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朝の光とセロトニン

毎晩、ふわ〜っとあくびなどしながら、自然に眠りにつけたらいいけれど、私の眠気は、薬を飲むまで、やってこない。「一日を終えよう」と自分でリセットが必要だ。

寝る前に薬を飲み、布団に入り、静かにヒーリング音楽をかけて日記を書いていると、ようやく眠りに落ちる、という日課だったが、この春ごろから、そうはいかなくなってしまった。
おそらく、忙しすぎて、頭も体も疲れきってしまったのだろう、一回の服薬上限量を飲んでも、効かない。

「今日だけ、特別に」と言いながら、さらに一錠追加して眠りにつく毎日に、さすがにちょっと、焦りはじめた。
薬の副作用が出やすく、今の薬が効かなくなったら、他、もう選択肢がないためだ。


ある日、テレビ番組で、睡眠のことが取り上げられていた。
朝の光を浴びることで、脳内にセロトニンが作られ、それがちょうど夜になると、今度はメラトニンが作られるようになり、睡眠が促されるようになる、というもの。

な〜んだ、と今更ながらの内容に、少しがっかりしてしまった。
そんな基本中の基本。神話のようにさえ思えてしまう。
どうせ私には効かないのだ。

でも。まてよ。
そういえば、最近、いやここ何年も、もしかしたら十年くらい?
この神話を試していない。
もしかして?


というわけで、翌朝、洗顔を済ませ、パジャマのままベランダに出てみた。
まだ、生まれてほやほや感のある朝日と、ぴちっと張り詰めた空気が、混じりあい、どんどん柔らかに成長し、一日を作り出していく、そんな最中に立ち会っているような感覚、とでもいうのだろうか。
少しひんやりした風が、優しくほおをなでていく。

深呼吸して、そしてなるべく大きく目を開けてみる。
いいね、いいね!
目からどんどん光を取り込むイメージをしながら、いままさに私の脳内ではセロトニンが作られてるのだ、と思うと、さらに気持ちがよくなる気がするのは不思議だ。


それなのに、何事も、コロっと忘れてしまう自分が恐ろしい。
夜、そろそろ就寝、と思っていたとき、ふわ〜、とあくびが出た。
あれ?薬もまだなのに、あくび?
そう意外に思った次の瞬間、ようやく朝の、あの清々しい出来事を思い出したのだ。
もしかしてこの眠気は、朝の効果?


その日から、薬の追加なしで、眠れるようになった。
そしてさらに、あの気持ちよさが癖になり、朝のベランダから一日をスタートさせることが、すっかり日課となり、楽しみになっている。

ある日はコーヒーを飲みながら。
ある日は歯磨きをしながら。
ぼんやり、でもしっかり目を見開いて、空を見つめて光を取り込む。

この、特上の時間を逃すまいと、いやいやだった起床が、すんなり起きられるようになったことも、嬉しい。
幸せホルモン、恐るべし!


でも、病気が重かったころは、全く効果が現れなかった。
医者に言われ、藁にもすがる思いで朝の散歩をしていたころもあったけれども、歩けば歩くほど、マイナス思考になり、辛くなるばかりのころも、あったのだ。

病は気から、という言葉があるけれど、「気の持ち方」って大切なのだなぁと感じる。
ただ単に、聞いた治療法を行うだけではなく、病気を知り、受容することが大切だ。
どんな効果的な治療も、自分の中で、病に対する受け止めができているかで決まる気がする。

そう思えるようになった、うつ22年生。
卒業はないかもしれないけど、この先も、きっと多くのことを学び、発見を重ねながら、生きていくのだろう。
人とはちがう歩みを、楽しんでいけるようになれたら、最高だね。







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