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その視線でなにを見つめてるのか気になる

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    「たったひとり」世界に立つために。たったひとりからでないと、ほんとうには繋がれないから。

記事一覧

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2年前
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星の花びら

雨上がりのある日、水たまりに桜の花びらが積もっていました。 桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは星の屑でした。 昨夜の雨に混じって降って…

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スープとお菓子

「やっちゃったな」と、自転車を引いたおじさんは、私を見て同情するように笑っていた。私はその同情に、首を縦に動かして返した。 歩いて30分ほどの家路を急ぎたいけれど…

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2年前

くじら

ーありがとう。とってもたのしかった。とってもたのしかったんだ。会いたかったんだ。ー 暗い底から水面を見上げていた。きみと共鳴して映るひかりは、宝石の反射のようで…

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2年前
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バナナブレッド

仕事の帰り道は、ときどきコーヒーを飲みに寄ります。だいたいは週のおわりの金曜日、たまに待ちきれなくて水曜日や木曜日に足を運びます。 帰り道といっても、通勤は電車…

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2年前

マーブルチョコ

スーパーで買い物をしていると、子どもがじっとわたしを見ている。親と逸れてしまった迷子だ。 まただ。 親と逸れた小さな子に、わたしはよく見つかる。 既に泣きながら見…

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2年前

カルダモン

きみはぼくの背にトントンと手を触れていた。まるで眠りにつかせるみたいに。きみの頭のなかでは映画のシーンが流れていたのか、いつのまにかリズムがスパイ映画のテーマだ…

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2年前

新月

「きみは扉を見つける。扉を開けたらどこへ行こうか。 観たいものをみせよう。」 きみはそう言ったんだ。 「そんなことを言われてもわからない。自分の望みはわからない。…

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2年前

うなぎ

これからうなぎを食べに行く。 まだ二週間もあるけれど無事に年を越せるお祝いにと。 うなぎは苦手だったはずなのに、うなぎが食べたいと、ある日好みは変わる。うなぎが食…

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4年前

台風の日

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あらしはこない

窓を水滴が伝ってく。 なんの野菜が残っているかな。かぼちゃのスープが飲みたい。うさぎのまんがを閉じて布団からでよう。風のおとが強まる。 「きのうの筍煮たので筍ご…

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6年前

あらしがくる

雨が降り出しそう。摘んだ撫子は七本。 きのうの歩き疲れたままにスーパーへ行く。 切り身じゃないまとめられた半端な鮭、鮭そぼろをつくろうか。 これからあらしがやって…

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6年前
星の花びら

星の花びら

雨上がりのある日、水たまりに桜の花びらが積もっていました。
桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは星の屑でした。
昨夜の雨に混じって降ってきたのかもしれません。昨夜は流星群の降る夜でした。ぼくは、星の屑を掬い、家へ連れて帰りました。
   リリン
 シャランシャラン
小さな音が響き合っています。星屑たちは囁き合っているのかもしれません。

ぼくは、月の光の差す窓辺へ星屑を置

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スープとお菓子

スープとお菓子

「やっちゃったな」と、自転車を引いたおじさんは、私を見て同情するように笑っていた。私はその同情に、首を縦に動かして返した。
歩いて30分ほどの家路を急ぎたいけれど、からだを温めたい。

            *

「いらっしゃい。」

家族へのあいさつかのようにさりげなく、やわらかな声がふわりと届いた。たったひとことの、私だけに向けられた「おかえり」のように。

私は、水を含んで冷たく重くなった

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くじら

くじら

ーありがとう。とってもたのしかった。とってもたのしかったんだ。会いたかったんだ。ー

暗い底から水面を見上げていた。きみと共鳴して映るひかりは、宝石の反射のようで、色とりどりの星が瞬くようだった。

氷のような冷たい粒が降ってくることもある。鋭く透明で、水面を裂くように落ちてくるけれど、ここは暖かいからほろほろと解けていく、ダイヤモンドの砂が降ってくるように。
きみは知っているのだろうか。暗い底に

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バナナブレッド

バナナブレッド

仕事の帰り道は、ときどきコーヒーを飲みに寄ります。だいたいは週のおわりの金曜日、たまに待ちきれなくて水曜日や木曜日に足を運びます。

帰り道といっても、通勤は電車なので一度途中で下車するのです。職場の最寄りでも家の最寄りでもない駅を、降りたところに小さな店があるのです。

改札を出て階段を登り左手の道を往くと、コーヒー豆の香りとすれ違います。

「こんにちはー」
「こんにちはー」

この小さな店が

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マーブルチョコ

マーブルチョコ

スーパーで買い物をしていると、子どもがじっとわたしを見ている。親と逸れてしまった迷子だ。
まただ。
親と逸れた小さな子に、わたしはよく見つかる。

既に泣きながら見つめてくる子もいれば、「どうしたの?」というこちらの問いに「おかあさんがいない」と応えた途端に涙を流しはじめる子もいる。
なんということなさそうに「おかあさんいないなー」と話しかけてくる子もいた。

「探そうか」と手を出す。手を引くその

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カルダモン

カルダモン

きみはぼくの背にトントンと手を触れていた。まるで眠りにつかせるみたいに。きみの頭のなかでは映画のシーンが流れていたのか、いつのまにかリズムがスパイ映画のテーマだ。ぼくにはすぐにわかった。

「きょうはどこを彷徨っていたの?」 

ぼくの背でリズムを取りながら、きみは尋ねる。きみの手は、つめたくない。

ぼくはきみに応える。

「お囃子の音が好きなんだ。夜空に連なる提灯も。
いつでもそこに帰りたいん

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新月

新月

「きみは扉を見つける。扉を開けたらどこへ行こうか。
観たいものをみせよう。」
きみはそう言ったんだ。

「そんなことを言われてもわからない。自分の望みはわからない。
そしてきみは、姿を見せない。」

どこまでも繁る木々のなか、歩く素足の足もとは、踏み締めるたび鋭く刺さる小枝、くすぐるように触る濡れた葉。なにか光って見せるものは透き通るように白い花のベル。

森を往くぼくの足は、いつでも在処を知って

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うなぎ

これからうなぎを食べに行く。
まだ二週間もあるけれど無事に年を越せるお祝いにと。
うなぎは苦手だったはずなのに、うなぎが食べたいと、ある日好みは変わる。うなぎが食べたいと言い出して、家族みんながまさかと思う。

年が越せることよりもたったいま会えていることがめでたい。あしたはもう会えないかもしれない、それはいつでもとなりあわせ。こうして窓ぎわでミルクティーを飲んでるすぐとなり。

いまのわたしの手

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あらしはこない

あらしはこない

窓を水滴が伝ってく。

なんの野菜が残っているかな。かぼちゃのスープが飲みたい。うさぎのまんがを閉じて布団からでよう。風のおとが強まる。

「きのうの筍煮たので筍ごはん炊くから」
それなら卵焼きを焼こう。

どこにも行かないのは雨のためでもつよい風のためでもない。

あらしがくる

あらしがくる

雨が降り出しそう。摘んだ撫子は七本。
きのうの歩き疲れたままにスーパーへ行く。
切り身じゃないまとめられた半端な鮭、鮭そぼろをつくろうか。

これからあらしがやってくるのだろうか。雨が降り出した。南風に運ばれる蛙の鳴き声と柿の葉のにおい。雨が入るから、南の窓は開けてられない。