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クールジャパンにおける無知さと未成熟さについてー日本的想像力の未来(東浩紀)

アート、映画などの分野から日本の未成熟さが持つ可能性についての討議とプレゼンをまとめた内容。

【目次】 
はじめに——東浩紀 
Ⅰ 「日本的未成熟」の系譜——キース・ヴィンセント 
Ⅱ アート界における“クール・ジャパン”の戦略的プロデュース法——村上隆 
Ⅲ 日本映画と未成熟——黒沢清 
Ⅳ 「かわいい」の本質——宮台真司 
Ⅴ [討議]日本的未成熟をめぐって 
    ——キース・ヴィンセント+黒沢清+宮台真司+村上隆+(司会)東浩紀 
Ⅵ クール・ジャパノロジーの不可能性と可能性——ジョナサン・エイブル 
Ⅶ プロレタリア文学のクールさの可能性——ヘザー・ボーウェン=ストライク 
Ⅷ ヨーロッパにおける「クール・ジャパノロジー」の兆し——シュテフィ・リヒター 
Ⅸ 一九九二年以降の日本のサブカルチャー史における意味論の変遷——宮台真司 
Ⅹ トランスナショナルな「理論」の構築に向けて——毛利嘉孝 
XI [討議]もう一つの日本学 
    ——東浩紀+ジョナサン・エイブル+ヘザー・ボーウェン=ストライク+宮台真司+毛利嘉孝+シュテフィ・リヒター+(司会)クッキ・チュー 
[総括]ポップカルチャー言説の「視差」から考える——河野至恩 

それぞれの箇所で特に興味を持った点を下記にまとめた。

⬛︎『かわいい』という言葉
本来であれば有害だったはずのものが人畜無害化することを指摘していた点が面白かった。女子高生達が性の解放を求めて『かわいい』という繭に包まれ街へ出る。
『かわいい』を操る彼女たちにとっては、援助交際の相手のオヤジだって『かわいい』のだ

⬛︎今生きている世界は所詮偽物
近代資本主義が進むにつれ所詮は日本はアメリカの偽物でしかない、現実は偽物だ。と、ショボい現実と向き合うことに疲れてしまいここではないどこかにという『現実の虚構化』を行うなかでオウムという虚構を現実化するハルマゲドンが起き、世の中は一気にポストハルマゲドンカルチャーへ移行した。
ポストハルマゲドンとはエヴァンゲリオンを出発点としたセカイ系、バトルロワイヤル系に分かれる。

『虚構を現実化』するセカイ系。有り得たかもしない○○な世界)
『現実を虚構化』するバトルロワイヤル系。(この世は所詮ゲームだ)
バトロワ以外にもデスノートとかも現実を虚構する系カルチャー。

⬛︎吉本ばななのカツ丼論争
アメリカ人はカツ丼という食べ物に付随する懐かしさなどの意味内容を理解することなくクールと称しており、起源を知らず歪めたフェティッシュなもの。もはや日本人でさえその歪みを認識することが困難。
商品として消費されるか、日本文化の正しい認知として広めるか

⬛︎蟹工船=クール?
2008年頃の蟹工船の再ブームについても言及されていたが、結局この蟹工船=クールな再ブームも、商品として消費されてしまうことになった。社会に問いを立て、社会を動かす力のある小説の可能性をただ消費してしまった。それは我々日本人の課題ではないだろうか。


日本人がいかにしてアメリカという父親から脱却を図ろうとしてきたか、戦後カルチャーの変化が教えてくれる。
私たちは常に息苦しい世界で生きている。
近代資本主義が進むにつれて生きづらい世の中に世界全体が変化する中で、どの国でも起こりうる虚構と現実の問題。
アメリカの支配下で思春期の男の子のようだと評された日本が、未成熟なままであるがゆえに生み出したカルチャーたち…

私は、今回の東京オリンピックに向けてBBCが制作した日本のイメージ映像を観て、残念な気持ちでいっぱいになった。
世界と日本人が持つ自国のイメージには大きなギャップがあると気付かされたのだ。

何故こんな風になってしまったのか?
その仕組みが本書で少しばかり見えてきた気がする。
これからどう日本を知ってもらうかは自分たち日本人次第であることは間違いない。

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