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鉛温泉藤三旅館 “湯治部”は異世界への入り口【日本列島旅のススメ#1】

■「湯治宿」泊まったことありますか?
「大地から湧き出る湯に浸かると元気になる」という温泉の根源的な力を直接感じられる場所、湯治宿。
ちょっとした異世界への入口、湯治宿。
そんな湯治宿の魅力を存分に教えてくれるのが、鉛温泉藤三旅館の湯治部です。
宮沢賢治ゆかりの温泉宿でもあります。

※日本列島旅のススメの概要・凡例は「日本列島旅のススメ〜プロローグ〜」をご参照下さい。

【今回の基本情報】
ススメの対象:鉛温泉藤三旅館湯治部
所在地:岩手県花巻市
訪れた年月日:2007年8月27日

■「湯治」とは
一定期間温泉地に滞在して、病気の治療や健康の回復を図るという行為。
日本では古来から行われていました。

■夜到着して初見の衝撃
その時、私は友人Yちゃんと2人で、青春18切符を使って東北一周するという旅をしていました。
その旅の初日に宿泊したのが藤三旅館でした。
たまたまTVで見て気になり、宿泊予約していました。

始発の電車で家を出て、上野から普通電車で一気に宮城県まで目指します。
8時間くらいで着きます。
8時間!?と思われそうですが、「移動が楽しい!わくわくする!」というタイプの方には普通電車の旅、面白いと思います。
乗り換えを攻略していく感じもまた良いです。
体力は必要です。

途中で松島に立ち寄り、遊覧船で松島湾を眺めながら購入しておいた駅弁を食べ、カモメと戯れたら、急いで盛岡へ向かいます。
花巻駅に着いたらもう真っ暗になっていました。(遅くなる旨は宿へ事前に連絡しました。)

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そこから路線バスで宿へ向かいます。
山道を、二人しか乗っていないバスが、ガーーーと走行していきます。
外は真っ暗だし、街中を走るバスとはスピードも違うし、途中のバス停の名前も「山の神温泉〜」とかだし、ひとりだったら怖くて泣きだしたかもしれません。

ああ、異世界へ行っちゃうかも…と思いながら「鉛温泉」のバス停に到着。
バス停から宿まで看板に沿いながら歩き、藤三旅館湯治部に着いた時の第一印象は、本当に異世界来ちゃったかもな、でした。

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遅くなってしまったので夕食はキャンセルさせてもらい(事前に連絡済み)名湯「白猿の湯」へ向かいました。

■立って入る!「白猿の湯」
今から600年程前に藤三旅館のご先祖が、一匹の白猿が泉で傷を癒しているのを見て温泉の湧出を知ったことが鉛温泉の由来です。
よって「白猿の湯」が藤三旅館の名物と言えます。
深さ平均1.25mの立って入る日本一深い岩風呂です。
珍しい。
基本的に混浴ですが女性専用時間もあります。

浴室は天井が高くて脱衣所から階段を降りて湯船まで向かうスタイル。
その空間に立ち入っただけで気持ち高まりました。

※浴室写真は公式でご確認下さい。
https://www.namari-onsen.co.jp/touji/index.html

私もYちゃんも小柄な方なので、お湯に浸かると頑張って顎をあげている状態です。
お湯のなかにドブンと、まさに“身体ごと浸かる”感じ。
後にも先にもない不思議な感じでした。


■館内と外観
さて翌朝。
お部屋で朝食をいただいて、出発前に館内と宿の周りを散歩しました。

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お部屋の様子いろいろ。
朝食は済んだら各自で廊下に下げたと記憶しています。
誰かがうっかり後から下げたのでしょうか。
部屋の前にポツンと置いてある醤油を発見した時の謎の高揚感は忘れられない。
今はシステムが違うのかもしれないけど(同じかもしれないけど)こういう何でもないことが楽しい思い出になる人間の不思議。

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湯治部には共同利用の自炊場があります。
コイン式のコンロなどの料理道具が揃ってます。
全体的に言えることですが、古いけれどきれいに保っています。

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種類豊富な売店があり、主のようなおばあさんがいらっしゃいました。
現在は縮小してしまったみたいです。

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現在は「湯治部」ですが、この頃はまだ「自炊部」でした。

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本館は昭和16年建築のけやき造りの3階建。
公式サイトが「千と千尋の神隠しに登場する湯屋のような…」と表現していますが、本当にその通りです。
夜に到着したので余計に時空超えちゃったかと思いました。

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宿は豊沢川に沿って建っています。
写真中央の湯治棟は2015年に取り壊されリニューアルしたとのこと。
貴重な写真になってしまったのかもしれません。
でもまだ残してくれている湯治部がある!!
ありがたいことです。


■変わっていくからこそ
藤三旅館湯治部は建物がノスタルジックというだけではなく、もっと普遍的に懐かしい感じがしました。
それこそ動物が本能的に温泉に浸かって傷を癒すという感じが、なんだか納得できた。
宮沢賢治の童話の世界は、人間と動植物を隔たりなく描いています。
そういう人がここに通っていたって、なるほどなあと思いました。

今回紹介した情報は2007年のものです。
現在の様子を公式サイト等で確認しました。
本質は変わりませんが、やはり徐々に変化しています。
特に今現在(2021年)は、検温の実施等のために湯治部の玄関を閉鎖しているみたいです。

その時の状況に合わせて物事が変化していくのは当然のこと。
あらゆるものは今この時も変化の最中なのです。
しかしだからこそ、その時のその場を体験しに行くっていうことが旅の醍醐味でもあると思い知らされます。


★公式Website★GoogleMap★
https://www.namari-onsen.co.jp/index.html


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