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世間知らず

自覚はなかったけど、随分と世間知らずな学生だった気がする。


学生時代から髪色をころころ変えていたので、
なんとなく髪色自由なところが多いという理由で
居酒屋などでバイトをすることが多かった。



とにかく、向いていなかった。

卓番は覚えられないし、提供する席を間違える。
毎日のようにグラスやお皿を割る。


それも、今みたいに人と話すの好き〜!みたいな性格でもなかったので、
接客が嫌でキッチンを選んでいた時期もありました。

ホールがいい!と思ったのにフードコートを選んで、あれ?ホールってなくない?となったことも……
あほなんだ……



そんなわたしだからかもしれないけど、
だいたいパワハラで辞めたり、自然消滅でいつの間にかシフトが無くなったりしていた。

「殺したい」と言われたこともあるし、お客さんの残飯を賄いとして出されて吐いたこともある。
これ、マジです。

バイトで受けたパワハラ史を全部漫画にしたらみんな読んでくれる?



そんな感じでバイト先を転々としていたわたしが、
初めてちょっと長く続けたバイトがあった。

きっかけは、紆余曲折あって、
(また話すと思うので待っててくださいな)

「身を粉にして週5週6で働きたいのでバイトを紹介してください」とツイートした時に、大学の先輩が(紹介料目当てに)誘ってくれたこと。


それがコールセンターだった。ちなみに夜勤。

とにかく、向いていなかった。(2回目)

もう、わたしが社会不適合なんだな?!


滑舌が悪い。そのくせ、耳が悪い。
つまり会話が難しい。


最初の頃、
カツラの会社の夜間の仮受付の電話を取らされ、
「仮受付なので確定ではないです」と伝えるとブチギレられ、
「ふざけるな!お前今すぐ予約取ってこい!今どこにいるんだ?教えろ。嫁に行けない顔になるまでボコボコにしてやるからな?!」と30分ほど怒鳴りつけられ過呼吸を起こしたことがある。


正直、辞めたかった。
でも必死にお金を貯めて自分で生活費を賄わないといけない事情があって、
どうしても辞めるわけにいかなかった。


大抵そういう人は電話の冒頭では
「いやあ、僕も偉い立場なんで……なかなか休みがなくてね……いや、そんな大したことないんですが笑」とか聞いてもないのに自慢話をする(ハゲのくせに)んだ。

そんで、自分の希望が通らないとわかると、
急に女に対して劣等感だかなんだか炸裂させ、
「お前、俺のこと馬鹿にしてるんだろ!」と態度を変える。


その後「お前じゃ話にならない。早く男に代われ!
いいから早くしろ!」と怒鳴ってくる。

そして、大抵、こういう人は誰でもいいから電話を代わらせる、代わらせてやった!言うことを聞かせてやった!という事実に満足するので、温度感を下げてやるために有効だったりする。


本当はバイトしかいない部署だと、「上の人(管理者)に代わります」とか言うのは禁止されていたりもするんだけど。


そして、保留ボタンを押して男性の上司に震えながら交代をお願いした。

わたしはようやく解放され、許可されてもいないのに上階の休憩室に逃げ込んだ。

(いいんだ、あいつわたしより先に死ぬし!ハゲてるし!!)
と自己解決して呼吸を落ち着かせた。


後から通録を聞かされたが、(聞きたくねえよ)
男性に代わった途端に相手は満足したようで、

「いやー、ね、さっきの人本当に話通じなくて困っちゃって!すみませんねお手間かけちゃって笑」
とか上機嫌で話し出す。もう女に取らせるな。

結局話してる内容は同じなのに。
無理なものは無理だって言ってんの。


「もう50年ハゲてるんだって」と上司は言っていた。



コールセンター、「保留ボタン」が何よりも大事。
あとミュート機能。

わたしが後輩に研修する時は
何よりも先にこれを教えていました。
〝できなかった人〟なりの教え方ってもんがあるからね。

時給とデスクワーク目当てでなんとなく電話だけしててそれなりにお金貰えるならあり〜と働きたい方がいたらこれだけ聞いてください。
ミュート機能がない電話機を使っているところは残念ですね……頑張ってください。



話が逸れました。大変失礼致しました。


わたしはコールセンターで働いてから、
初めて固定電話の番号は10桁・携帯電話は11桁と知ったし、
北海道の郵便番号は0から始まり、地域によって番号が割り振られているということを知りました。


