香名♠︎
手紙のように届くように 光画 #写真
みじかいみじかいおはなし
ちいさな記録 雑記帳
「たったひとり」世界に立つために。たったひとりからでないと、ほんとうには繋がれないから。
雨上がりのある日、水たまりに桜の花びらが積もっていました。 桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは星の屑でした。 昨夜の雨に混じって降って…
「やっちゃったな」と、自転車を引いたおじさんは、私を見て同情するように笑っていた。私はその同情に、首を縦に動かして返した。 歩いて30分ほどの家路を急ぎたいけれど…
ーありがとう。とってもたのしかった。とってもたのしかったんだ。会いたかったんだ。ー 暗い底から水面を見上げていた。きみと共鳴して映るひかりは、宝石の反射のようで…
仕事の帰り道は、ときどきコーヒーを飲みに寄ります。だいたいは週のおわりの金曜日、たまに待ちきれなくて水曜日や木曜日に足を運びます。 帰り道といっても、通勤は電車…
スーパーで買い物をしていると、子どもがじっとわたしを見ている。親と逸れてしまった迷子だ。 まただ。 親と逸れた小さな子に、わたしはよく見つかる。 既に泣きながら見…
きみはぼくの背にトントンと手を触れていた。まるで眠りにつかせるみたいに。きみの頭のなかでは映画のシーンが流れていたのか、いつのまにかリズムがスパイ映画のテーマだ…
「きみは扉を見つける。扉を開けたらどこへ行こうか。 観たいものをみせよう。」 きみはそう言ったんだ。 「そんなことを言われてもわからない。自分の望みはわからない。…
これからうなぎを食べに行く。 まだ二週間もあるけれど無事に年を越せるお祝いにと。 うなぎは苦手だったはずなのに、うなぎが食べたいと、ある日好みは変わる。うなぎが食…
窓を水滴が伝ってく。 なんの野菜が残っているかな。かぼちゃのスープが飲みたい。うさぎのまんがを閉じて布団からでよう。風のおとが強まる。 「きのうの筍煮たので筍ご…
雨が降り出しそう。摘んだ撫子は七本。 きのうの歩き疲れたままにスーパーへ行く。 切り身じゃないまとめられた半端な鮭、鮭そぼろをつくろうか。 これからあらしがやって…
2022年4月8日 08:30
2022年2月5日 17:09
2022年2月1日 15:01
2022年1月31日 17:07
2022年1月8日 21:56
雨上がりのある日、水たまりに桜の花びらが積もっていました。桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは星の屑でした。昨夜の雨に混じって降ってきたのかもしれません。昨夜は流星群の降る夜でした。ぼくは、星の屑を掬い、家へ連れて帰りました。 リリン シャランシャラン小さな音が響き合っています。星屑たちは囁き合っているのかもしれません。ぼくは、月の光の差す窓辺へ星屑を置
2021年12月18日 16:48
「やっちゃったな」と、自転車を引いたおじさんは、私を見て同情するように笑っていた。私はその同情に、首を縦に動かして返した。歩いて30分ほどの家路を急ぎたいけれど、からだを温めたい。 *「いらっしゃい。」家族へのあいさつかのようにさりげなく、やわらかな声がふわりと届いた。たったひとことの、私だけに向けられた「おかえり」のように。私は、水を含んで冷たく重くなった
2021年12月13日 18:03
ーありがとう。とってもたのしかった。とってもたのしかったんだ。会いたかったんだ。ー暗い底から水面を見上げていた。きみと共鳴して映るひかりは、宝石の反射のようで、色とりどりの星が瞬くようだった。氷のような冷たい粒が降ってくることもある。鋭く透明で、水面を裂くように落ちてくるけれど、ここは暖かいからほろほろと解けていく、ダイヤモンドの砂が降ってくるように。きみは知っているのだろうか。暗い底に
2021年12月7日 08:06
仕事の帰り道は、ときどきコーヒーを飲みに寄ります。だいたいは週のおわりの金曜日、たまに待ちきれなくて水曜日や木曜日に足を運びます。帰り道といっても、通勤は電車なので一度途中で下車するのです。職場の最寄りでも家の最寄りでもない駅を、降りたところに小さな店があるのです。改札を出て階段を登り左手の道を往くと、コーヒー豆の香りとすれ違います。「こんにちはー」「こんにちはー」この小さな店が
2021年12月5日 13:48
スーパーで買い物をしていると、子どもがじっとわたしを見ている。親と逸れてしまった迷子だ。まただ。親と逸れた小さな子に、わたしはよく見つかる。既に泣きながら見つめてくる子もいれば、「どうしたの?」というこちらの問いに「おかあさんがいない」と応えた途端に涙を流しはじめる子もいる。なんということなさそうに「おかあさんいないなー」と話しかけてくる子もいた。「探そうか」と手を出す。手を引くその
2021年12月5日 08:27
きみはぼくの背にトントンと手を触れていた。まるで眠りにつかせるみたいに。きみの頭のなかでは映画のシーンが流れていたのか、いつのまにかリズムがスパイ映画のテーマだ。ぼくにはすぐにわかった。「きょうはどこを彷徨っていたの?」 ぼくの背でリズムを取りながら、きみは尋ねる。きみの手は、つめたくない。ぼくはきみに応える。「お囃子の音が好きなんだ。夜空に連なる提灯も。いつでもそこに帰りたいん
2021年12月4日 16:13
「きみは扉を見つける。扉を開けたらどこへ行こうか。観たいものをみせよう。」きみはそう言ったんだ。「そんなことを言われてもわからない。自分の望みはわからない。そしてきみは、姿を見せない。」どこまでも繁る木々のなか、歩く素足の足もとは、踏み締めるたび鋭く刺さる小枝、くすぐるように触る濡れた葉。なにか光って見せるものは透き通るように白い花のベル。森を往くぼくの足は、いつでも在処を知って
2019年12月14日 14:49
これからうなぎを食べに行く。まだ二週間もあるけれど無事に年を越せるお祝いにと。うなぎは苦手だったはずなのに、うなぎが食べたいと、ある日好みは変わる。うなぎが食べたいと言い出して、家族みんながまさかと思う。年が越せることよりもたったいま会えていることがめでたい。あしたはもう会えないかもしれない、それはいつでもとなりあわせ。こうして窓ぎわでミルクティーを飲んでるすぐとなり。いまのわたしの手
2018年8月8日 14:35
2018年6月1日 12:30
2018年5月3日 09:34
窓を水滴が伝ってく。なんの野菜が残っているかな。かぼちゃのスープが飲みたい。うさぎのまんがを閉じて布団からでよう。風のおとが強まる。「きのうの筍煮たので筍ごはん炊くから」それなら卵焼きを焼こう。どこにも行かないのは雨のためでもつよい風のためでもない。
2018年5月2日 19:47
雨が降り出しそう。摘んだ撫子は七本。きのうの歩き疲れたままにスーパーへ行く。切り身じゃないまとめられた半端な鮭、鮭そぼろをつくろうか。これからあらしがやってくるのだろうか。雨が降り出した。南風に運ばれる蛙の鳴き声と柿の葉のにおい。雨が入るから、南の窓は開けてられない。