは、そのフェアさが一つの醍醐味と言えます。
探偵役が事件の話を聞くだけですから、それはつまり読者と同じ情報しか与えられていないということです。
読者も同じ条件を与えられているはずなので、探偵役の人物と同程度の推理力を持っていれば、同じように事件を解決できるはずなんですね。
だからある意味、犯人vs探偵役、という構図でもあり、作者vs読者、という構図も成り立つミステリーなのです。

まあそうは言っても、読者がどれだけ頭を働かせて推理したとしてもこんなトリックわかるわけないのです。
なんとなく、こういうニュアンスかな、と思うことがあってそれがたまたま当たっていたとしても、その回答に確信が持てるほどの証拠や、物語中の伏線とかをすべて拾うことなどほぼ不可能です。
短い物語の中に、それぐらい緻密に練り上げられたトリックが応用されているんですね。

この作品は2019年の『本格ミステリ・ベスト10』のランキングで1位になった作品です。
年末に発表されるミステリー小説ランキングで『このミステリーがすごい!』というのもあるのですが、そちらでは15位だったそうです。
『このミス』は、本格ミステリーに限定しない、総合的なエンタメ要素を含んだミステリー小説のランキングなので、なんとなくこの2つのランキングの順位は納得だなぁと思いました。

続編が書かれているのかしら。
書籍化されたら是非読みたいですね。


5は中野信子さんの「カリスマの言葉シリーズ」の本です。
このシリーズは色んな著者の方が書かれていますが、中野信子さんのものだけ読んでいってます。
読んでないのがもう1、2冊あるので読破してしまいたいなと思います。
また新しいのも発売されていくかもしれませんが。

脳科学者の視点から、人生の悩みの解決のヒントになるような言葉をたくさん与えてくれる本です。
抽象的なポエムみたいな言葉で叙情的に迫るのではなく、科学的に証明されている脳のしくみや男女の脳の違いを提示することによって、この悩みはこう捉えるといい、脳はこうなんだからしょうがない、みたいな、悩みが少し軽くなるような知識を教授してくれます。

中野信子さんの本を何冊も読んでいるので、別の本で読んだような内容の知識や言葉も出てくるのですが、何度も読むことで知識が深まるし、既に知っているようなことでも改めてへぇ〜と感心してしまいます。
あとこのシリーズは手触りがよくていいです。

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