キリスト教をモチーフにしたエコフェミニズム映画 - mother!
ダーレン・アロノフスキーによる日本未公開映画だ。
自然に取り囲まれた一軒家に住む詩人の夫とその妻。
突然の訪問者たちを夫は寛容に受け入れて招き入れる。徐々に不安が大きくなる妻。そして事件が起きる。やっと事件が落ち着いたところで妻が妊娠し、夫は新しい詩を完成させる。喜びも束の間、夫の詩に狂信的な訪問者たちは増え続け、妻の心を蝕んでいく…
一般的な解説では、夫=神であり創造主、妻=地球、訪問者=原罪を背負った人間たちと記載がある。
実際に夫は、自分は神だと言い切っている。
しかし最後、妻の愛=心臓を欲しがるのだ。君の愛が欲しい、と。
果たして神という存在があるとして、彼は愛を搾取するだろうか?
妻が母なる大地であり、子孫繁栄の象徴とするならば、それを搾取しているのは神ではなく、近代科学の発展により神に成り代わったかのように地球を我が物とする人間ではないか?と私は思うのだ。
これはエコフェミニズム映画なのだろうか。
作中ではアダムとイヴ、カインとアベル、イエスの誕生などがモチーフになっているので、夫が神であり創造主と位置付けるのもありだと思う。
その場合は、キリスト教への皮肉映画かもしれない。"罪を憎んで人を憎まず、赦す"という精神が、環境破壊と女性搾取に繋がっている、というとんだ皮肉にも思える。
監督が伝えたかったのは、地球環境破壊について、というのは間違いないようだ。
また、"特定の人々へ向けた映画"でもあるらしい。
かなり含みのある表現だが、
環境を支配して破壊し、何度でもやり直せると思っている愚かな人間たちに向けられているのではないだろうか。これは大いに内省の余地があるだろう。
一方で、身勝手な自分の欲望のまま、妻の愛を搾取する夫が、何度でもやり直せると思い、愚かにも何度でも搾取する、そして女性は何度でも捧げる。そして死ぬ。そういったことを繰り返す人々への警告とも捉えられる。
これは、母なる大地への冒涜と母性の搾取を伝える映画かもしれない。
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