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星の花びら

雨上がりのある日、水たまりに桜の花びらが積もっていました。
桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは星の屑でした。
昨夜の雨に混じって降ってきたのかもしれません。昨夜は流星群の降る夜でした。ぼくは、星の屑を掬い、家へ連れて帰りました。
   リリン
 シャランシャラン
小さな音が響き合っています。星屑たちは囁き合っているのかもしれません。

ぼくは、月の光の差す窓辺へ星屑を置いてやりました。とてもとても明るい月夜です。
  シャラララ
小さく鳴る星屑の音が聴こえます。ぼくは眠りにつきました。

朝、目を覚ましてみると、虹色の光が行ったり来たりと部屋中をきらきらと映しています。
星屑たちは窓辺を離れ、部屋のあちこちをすいすい泳ぎ、朝の光を万華鏡のように散らしていました。

家の中をあっちへこっちへ、星屑たちが気まぐれに漂っています。

鍋でことことスープを作っていると、ぽちゃんと、ひとつ落ちてきました。野菜がつやつやと透き通っていくように、星屑はすぅっと澄んで溶けていきました。

お風呂に入っていると、ぽちゃんぽちゃんと星屑ふたつ落ちてきました。お湯の上をちゃぷちゃぷと跳ねています。そのうちにちゃぷんと飛び出して、シャワーで流れる水に乗り、どこかへ流れていきました。

コーヒーを一杯、カップに注ぎます。真っ黒の水面に、星屑ひとつ、浮かんでいました。スプーンをくるりと回したら、真っ黒のなかに潜ってしまいました。飲み干したカップの底には、香りがそっと残っています。それは春に咲く、花のような。

部屋の明かりを消して眠りにつくとき、ぼくの部屋に星空ができました。星屑たちが天井あたりに集まって淡い炎のように揺らめいています。

  シャンララン
    リリン

星屑たちはいつでも気まぐれに漂うのでした。

月の明るい夜、ぼくは散歩に出かけました。星屑たちは、ぼくのまわりをひらひらと舞っています。冷たい北風が吹くたびにあっちへ流されこっちへ流され。

カラフルに光る電気で、チカチカと飾りをつけた家があります。星屑たちも一緒になってカラフルに光出しました。チカチカと、リズムに乗って。

色とりどりに光出す星屑を纏い、ぼくは海へと足を伸ばします。
波の音が聴こえます。夜空と同じ真っ黒で、月の光だけが静かに波に乗っています。星屑たちの輝きは、波に映る月の光になりました。

   リリン
  シャララ

さざなみに小さな音が溶けていきます。真っ黒な海に映された月の光の上、寄せて返す波の呼吸に合わさり、抱かれるようでした。

   シャラララ


ある日の夕方、窓辺に桜の花びらが積もっていました。桜の季節でもないのにふしぎだな、と思ってよく見てみると、それは飴細工のようにきらきらと透けていました。沈む夕日の光を映して、べっこう飴のようでした。
美味しそうだとひとつ食べてみると、雪のようにするりと冷たく溶けてしまいました。

風が部屋を吹き抜けました。冷たい花びらは一斉にふわっと舞い上がり,風に乗って飛んで行ったりはらはらと土へ落ち、散ってしまいました。

空は次第に白い雲で覆われて、静かな雪が降り出しました。手のひらを掲げると、すっと舞い降りて、ふっと姿を変えてしまいました。

今夜は流星群の降る夜です。

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