040 | 旅するルイ・ヴィトン展を見に行った



しつこく前回のノートの続き、連休3日目。本郷からまた少し走って麹町の「旅するルイ・ヴィトン展」を見に行った。

麹町なんて官庁街っぽい所に、ミュージアムとか美術展が催せる施設あったっけ? 私は自転車だから関係ないけど、公共の交通機関で来るのはちょい面倒と言うかお客さん呼べる? 周囲に商業施設は、豪奢なホテルを除けば賑やかで人出がある場所ないよ。そのへん考慮してか、無料のシャトルバスが出でるそうだ。

(数日前、別の場所でフライヤー貰って気にはなっていた)

多少疑問に思っていた。公式サイト見ると、この展示が催されてる建物名が「旅するルイ・ヴィトン展特設会場」とあるだけ、場所のイメージを持てないよ。送迎バスまで出してるのに不自然だ。
と、実際に来て理解した。建物自体その展示のために建てた特設だから、そのまま “旅するルイ・ヴィトン展特設会場” と名乗っていたのだ。

表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京は、毎度入場無料な上に撮影も可ながら、海外アーチストの企画展や、見応えありまくりのインスタレーションを催してて太っ腹だと思いつつ、そこでの企画展がしばらく無かった。どーしたのかな? と思っていたら、今度は建物から建てちゃう展示ですか。例によって入場無料なのは分かってたけど、その上また撮影フリーだし、恐れ入る。

言ってしまうとこの展示は、六本木辺りの美術館で催したら、入場料1800円でも毎週末行列必至であろう見応えだった。それをハコから建ててロハでお客さん入れちゃって撮影もOK。老舗鞄メーカーの心意気か、ブランド大手の販促活動やイメージ戦略はスケールがパない。



旅するルイ・ヴィトン展は、鞄メーカー ルイ・ヴィトンの歴史を、その製品から紹介する(フライヤーには)“エキシビション”となっている。ではタイトルの 「旅する」は何?
エントランスのミュージアム・ショップとカフェのスペースを抜け、屋外通路から渡った展示棟にまず鎮座するのは、誰もが知るロゴとモノグラム。





最初は、一介のカバン屋さんからスタートした草創期のコーナー。バトルアックスみたいに強そうな、当時の道具(鉋)がいかす。


超格好いい昔の請求書。





19世紀末、旅行がの時代は、巨大なカバンて言うかコンテナのようなトランクだ。映画「タイタニック」頃の世界観?


展示は幾つかのコーナーに分かれて連続し、プレートで解説される。


サマードレスなどの船上リゾートファッションと鞄。海運や冒険航海ではない客船の登場で、レジャーやリ・クリエイションとして、お金をかけて楽しむ「旅行」の概念が広く行き渡る。それに必要な運搬装備=カバンやトランク、の歴史は旅行の歴史と言い換えられる。





鉄道網の発達で、旅行は陸上でも手軽になる(車窓を模したディスプレイに旅行鞄)。


要所要所に立ってるおねーさんの説明では、鉄道旅行では座席の下にスペースができるから、その足元に置ける大きさの、上向きに口が開くタイプの鞄が重宝されたそうだ。





鉄道の次にモータリゼーションが到来し、自動車での旅行も可能になる。


「流線型の自動車の上や後ろには、ワードローブや形の崩れない帽子を入れたヴィトニット・キャンバスやモノグラム・キャンバスのカートランクが備え付けられました・・」


ピクニックの食器セット。


コーヒーや紅茶道具のセット。機能的な収納を可能にする、鞄メーカーヴィトンの職人の技術も想像される。





遂に旅行は空路の時代を迎える。


空の旅は身軽さが身上だ。





鞄は、あらゆる旅や移動で様々なものを運ぶ。書籍や香水、なんでも詰める。


タイプライターとかライティングセットとか。


旅のオペラ歌手かって物量と豪華さ。


現代日本の街中でも見かけるスタイルの鞄(2009年製)。





ルイヴィトンの製品やデザインが日本と縁がある事は誰もが知るところだろう。


そんなものまで作ったのかってな、茶道のトランク。


渡欧中に板垣退助が買い求めたトランク。日本人のブランド志向の先駆け?


村上隆氏とのコラボレーション。





展示は10ほどからなるコーナーと言うかステージに分かれていた。ルイ・ヴィトンの草創期に関する展示にはじまり、船旅、鉄道旅行、自動車旅行、飛行機旅行、更に絵描きや音楽家、文筆家用の鞄やトランクの展示、日本との関わりなどなど、それぞれのコーナーが劇場空間的に凝っている。
客船の甲板や、列車内の情景を再現したり、巨大な飛行機を模したオブジェクトを配したり舞台美術的だ。

確認したら、キュレーターは手堅くパリ市立モード美術館館長のオリヴィエ・サイヤールさんという、ばりばりファッション畑の人が担当しつつ、ディレクションとそのセット・デザインまでを、オペラの演出家ロバート・カーセンさんが担当していた。なるほど演劇的なのも頷けるし、その演出と言うか仕掛けで、展示を見る事自体が時空を次々と旅するようで楽しかった。
むしろこのように会場が特設なのは、その劇的な展示を行うのに、既存のミュージアムや美術館の企画展ではスケールが合わないからかも知れない。


期間終了したら壊してしまうのもったいない。お金とって常設の「ルイ・ヴィトン ミュージアム」にすればいいのに、・・と言っても展示品の方が、本国から引っ張ってきた超貴重品だったり、他の展示品も合わせて世界を巡回するのだろうから常設は無理だろう。
ちなみにタイトルに冠された VOLEZ , VOGUEZ , VOYAGEZ は、空へ、海へ、彼方へ、という意味だそうだ。展示された旅行鞄たちも、21世紀になって再び地球上を巡っている。

会場がなぜ麹町かと思ったら、1978年に日本初のルイ・ヴィトンのお店ができたのが東京都千代田区紀尾井町で、それに隣接するかたちで選定されたそうだ。
http://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage

(走行距離 40.26km)