学生にとってかなり勉強になる場所ではあると思います。

常識なのかもしれないけど、
学校じゃ教えてくれないんだよね。

苗字の読み方も本当に難しくて、決めつけちゃいけないなあと柔軟な脳みそを持てるようになった気がします。


それから、名前の漢字を尋ねられた時に、
ちゃんと説明できる人でありたいなと思いました。

「ワタナベです」
「漢字ではどのようにお書きしますか?(ナベって字、いっぱいあるし……)」
「ワタにナベです」

全国のワタナベさんへ
難しいかとは思いますが、
わかるように教えてあげてください。


だいたい、電話の相手を人間だと思っていない人が多い。
この記事を読んで電話の相手に優しくしてあげようと思ってくれる人が増えたらわたしは嬉しいです。


受信専門!
という謳い文句のコールセンターをよく見るけど、
色々渡り歩いたわたしからすると、受信の方が大変な気がする。

だいたい、相手は困っていたり要求があってかけてくるわけだから、当然満足しないと通話が終わらない。発信なら要件を伝えるだけ……というのがわたしの数年間で得た認識である。



当時のわたしは夕勤+夜勤の夕夜勤コースで、だいたい17時から朝9時までのシフトで働いていた。

始発までとかじゃないんですよね。
日勤の人が来るまで。「普通の仕事」が始まるまで。
だいたい事務処理の残業があるので家に帰るのは11時頃だった。

「わたしの退勤時間です」というボケで使ったことがあるけど
誰も反応してくれなかったな。めちゃくちゃ面白いだろうが。



そこからお風呂に入って4時間くらい寝て、
また夕方には出勤する日々。

拘束時間内の3時間の仮眠はあってないようなもので、夜勤明けで何も予定がない日は朝に帰っても疲れて1日中寝ないと生きられなかったし、
夜間に時給が高くなるだとかプラスな面もそりゃあるけど、効率がいいんだか悪いんだか今思うとよくわからない。


夜はちゃんと家に帰って寝た方がいいと思う。
それだけで幸せだって忘れちゃだめだな。


当時、幼稚園のすぐ近くに住んでいたので子供たちのはしゃぎ声を聞きながら遮光カーテンじゃどうにもならない明るさの中無理矢理自分を寝かしつけていた。

たしかにこの頃は貯金する余裕はあったし、
収入は1番多かったけど、
本当に戻りたくないと思う時期だ。
いつも体のどこかが痛かったし、不規則な生活で失ったものは大きい気がする。


「夜勤の人はなんでもできるようにならないと!」
と鍛えられたけど、
当然深夜に鳴る電話なんて数本だし、電話番で意識朦朧としているだけでお金が貰えていると考えるなら楽な仕事ではあると思うけど……
世の中の時計の裏側で働く日々の背徳感はわたしには嬉しくなかったな。


夜勤の意地悪なおじさんはいつも自嘲するように
「夜勤をしている人の寿命って短いって言うからね、我々命削ってるんですよ」と嫌な笑いを浮かべて話していた。


ちなみに変形労働とかいう悪魔の契りを交わされていたので、滅多なことがなければ13時間働いたって残業扱いで時給がプラスになることはありませんでした!


さらに掛け持ちをしていた時期もあって、その頃は時々学校に通いながら月に210時間以上働いておりました。今はもう考えられない。

一時、なぜか学生の立場ながら40人ほど在籍するチームのシフト作成までやらされ、任されるようになっていました。


ただ、色んな人がいるなあとか協調性とかチームワークとか、
会社の仕組みとか働き方とか大体のことを教わったのはこの場所だったと思っていて、
わたしがこれを経験せずに学生を終え、社会に放たれていたかもしれないと思うと本当に恐ろしい……。



ちなみに暇な時期にタ●ミーを使って賄い目当てで飲食店で働くというのもとても久しぶりにやってみたけど、あの頃よりは楽しかったな。お皿は何枚か割りました。


髪色が明るいというだけで、働ける仕事はかなり減るし、つまり世間の目もちがうってことらしいけど、

わたしはアイドルという仕事を選んでいる限りは自分が1番可愛いと思える自分でありたいです。


これからもわたしの地獄を笑ってね。
一緒に幸せになろうね。

來世

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