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「STAR TREK」の思い出

 「STAR TREK」という言葉を初めて聞いたのは、中学生の時だった。ある日の国語の授業中、先生が急に、「いま深夜にSTAR TREKやってるから観ててさ~」とかなんとか、雑談をはじめたからだった。

 先生がそういう番組を観ているのに少し興味を持ったし、かなり面白いんだろうな~というのも伝わったけど、「そんな時間まで起きていて……だって観終わったら2時とかだよね…?それで朝8時頃に学校に来ているんだなぁ…大変じゃないのかな…眠くないのかなぁ…?」と思った。

 それから何年か経ち、メールで結婚の報告をする機会があった。夫もSTAR TREKが好きなので、そのことも書いたのだけど、わたしは「スタート・レック」と書いてしまったのだった。アルファベットではなく、カタカナで。「先生、夫もスタート・レックが好きな人なんですよ~!」みたいな感じで……。

 夫からSTAR TREKの話を聞いた時もすぐに、「国語の先生が言ってたやつだ!」となったのである。でも、当時、タイトルと話を聞いただけだったので、スタート、で区切るのだと思い込んでしまっていた。

 すると、先生からの返信に、『「STAR TREK」だよ』と書いてあり、初めて、字面で正しく認識することができたのだった。この時、かなり驚いたのを覚えている。なにしろ、完全にスタート、で区切っていたので……「一歩を踏み出そう!始めよう!」みたいなメッセージもある番組なんだな~とイメージしていた記憶もある。当時はインターネットはなかったので、今のように検索することもできず、思い込んでしまっていたから、たとえ新聞で確認したとしても気付かなかったのではないか。きっと、「スタート、スタート…」と思いながら番組名を探すような気がする。

 というわけで、大人になってからも、夫とSTAR TREKの映画を観に行ったり、DVDを観たりすると、いつもこのエピソードを思い出してしまう。

 わざと間違えたわけじゃないとはいえSTAR TREKファンの先生に申し訳なかったと思いつつ…考察的なことを書かせてもらうと、人間の五感という観点から考えた時、先に聴覚で認識してしまった言葉を後で視覚によって正しく認識し直した体験、でもあると、書いていて思った。

 また、連想することとして、何かを調べようと思っても、ど忘れしている場合や、その言葉を読めるか、書けるか、できなければ、調べようがないとか、メロディーは思い浮かぶけれど、曲名やアーティスト名がわからないので検索できない、みたいなことがあげられると思っている。それが何だと聞かれると、うまく文章化できないのだけれど、五感というものは、それぞれが互いに補完し合って認知をうながすこともあるのだな~とか考えていると、なかなか興味深い。

 楽器の練習も、わたしの場合、楽譜を見る方だし、フルスコアを読み込んだりしたこともあるので、そのあたりについても考えてみたくなっている。

 それにしても、結婚の報告をしたにも関わらず、また教えてもらっちゃったんだなぁ…と思うと、書いていて涙が出てしまった。でもそれはわたしの側の気持ちで、先生はSTAR TREKのファンなのだから、教えるというより、おいおい、スタート・レックじゃねーよ、という気持ちもあったのかもしれない。

 先生は、授業も雑談もキャラクターも本当に面白い人で、憶測ではあるけれど、自分が面白いとか楽しいと普段から思っていることを、授業でも雑談でも話していたんじゃないかとか、自分にとっての楽しいこと・面白いことは何なのか?ということなど、やはり大人になった今でも考えさせてくれたり、学ばせてくれる存在だ。

 雑談は他にも、フロイトの話や、エディプス・コンプレックスの話になったこともあり、わたしが心理学にはっきりと興味を持つようになった第一歩ともいえる出来事だ。そのことについても、またあらためて書いてみたいと思っている。

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